トヨタ、2011年度業績見通しを下方修正
東日本大震災、タイ洪水、円高が影響

2011年度業績見通しを発表する、トヨタ自動車 取締役副社長 小澤哲氏(右)と常務役員 早川茂氏(左)

2011年12月9日発表



 トヨタ自動車は12月9日、2011年度の連結業績見通しの下方修正を発表した。

 今年8月の公表値に対して、売上高は8,000億円減の18兆2,000億円、営業利益は2,500億円減の2,000億円、当期純利益は2,100億円減の1,800億円とした。

 また、販売台数は、当初見通しの760万台に対して、22万台減の738万台に修正した。そのうち、タイの洪水による23万台の影響があるとした。同社では、11月8日に行った第3四半期決算発表の場において、タイの洪水の影響が不透明であることを理由に、通期見通しの修正についての公表を見送っていた。

 同社 取締役副社長 小澤哲氏は、「タイの洪水の影響によって1,200億円、東日本大震災の影響で1,600億円。さらに、期初の1ドル85円の想定が78円となったことで、2,800億円の影響があり、総額で5,600億円の減益要因がある。これに2,000億円の営業利益を加えると、通常状態では7,600億円の利益水準があると考えている。グローバルビジョンで掲げた、750万台の生産、1兆円の営業利益を目標にするといった点では、オンラインで改善が進んでいると捉えている」と総括した。

連結販売台数(2012年3月期見通し)連結決算(2012年3月期見通し)

 営業利益で2,500億円下方修正した内訳は、すべての通過に対して円高となった為替変動の影響で1,600億円のマイナス、販売面での影響で650億円のマイナス、原価改善努力で100億円のマイナス、諸経費の増加で150億円のマイナスとした。だが、営業面での改善などの収益改善活動の進捗については、「計画を上回る形で推移している」と語った。なお、設備投資の7,200億円、減価償却費の7,600億円、研究開発費の7,600億円には変更はない。

増減要因(2012年3月期見通しと、第1四半期見通しとの比較)増減要因(2012年3月期見通しと、前年度実績の比較)

 タイの洪水の影響により、12月までに、トヨタ・レクサスにおいて、26万台の影響があり、国内で7万台、タイで16万台、アジア・北米・その他地域で3万台の影響があると言う。

 「当初は、1カ月分の売り上げがなくなるリスクも考えられ、50~60万台の影響があるとも考えていたが、その半分以下で済んだ。関係者の努力に感謝したい。アジア・北米・その他地域の3万台については、すでに部品の調達もでき、挽回が可能になっており、期末までの影響からは除いている。国内の7万台の影響に関しては、3月までに極力、挽回ができるよう努めていきたい。ヴェルファイア、アルファード、プリウスおよびプリウスα、アクアといった車種ではご迷惑をおかけしている。納期については、丁寧に状況を説明しながら、理解を求めていく」とした。

 また、「関係者の尽力により、タイ以外のアジアや、日本、北米では12月上旬までに、タイでも12月中に通常レベルの稼働に復する見通しがたった」としたほか、「東日本大震災、タイの洪水被害の復旧への取り組みを通じて、日本のモノづくりの底力を感じた。一方で、モノづくりの基盤である電子部品がすでに海外依存しており、特定部品に関しては、国内において空洞化しているという事実を目の当たりにした。円高による日本のモノづくり基盤の後退がはじまっているということを垣間見た。非常に大きなショックであった。また、超円高の影響の大きさを再認識せざるを得なかった。わずか3カ月の間に、為替の急激な変動により、1,900億円ものマイナスが出た。対前年比でも3,500億円の影響が出ている。輸出立国である日本の産業が危機にさらされていることを改めて強く感じた」などとした。

 一方で、国内300万台の生産体制の維持については、「社長の豊田章男は、雇用を守るという点でも、石にかじりついてでも300万台の生産を維持すると語ってきたが、私の役割はその石へのかじりつき方を考えること。昨年度は国内130万台、輸出で180万台としていたが、今後は少なくとも国内150万台、海外150万台のバランスをとった構造で為替の影響を抑えていく。エンジン、トランスミッションといったユニットの日本生産への依存を減らすことも考えていきたい」などと語った。

(大河原克行)
2011年 12月 9日