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自工会池会長、国内市場活性化に「過重な税負担軽減が不可欠」

タカタのエアバッグ問題、豊田章男社長「業界全体の問題、しっかり原因を追究するにつきる」

2016年1月5日開催

 日本自動車工業会 会長の池史彦氏は1月5日、「自動車工業団体新春賀詞交歓会」で挨拶し、2016年に向けて「国内市場の活性化」「事業環境の改善」「安全・快適で持続可能なクルマ社会の創造」の3点について自工会として重点に取り組んでいく考えを示した。

 まず、国内市場活性化について、池氏は「クルマやバイクの魅力を積極的に発信していく」と述べるとともに「我が国の自動車関連の税体系は複雑で、諸外国の水準を大幅に上回る過重な税負担が自動車ユーザーに課せられている。さらに来年4月に消費税の再増税があることも踏まえると、自動車ユーザーの過重な税負担軽減が不可欠だと考えます。私どもは負担軽減実現のために業界全体として取り組んでいく所存です」と話した。

 2つ目の事業環境の改善については、「グローバル競争を勝ち抜き、世界中で存在感を高め続けるためには、国内での研究開発能力や、海外生産拠点に対するマザープラントとしての機能を強化することが非常に重要」と述べ、加えて「政府におかれては、事業環境の改善や国際競争力の維持・強化に向けて、企業の実質的な負担軽減となる法人税改革の推進や研究開発投資環境の整備を着実に行なって頂きたいと思います」との要望を示し、さらに「自動車業界としても経済連携協定を活かし、日本経済の発展と域内経済関係の緊密化に貢献していく所存です」と話した。

 3つ目の、安全・快適で持続可能なクルマ社会の創造に関して、池氏は「交通事故の低減に向け、先進技術を活用した安全運転支援システムの普及やITS(高度道路交通システム)によるクルマとインフラが協調した予防安全技術の実用化に取り組んでいきます」と述べるとともに、「日本政府が掲げる2030年度の温室効果ガス排出量削減目標の達成に向け、次世代自動車の開発・普及、交通流対策やエコドライブなど各種対策を、交通分野の関係者と共に統合的な取り組みを推進していきます。また、自動運転に関しても、その導入と普及について積極的に取り組んでいきます」と述べた。

 池氏は「2020年の東京オリンピック・パラリンピックは、世界に日本の技術力をアピール出来る絶好の機会と捉えております。その2020年という節目、さらにはその先も見据えて、豊かな社会の実現に向けて、私ども自動車業界は、着実に歩を進めてまいります」と、挨拶を締めくくった。

経済産業大臣の林幹雄氏

 同会では続いて、経済産業大臣の林幹雄氏が挨拶し、林氏は「日本経済はいまだパッとしないとの声もあるが。アベノミクスの元、経済の好循環は着実に回り始めているのも事実。官民一緒に取り組み、我が国の経済を力強く発展成長させることが私の役目。我々は政権復帰から3年余り、産業界を取り巻く6重苦を解消するために努力をしてまいりました」と述べるとともに「円高は解消し、法人税も前倒しをして来年度から20%台に引き下げることを決めました。TPPもなるべく早く国会の承認を得て批准の発行に進めなければならない。TPPは、大企業だけでなく頑張る中小企業が成長発展できるようスピード感を持って進めていく。加えて、産業界から要望の強い経済連携協定にも早期妥結を目指して取り組む」との考えを示した。

 エネルギーについて、林氏は「経済を支えるには、安くて安定したエネルギーの供給の実現が必要。私は安全をクリアした原発の再稼働に全力で取り組んでいるところ。COP21でパリ協定が締結され、経済成長と環境を両立させるのも私の仕事。そのためにもエネルギー革新戦略をこの春にも策定していく」との見通しを示した。

 最後に「経済の好循環をゆるぎないものにするには、やはり投資への転化や賃上げが必要。昨年の官民対話で、産業界から2018年度には設備投資が今から10兆円増えるだろうとの見通しが示されたが、その実現に期待したい。そのためにも、設備、技術、人材に対して投資をしていただきたい」と、業界への要望を語った。

国土交通大臣の石井啓一氏

 国土交通大臣の石井啓一氏が挨拶。石井氏は「国土交通省としましても自動車産業が活動のしやすい環境づくりに努めており、環境にやさしい自動車の購入の支援、自動運転など先進技術の導入普及に務めているが、引き続き取り組んでいきたい」と述べ、加えて「本年は、5月に伊勢志摩でG7のサミット、9月には軽井沢でG7の交通大臣の会合がありますが、安全や環境の先進的な取り組みを世界に示す場にしていきたい。また、2020年の東京オリンピック・パラリンピックでは、バリアフリー設備の整ったバスやタクシーの導入、BRTの導入促進して、これからの新しい交通技術を実現する場にもしていきたい」と話した。

 石井氏は「皆様へのお願いですが、中小規模企業の賃金の引き上げについて、取引先を含めて団体を挙げてご協力いただきたい」と業界への要望を語った。

トヨタ自動車 代表取締役社長の豊田章男氏

 一方、同会場ではトヨタ自動車 代表取締役社長の豊田章男氏が、報道関係者の囲み取材に応え、エアバッグ問題を抱えるタカタに対して「国内自動車メーカーが共同で支援する」とする一部報道の内容について、豊田氏は「業界全体の問題だと思うので、しっかり原因を追究すること、顧客の安心安全を考えることにつきる」と述べ、資本的な支援については「それは他社のことであるから」と、明言を控えた。

(編集部:椿山和雄)