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昭和シェル石油、7月1日発売のShell V-Powerについて解説

フェルナンド・アロンソ選手も「F1用を上回ることはないにしても十分に素晴らしい」と評価

昭和シェル石油 執行役員 森下健一氏
2014年6月16日開催

 昭和シェル石油は6月16日、7月1日に発売する新ハイオクガソリン「Shell V-Power」についての報道向け説明会を行った。12年ぶりとなる新製品であるShell V-Powerは、洗浄性能を上げて最新のエンジンにも洗浄力が対応するよう改良が加えられた。レギュラーガソリン仕様のクルマでも利用するメリットがある「差別化商品」としてアピールする。

F1の燃料同等の性能と、最新エンジンにも対応する洗浄力

 Shell V-Powerが最も強調する性能は「エンジンの洗浄力」。エンジンは吸気バルブにカーボンの汚れが付着すると本来の性能を発揮できず、出力ダウンにより加速性能の低下などが起きる可能性がある。Shell V-Powerでは走るほどに付着物を取り除き、エンジン内部を汚れや錆から守る特性がある。そして、最新のエンジンにも対応する洗浄性能となっており、内部EGR機構を持つエンジンでは吸気バルブだけでなく吸気ポートの汚れが目立つようになるが、その汚れにも対応している。

 説明会では、昭和シェル石油 執行役員の森下健一氏がShell V-Powerの説明を行った。Shell V-Powerは1998年に香港で発売後、世界各国で発売が進み、日本が67カ国めの発売となる。シェルグループは研究開発に多大な投資を行い、2012年だけでも13億ドル以上を投資。全世界で200人以上の科学者やエンジニアが研究開発に携わっているという。

 一方でフェラーリとのパートナーシップにも触れた。技術提携の歴史は60年以上におよび、フェラーリのF1マシンに掲示されるシェルのマークは、燃料、潤滑油の開発に共同で取り組んできた証と説明。F1用のShell V-Powerを開発した科学者チームと共同で公道用のShell V-Powerが開発され、F1用燃料のエッセンスが多分に盛り込まれたハイオクガソリンであると紹介した。

シェルグループの差別化燃料の変遷
Shell V-Powerの歴史
Shell V-Powerの洗浄性能
Shell V-Powerの展開地域
Shell V-Powerにおけるフェラーリとの協業について
シェルグループは他社に比べて品質で評価を得ている

 また、F1ドライバーのフェルナンド・アロンソ選手が、実際のF1マシンにF1用のV-Powerと市販の公道用V-Powerを入れ、乗り比べてパフォーマンスの違いについて語ったインタビュー動画も公開された。アロンソ選手は「予想外だが、ほとんど違いはなかった」と感想を述べ、違いとしては「エンジンの反応が一瞬遅れる感じがした」と話し、「F1用を上回ることはないにしても十分に素晴らしい」と評価した。

 なお、アロンソ選手が比較のために使用した公道用Shell V-Powerは今回日本で発売されるShell V-Powerとは一部が異なり、日本国内向けは世界でも最も厳しいと言われるJIS規格に対応させた製品となる。

アロンソのドライブにより、F1用と公道用のShell V-Powerを比較。ほとんど違いはないという評価だ

 一方、Shell V-Powerの洗浄性能について、昭和シェル石油 リテールEPOCHプロジェクトチーム サブリーダーの石和秀紀氏が他社との違いを説明。現時点ではサンプル数が十分ではないため数値は公表しないとしながらも「内部の実験で強みである洗浄性能のデータがあり、現時点でトップクラスの洗浄性能を持っていることは確認している」と自信を見せた。

 また、従来品となる「Shell Pura」との具体的な違いについては、昭和シェル石油 研究開発部 研究開発課 課長の岡部伸宏氏が解説。新しいV-Powerは高圧縮エンジン、ターボエンジン、EGRを採用しているエンジンに対応しているとして、こちらも「Shell Puraのときから国内トップクラスの性能を確認しているが、Shell V-Powerもトップクラスの性能を引き継いでいる」と強調した。

昭和シェル石油 リテールEPOCHプロジェクトチーム サブリーダー 石和秀紀氏
昭和シェル石油 研究開発部 研究開発課 課長 岡部伸宏氏

Shell V-Powerの発売が差別化戦略の最終章

 説明会ではV-Powerの性能のほか、なぜこの時期にハイオクガソリンを投入するかについても説明が行われた。森下氏は「ここ2~3年、国産自動車メーカーがクルマを運転するドライバーに、それ自体を楽しんでいただくキャッチフレーズで訴えはじめている。昭和シェル石油としては、運転を楽しむユーザーに差別化燃料で応えていく絶好のタイミングだ」と背景を解説した。

 コアターゲットは、同社が自動車ユーザーを分類した7つのクラスターのうちの2つ。「大排気量」「スポーツカー」のユーザーで、給油量ベースでプレミアムガソリンユーザーの1/3、レギュラーガソリンユーザーの1/10に相当する。製品の性能に関心度が高く、情報の発信力も強い。この層にまず訴求して周辺に広げ、これを繰り返すことで「最終的にはすべてのクラスターにV-Powerを届けたい」とした。

Shell V-Power投入の背景
7つのクラスター分類とコアターゲット
コアターゲットから周辺層への拡散を目論む

 また、販売エリアも順次拡大する。従来のハイオクガソリンであるPuraは全国3418店舗のシェルのサービスステーション(SS)のうち、2019店舗での販売だったが、V-Powerは約2600店舗のSSに取り扱いを拡大、SSカバー率は76.1%、販売量では93.0%まで向上させる。40都道府県での扱いとなり、未扱いは富山、四国4県、宮崎、沖縄。未扱いの店舗では、流通の関係から当面のあいだV-Powerでないハイオクガソリンを扱っていく。

 森下氏は「業界全体に対して3%以上ハイオク比率の差がある」と同社がハイオクガソリンの販売に長けていることを強調し、その差を広げていきたいとも述べた。そして、2014年4月にクレジットカード「シェル スターレックスカード」で、ハイオクガソリンを条件次第で13円/L値引きするようリニューアル。さらに今回のV-Power発売をもって「差別化戦略の最終章になる」とまとめた。

 なお、V-Powerの価格だが、小売価格は販売店が決めることとしながらも、森下氏は「V-Powerはプレミアム商品である、それなりの付加価値をしっかり付けた形で販売する考えを販売側と共有している」と述べ、付加価値のぶん高価になるという方針を示した。

前製品のPureと比べて展開エリアを拡大
これまでに実施した差別化戦略。その最後がV-Powerの投入となる

(正田拓也)