昭和シェル、GTL灯油「シェル ヒートクリーン」をAmazon通販開始
においの少ない「エコ灯油」を改名し拡販体制へ

GTL灯油「シェル ヒートクリーン」

2011年11月1日リニューアル販売開始



 昭和シェル石油は、天然ガスを原料とするファンヒーター専用GTL(Gas To Liquid)灯油「シェル ヒートクリーン(Shell heat clean)」を11月1日に発売する。シェル ヒートクリーンは、従来「エコ灯油」の名称で売られていた製品。Amazonでの通信販売など大幅な拡販を行うにあたって名称を変更した。10月20日、リニューアルに関する発表会が、昭和シェル石油本社で開催された。

GTL灯油「シェル ヒートクリーン」。ファンヒーター専用灯油になる18L缶での販売。通販も行っていくため、側面にはさまざまな注意書きが書かれている


昭和シェル石油 常務執行役員 濱元節氏

 通常の灯油は原油から精製され作られているが、GTL灯油は原油よりクリーンな天然ガスから生成されている。昭和シェル石油 常務執行役員 濱元節氏は、「GTL灯油はにおいが少なくて快適な灯油」と言い、リニューアルにあたり、従来の3倍の拡販体制を施くと言う。

 GTL灯油は、天然ガス(CH4)に酸素(O2)を加えて反応させ、一酸化炭素(CO)と水素(H2)からなる合成ガスを作り、「フィッシャートロプシュ(FT)合成」によって、鎖のようにつながった液体のパラフィンを作る。このパラフィン鎖を製品に適した長さで切断することで、GTL軽油、GTLナフサなどの作り分けを行っている。

 シェルグループは、このGTL生成に30年以上の研究開発、10年以上の創業実績がある。最新のプラントは2011年に操業を開始したカタールのPearl GTLプラント(カタールペトロリアムと共同開発)になり、日量14万バレル。それらの実績を活かし、2004年に「ファン プレミアム」として事業検証を開始。2005年に「シェル エコ灯油」に名称変更し、昨年は自社のWebサイトでのインターネット通販のほか、13都府県119店舗で販売してきた。GTL灯油の名称を再度変更し、本格的な販売体制を目指していくことになる。

GTL生成の仕組み昭和シェルグループが持つGTLプラントGTL灯油は、2004年から販売を行ってきた

昭和シェル石油 新規事業推進部長 北村奈美氏

Amazonでの全国販売を開始
 シェル ヒートクリーンについては、新規事業推進部長 北村奈美氏が解説。名称の由来は「ヒートで灯油の“あたたかさ”を表現し、クリーンで“クリーンな快適さ”を表現している」とし、天然ガス由来となるため硫黄成分が極めて少なく、また、芳香族(アロマ)分をほとんど含まないため、においの少ない灯油だと言う。非石油系であるため、べとつきも少なくなっており、品質安定性にも優れているとする。

 このヒートクリーンは、ファンヒーター専用となっており、一般的な芯式ストーブ、FF式ストーブには使えない。「新型の芯式ストーブでは、使えるものもあるが、適合性の確認がとれていないため、メーカーとしてはファンヒーター専用とする」と言い、芯式ストーブへの対応は将来的な課題とした。また、べとつかないことから、機械洗浄油としての用途もあるとし、これについても適合性の確認はできていないが、対企業への販売となるため、個別に状況を評価・確認して導入されているとした。

シェル ヒートクリーンの特徴
硫黄含有量は、従来製品の1/10。芳香族の含有も少なく、べとつきも少ない現時点では、ファンヒーター専用製品。芯式ストーブでは使えない

 これら、従来の灯油に優れる面を持つシェル ヒートクリーンの販売価格は、昭和シェルのWebサイトから購入した場合で、配送料込み4200円/18L缶。店舗からの購入では、配送料が含まれない分、店舗側の判断で安価になると思われると言う。18L缶代、配送料込みとはいえ、従来の灯油に比べて高いものとなるが、「『においなどがしないため、食事時にも使える』という声をいただいている」と言い、一度購入したユーザーからの満足度は高いと語る。

 冬場に大量に灯油を使用するという人にとっては、正直高い製品でしかないが、断熱性や気密性の高いマンションに住み、エアコンと併用するような用途では、においがきわめて小さいというのは製品価値につながるのだろう。販売店に関しても、37都道府県約400店舗で扱うが、その多くは首都圏になる。

 また、製品発売にあわせ、ポイントプレゼントや製品プレゼントも11月1日から開始する。詳細は製品Webサイト(http://www.heatclean.jp/)を参照のこと。

約3倍へと販売店舗を増加。Amazonでの通販も開始する4つのキャンペーンを11月1日から開始する


好調な売れ行きを示すファンヒーター
 この発表会では、GTL灯油シェル ヒートクリーンと通常の灯油を、実際にファンヒーターで燃やして比較するという展示が行われた。その展示用ファンヒーターに協力を行ったダイニチ工業 取締役営業部長 田村正裕氏は、「今シーズンの石油ファンヒータの出荷予測は、業界(日本ガス石油機器工業会)予測で昨年同様の約290万台。しかしながら、現時点で対前年比145%の出荷、230%の販売数となっている」と言い、震災やその後の節電意識の高まりによる影響が大きいと語る。

 また、石油ファンヒーターが普及して行くにあたっては、「においがきついのではないか、燃料の持ちがわるいのではないか、燃料の入手がたいへんではないのか」という3つのウィークポイントがこれまであったが、ヒートクリーンは、Amazonでの通販をはじめ、これらの問題点を解消してもらえる製品だと紹介した。

ダイニチ工業 取締役営業部長 田村正裕氏今シーズンの石油ファンヒーターの売れ行きは、業界予測を上回る伸びを示している

 発表会では、ヒートクリーンと一般灯油のサンプラー展示も行われており、実際ににおいが少ないのを確認できた。一般灯油が石油臭を持つのに対し、ヒートクリーンはその石油臭は皆無。ただ、無臭というわけではなく、かすかにロウソクのようなにおいがする。また、石油ファンヒーターでの比較では、比較機種が異なるため評価は難しいところだが、ヒートクリーンを使用したファンヒーターで石油臭がすることはなかった。

いずれも透明。ヒートクリーンには石油臭がなく、かすかなロウソクの香りがした左がヒートクリーン、右が一般灯油を使用したファンヒーター。機種が異なるため比較評価は難しいが、左のファンヒーターからの石油臭はないヒートクリーンは、不純物が少ないので炎も赤色ではなく、薄青色になると言う

(編集部:谷川 潔)
2011年 10月 20日