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「2019年の消費税増税に向けて車体課税の抜本的見直しが必要」と世耕経済産業大臣
2018年「自動車工業団体新春賀詞交歓会」にて
2018年1月5日 20:40
- 2018年1月5日 開催
日本自動車工業会、日本自動車部品工業会、日本自動車車体工業会、日本自動車機械器具工業会の自動車工業4団体は1月5日、2018年の「自動車工業団体新春賀詞交歓会」を都内で開催した。
今回の賀詞交歓会では、2016年5月に会長に就任し、この5月で任期を終える予定の自工会 西川廣人氏のほか、来賓として参加した世耕弘成経済産業大臣、石井啓一国土交通大臣が新年の挨拶を述べた。
各登壇者のコメント(抜粋)を以下に記す。
日本自動車工業会 会長 西川廣人氏
「新年のご挨拶を申し上げる前に、ひと言取り上げさせていただきます。昨年は私の所属いたします日産自動車におきまして、不適切な完成検査の問題から、お客さまや関係する皆さまに多大なご迷惑をおかけし、結果として大きな不安、不信を招いてしまったことを大変申し訳なく思っております。今後は法令遵守の徹底に取り組んで信頼回復に努めたいと、新年にあたって決意を新たにしたところであります」。
「昨年、私はこの場で政治情勢や経済情勢を踏まえると事業環境は厳しい、あるいは荒れ模様になるかなと申し上げたかと思いますが、結果として振り返ると、米国の全需が前年を下まわってしまったものの、グローバルの事業環境は比較的穏やかで順調な年だったかと思っております。また、国内市場を目を向けましても、景気の底堅さから堅調に推移しておりまして、比較的順調な年だったというのが実感でございます。年初は世界的に保護主義の台頭というものが懸念されましたが、そのなかで昨年末には日本とEUのあいだで経済連携協定が妥結となったこと、それから11カ国によりますTPP(環太平洋パートナーシップ協定)が大筋合意に至ったこと。これが自動車産業にとりまして、また、日本の産業界にとりまして非常に大きな意味を持つ前進であると思っております。これまでの政府関係者の皆さまの多大なご努力にあらためて敬意を表しますとともに、できるだけ早く批准、あるいは発効となることを期待しております」。
「今年の経済環境がどうなるのかですが、昨年の12月に閣議決定をされました『生産性革命』と『人づくり革命』を両輪とする新しい経済パッケージ、経済諸政策によりまして経済の好循環がさらに拡大することを大いに期待しているところであります。また、米国におきましても昨年末に決定いたしました税制改正法が、米国経済の活性化に寄与するものであると考えておりまして、堅調な事業環境というものが継続するのではないかというのが私の見通しであります」。
「世界を見ますと、自動車の進化、技術の革新が加速しております。電動化の潮流、あるいは自動運転やAIなど、本年も引き続き大きな進展があると見ております。日本のもの作り、そして日本経済の持続的成長のために、私ども自動車業界の果たすべき役割が大きいことを十分に認識しております。その役割を果たすためにも、先進技術の進化と普及で世界をリードしていくことが非常に重要だと思っております。この進化と革新の原動力として、もちろん各社における技術開発、個社間でしのぎを削る競争が大きな原動力である一方で、インフラ整備や先進的な交通ルール、システムの整備などの協調する取り組みが非常に大きな力になると考えております。この協調領域の取り組みですが、見方を変えると国同士や地域間での競争という面もあります。日本が自動車技術、あるいは自動車市場としての先進性を増していくために、協調領域での取り組みがさらに重要度を増すと我々は見ております」。
「東京オリンピック・パラリンピックが開催されます2020年に向かって、世界に日本の先進性をアピールする大きなチャンスだと考えておりまして、自動車業界としても全体で取り組みを進めてまいります。それぞれの面で、今年は掲げる課題に対して着実に取り組み、将来に向けた素早く歩を進める。そんな年にしたいと考えております」。
経済産業大臣 世耕弘成氏
「昨日は株価が700円ですかね、上がりました。今日はどうなるかなと思っていたのですが、先ほど見ましたら200円上がっておりまして、非常に幸先のいいスタートを切っているわけであります。皆さん方の業界でも2年ぶりに国内販売台数が500万台を超える見込みであるとの報告を受けておりまして、非常にいい新年のスタートが切れているのではないかと思っております。しかし、一方で大きな変化の波がやってきているわけでもあります。国や地域によってはEVを最優先するような税制を入れていくんだ、全部EV化していくんだという宣言をするような国、地域が出始めています。また、自動運転がいよいよ新しいステージに入ろうとしているわけであります。それと関連して、いわゆるカーシェアリングという、自動車が商品からサービスに変わる取り組みを始めている業界も出てきています」。
