志賀自工会会長「日本の『ものづくり』の維持」など3つを事業の柱に
2012年「自動車工業団体賀詞交歓会」

自動車工業団体賀詞交歓会に出席した自動車工業団体の代表者

2012年1月5日開催



 日本自動車工業会(自工会)、日本自動車部品工業会、日本自動車車体工業会、日本自動車機械器具工業会の4団体は1月5日、2012年の「自動車工業団体賀詞交歓会」を共同で開催した。

 この賀詞交歓会では、4団体を代表して自工会の志賀俊之会長が挨拶。枝野幸男経済産業大臣、奥田建国土交通副大臣が来賓を代表して、新年の挨拶を述べた。

来賓を迎える自工会首脳。左から伊東孝紳副会長、豊田章男副会長、志賀会長。来賓の1人目は、枝野経産大臣1,000名を超す来賓が訪れた

 志賀会長は、「日本の『ものづくり』の維持」「国内市場の活性化」「安全・安心で快適なクルマ社会の実現」の3つの取り組みを事業の柱として取り組んでいくと言う。以下に志賀会長の挨拶を記す。


志賀俊之自工会会長

 新年明けましておめでとうございます。本日はご多忙のところ大変多くの方にご臨席を賜りまして、誠にありがとうございます。自動車工業4団体を代表いたしまして、ひと言、新年のご挨拶を申し上げます。

 さて、皆様ご承知のとおり、昨年は東日本大震災、それに伴う福島原発事故と電力需給の逼迫、そしてタイの大洪水と、たび重なる未曾有の大災害により自動車産業にも甚大な被害がもたらされ、今までに経験のしたことのない大変厳しい1年となりました。

 こうした厳しい状況の下、災害により停止した生産ラインを早期に稼働させるため、企業の垣根を越えて取り組んだサプライヤー支援や、計画停電を回避するために、ご関係の皆様の理解・ご協力を得て実施した休日シフトなど、自動車産業は一丸となって、苦難を乗り越えてまいりました。そこで学んだ多くの教訓を糧として、今後も成長を続けてまいりたいと存じます。

 災害からの復旧、復興に向けた取り組みは未だ緒についたばかりですが、私どもは、日本の基幹産業として、早期に震災前の水準まで生産を回復させ、日本経済の復活とさらなる発展に貢献するとともに、引き続き豊かなクルマ社会を実現するために、次の3点を事業の柱として全力で取り組んでまいる所存です。

 第1に、日本の「ものづくり」の維持に向けた取り組みであります。

 日本の自動車産業が国際競争を生き抜く上で、長年の歴史の中で培われた日本の「ものづくり」こそが最大の強みであり、それを維持していくことが私どもの生命線と言っても過言ではありません。

 私どもは、空洞化の進行に歯止めをかけ、日本の「ものづくり」を維持していくために、円高への抵抗力を高める企業努力を維持していくとともに、海外企業と同じ条件下で、競争できる環境の実現に向けて、政府、関係機関に対し、歴史的な水準の円高をはじめ、いわゆる「6重苦」(編集部中:円高、法人税の引下げ、CO2削減目標の見直し、労働情勢の問題、FTA/EPA問題、電力問題)の緩和、解消に向けて働きかけてまいります。

 第2に、国内市場の活性化に向けた取り組みであります。

 私どもはお客様にクルマの夢・楽しさを感じていただける、魅力的な自動車を提供するために、最大限の努力を続けてまいりますが、一方でお客様の重い負担となっている自動車関係諸税を簡素化・軽減することが、国内市場を活性化するために極めて重要と考えています。

 昨年末、政府から、自動車重量税の一部軽減とエコカー減税の3年間延長、さらにはエコカー補助金の復活が打ち出されたことにつきましては、全国の自動車ユーザーの声に支えられた、私どもの主張や活動が、ご関係の皆様には、ご理解、ご賛同いただけたものと考えており、心より感謝しております。

 私どもは、これらの施策を有効に活用し、市場の活性化に、なおいっそう努めてまいるとともに、自動車ユーザーが真に期待している自動車取得税と自動車重量税の廃止に向けて、引き続き尽力してまいります。

 第3に、安全・安心で快適なクルマ社会の実現に向けた取り組みであります。

 昨年の第42回東京モーターショーでは、80万人を超える皆様に、内外の先進的な技術に裏打ちされたクルマを実際にご覧いただくことができました。

 クルマは技術の進歩を背景に、「単なる移動・運搬手段」から「人々の暮らしを豊かにする生活必需品」へと時代のニーズにあわせて進化を続けてまいりました。

 これからも私どもは、たゆまぬ技術開発を続けることにより、多種多様なモビリティー・ニーズに応えていくとともに、クルマをエネルギー供給や情報通信ネットワークの一翼を担う社会インフラに進化させるなど、より安全・安心で、快適なクルマ社会の港地区を目指してまいりたいと考えております。

 以上のように、本年も関係各位のご理解、ご協力のもと、自動車工業4団体が一丸となって、日本経済・社会の発展に貢献してまいる所存でございますので、倍旧のご支援、ご鞭撻を賜りますよう、お願い申し上げます。

 最後になりますが、本年が皆様にとりまして飛躍の年になりますよう祈念いたしまして、私からのご挨拶とさせていただきます。


 志賀会長の挨拶をうけ、来賓代表として挨拶した枝野経産大臣は、東日本大震災、原発事故、タイの洪水、6重苦など自動車産業をとりまく厳しい状況に触れ、計画停電を防ぐための休日シフトへの感謝を述べた後、「現在の日本の経済状況は“やせ我慢の経済”」であるという見方を示した。

 このやせ我慢の経済は、デフレ環境の中、コストを切り詰める経営を強いられ、その結果として従業員の所得の伸びがなくなり、ものが売れないという悪循環を指し、こうした状況を打開するために「なんとか今を乗り切るのではなく、未来へ向けた攻めの姿勢で日本の強い経済を作り直さなければいけない」と言う。日本にある高い付加価値を持つ製品を生み出すものづくりの力を活かした「価値創造経済」の創出を目指していくとした。

 奥田国交副大臣も、東日本大震災、タイの大洪水に触れた後、現在国交省が進めている「自動車基準認証国際化行動計画」を紹介。自動車基準認証制度の国際化を推進することで、日本企業がより活動しやすい環境を作り出したいと語った。

枝野経産大臣奥田国交副大臣乾杯の音頭は、信元久隆 日本自動車部品工業会会長が担当した

(編集部:谷川 潔)
2012年 1月 5日