自動車関連22団体、自動車税制の負担軽減を訴え
「抜本改革は最大の経済対策であり最良の雇用対策」

集まった436万以上の署名と出席者

2011年11月7日発表



 日本自動車連盟(JAF)、日本自動車工業会(自工会)など自動車関連21団体で構成する「自動車税制改革フォーラム」と全日本自動車産業労働組合総連合会(自動車総連)は11月7日、都内で会見を開き、自動車関係諸税の簡素化・負担軽減を訴えた。会見には日産、トヨタ、ホンダ、マツダ、三菱自動車のトップが揃い、演出家のテリー伊藤氏が自動車ユーザー代表として出席した。

 同フォーラムが訴えているのは「車体課税の軽減」(自動車取得税、自動車重量税、自動車税・軽自動車税)、「一般財源化により課税根拠を喪失した税の廃止」(自動車重量税)、「二重課税など不合理な税体系の是正」(自動車取得税と消費税、自動車重量税と自動車税・軽自動車税)、「旧暫定税率の廃止」の4つ。

天野会長

 中でも車体課税は欧米諸国と比較すると2~49倍も重い金額となっており、例えば180万円の新車を購入し、平均使用年数である11年間使うと、購入価格を上回る188万円の税金を支払うことになると言う。こうした税制は「生活必需品に対する税制とはかけ離れ、まだ贅沢品と見られていた高度経済成長期に創設されたものが必要な見直しをされることなく残り、ユーザーに対して過重な負担をかけ続けている」(日本自動車販売協会連合会の天野洋一会長)と言う。

 こうした負担は公共交通機関が整備されておらず、移動を自動車に頼らざるを得ず、複数台保有も多い地方部ではさらに重い負担となり「都市と地方の格差をますます助長する」(天野会長)と主張した。

労使で共闘
 JAFが自動車税に関するアンケート調査を7月~8月にかけて実施したところ、8266名の回答のうち97%が自動車の税金を負担に感じ、85%が軽減を求めていると言う。また9月から署名活動を展開したところ、2カ月で436万4799もの署名が集まった。

 こうしたユーザーの声を背景に、自動車産業は過重な自動車税が、購入意欲を削いでいると主張する。自工会の志賀俊之会長(日産自動車COO)は、車体課税を廃止すると年間92万台の需要を押し上げる効果があるという、経済産業省の試算を紹介。「日本には7500万台の保有があるが、今年は震災の影響もあって425万台の全需。1億2000万の人口のある日本で、7500万の保有があって、年間需要が500万台を切っている状態は、欧州などの成熟市場を考えてもあまりにも少なすぎる。JAFのアンケートで97%が税金が重いと感じておられる、そういうことが代替え期間を伸ばしている。取得税・重量税を廃止して重い税負担がなくなることで、本来の需要規模に少しでも近づいていける」と、税負担の軽減による国内市場の活性化を訴えた。

 円高に苦しむ自動車業界にとって国内市場が活性化されれば、国内の生産拠点を維持し、雇用を守り、技術革新を続けることができる。自工会の豊田章男副会長(トヨタ自動車社長)は「国内産業の空洞化なんて生易しいものではない、すでに崩壊が始まっている」と主張する。「日本の人材とサプライチェーンはものづくりの基盤であり、長年の歴史の中で蓄積された財産。海外シフトにより一時これらを失うと再生は不可能。これから日本が世界と競争する中で最も大事なのは、ダントツの技術力。これらを生み出すためには、開発技術と量産技術の両輪が必要であり、日本での生産を守らなければ、技術革新も生まれない」。

志賀会長豊田副会長

 メーカー首脳の主張に、労働組合も足並みを揃えている。自動車総連の西原浩一郎会長は「一言で言えば、自動車関係諸税の簡素化・負担軽減の取り組みは、産業を国内に残し雇用を守るための戦いでもある。自動車関係諸税の抜本改革は最大の経済対策であり、最良の雇用対策」と言う。

 また自工会の益子修副会長(三菱自動車工業社長)は、先進環境車導入インセンティブに言及。エコカー減税やグリーン税制で環境対応車の比率が確実に上がり、需要の拡大にもつながっていることから、「エコカー減税終了する来年度以降にも税制上のインセンティブが必要」と主張した。

 ユーザー代表のテリー伊藤氏は「クルマは欲しいが、なぜこんなに税金を払わなければならないのかとつくづく思う。9種類の税金など聞いたことがない。冷蔵庫やテレビを買っても消費税だけ。昭和20年代、30年代のクルマが贅沢だと言われていた時の論理の税金の付け方だと思う」「以前は日本メーカーのTVがアメリカの各ホテルにあったが、いまは韓国メーカーのTV。こういう状況が起きてしまう。日本のメーカーには頑張ってもらって、世界中に日本のクルマが走っていることでプライドが持て、豊かになっていく」と述べた。

西原会長益子副会長テリー伊藤氏

(編集部:田中真一郎)
2011年 11月 8日