「そういったなかで、やはり日本の自動車産業にしっかりと世界を引っぱっていってもらう。そうでなければ我々の子供の世代は豊かさを享受できない。それぐらい日本にとって非常に重要な産業であるという意識を持ちまして、経済産業省としても自動車産業、あるいは自動車に関連する政策を誤ることのないよう、よく考えながら、業界の皆さんとよく対話しながらしっかりと方向性を見定めていきたいと思います。日本の強みは『いざとなれば何だって造れる』。EVだって立派なものができる、水素自動車だって立派なものができる、ハイブリッドだって立派なものができる、いろいろなことにしっかりと、一本足打法ではなく、多方面に作戦が組めるところが日本の自動車産業の強いところだと思っておりまして、そういった日本の自動車産業の特色を温存しながら国として後押しをすることに取り組んでいきたいと思っております」。
「また、通商政策に関して、自動車産業は非常に影響を受けやすい業界であります。これも我々はしっかりと前に進めてまいりたいと思っております。日・EUのEPAは最終合意に至りました。7年という時間はかかりますが、ヨーロッパ向けの自動車の関税はゼロになるということが決まったわけであります。TPPイレブンも大筋合意が終わり、最終合意に向けてまもなくというところまでやってきております。アジア・太平洋にまたがるサプライチェーンを構築しておられる自動車産業の皆さんにとって、これもプラスになると思っております。さらに日米の関係ですが、いわゆる昔の貿易摩擦のようにはならない、自動車摩擦のようにはならない。日米がともに利益を目指して、高いレベルの貿易ルールをどうやって世界に展開していくか。そういった文脈で、安倍総理とトランプ大統領の信頼関係のもと、麻生副総理のリーダーシップのもと、貿易摩擦ではなく経済対話という形で日米の関係もしっかりと前に進めているわけで、自動車産業の皆さんにも期待を持って見守っていただきたいと思います」。
「そして来年は、いよいよ消費税が上がる年になります。やはりここに向けて、車体課税について抜本的な見直しを行なっていかなければなりません。今日は自民党の税調の幹部の先生方もお見えですが、ぜひこういった先生方のご指導もいただきながら、車体課税の抜本的見直しを来年の消費税値上げに向けてしっかりと取り組んでまいりたいと思います。冒頭にも申し上げましたとおり、やはり日本国民の豊かさは自動車産業の成功がかかっていると思います。ぜひとも自動車工業団体の皆さん、今年1年頑張っていただいて国を豊かにして、日本経済の成長を引っぱっていっていただけますよう、心からお願い申し上げまして新年のご挨拶とさせていただきます」。
国土交通大臣 石井啓一氏
「現在、自動車分野におきましては、100年に1度の大変革の時代に入っていると言われております。1つは自動運転技術の進展、もう1つがクルマの電動化であります。国土交通省といたしましても、あらゆる政策をつうじて自動車業界の皆さんとともにこれらの動きに対応し、世界を先導してまいりたいと考えております。まず自動運転につきましては、昨年6月に閣議決定されました『未来投資戦略2017』におきまして、2020年を目処にした高速道路におけるレベル3の自動運転の実現を柱とする目標の達成に向け、皆さまにも精力的に技術開発を進めていただいております。国土交通省といたしましても、省内に『自動運転戦略本部』を設置いたしまして、技術開発や実用化を促進するために、自動運転車両の安全基準の策定や、道の駅等を拠点とした自動運転サービス、トラックの隊列走行などの実証実験に省を挙げて取り組んでいるところであります。とくに安全技術では、わが国の優れた技術を世界に展開するため、国連における国際基準作りをリードするなど、皆さま方とも一体となって国際的な議論を牽引してまいりたいと考えていますので、ご協力のほどよろしくお願いいたします」。
「次にクルマの電動化につきましてですが、昨年から欧州各国や中国などで相次いで電動化に向けた規制方針が表明されております。わが国でも2030年に、電気自動車、水素燃料電池自動車などの次世代自動車が新車販売に占める割合を、50ないし70%にするとの目標を掲げております。皆さまにおかれましては次世代自動車を次々に開発して、まさに世界をリードしていただいておりますが、国土交通省といたしましても、税制等の支援措置をつうじて次世代自動車の普及促進に努めてまいりますので、引き続きご協力をお願いいたします」。
「なお、この場をお借りいたしまして、昨年相次いで発覚いたしました完成検査における問題について申し上げたいと思います。この問題は、これまで世界で評価されてきた日本のもの作りに対する信頼を揺るがしかねない問題であり、あってはならないことであります。国土交通省といたしましては、事案の再発防止の徹底と根絶に向けて取り組んでまいりますので、皆さま方におかれましてもコンプライアンスの徹底を図っていただけますようよろしくお願いいたします」。