トヨタ、販売台数の押し上げなどによって業績予想を上方修正 2012年3月期第3 四半期決算説明会より |
トヨタ自動車は2月7日、2012年3月期第3 四半期の決算を発表した。同社の東京本社で行われた説明会には、伊地知隆彦 取締役専務役員と早川茂 常務役員が出席し、集まった報道陣に対して決算内容の解説と質疑応答などを行った。
トヨタ自動車の伊地知隆彦 取締役専務役員(写真右)と早川茂 常務役員(写真左) | 決算内容について解説する伊地知 取締役専務役員 |
スクリーンを使った解説を担当した伊地知取締役専務役員は、まず第3 四半期の連結販売台数が前年同期比で19万7,000台の増加となる196万9,000台になったことについて、日本国内や北米などで東日本大震災からの挽回生産が進んだことで供給が増加し、販売台数増加の要因になっていると説明。その半面で、タイの洪水に大きな影響を受けたアジア諸国では大幅な販売台数減となっていると言う。
■第3四半期 連結販売台数
地域 | 台数 | 増減 |
日本 | 56万1,000台 | 15万8,000台増 |
北米 | 57万9,000台 | 7万2,000台増 |
欧州 | 21万9,000台 | 1万1,000台増 |
アジア | 27万9,000台 | 5万6,000台減 |
その他(中南米、オセアニアなど) | 33万1,000台 | 1万8,000台減 |
合計 | 1,96万9,000台 | 16万7,000台増 |
第3 四半期の連結決算では、前年同期比で売上高が1,921億円増加した4兆8,652円で、営業利益は51.1%増の1,496億円となっているが、当期純利益は13.5%低下の809億円と発表された。これは営業面での努力や原価改善などによる全社的な収益改善策によって営業利益が増加しているものの、税制改正の影響を折り込んだ税金費用の増加によって当期純利益は減益となっている。
■連結決算要約
第3四半期(2011年10月~12月) | 今期 | 前年同期 | 増減 | 増減率 |
売上高 | 4兆8,652億円 | 4兆6,731億円 | 1,921億円増 | 4.1%増 |
営業利益 | 1,496億円 | 990億円 | 506億円増 | 51.1%増 |
税金等調整前 | 1,986億円 | 1,296億円 | 690億円増 | 53.2%増 |
当期純利益 | 809億円 | 936億円 | 127億円減 | 13.5%減 |
連結当期純利益の増減要因 | 2011年4月~12月の累計連結決算要約 | 2011年4月~12月の累計連結当期純利益の増減要因 |
所在地別の営業利益 | 2011年4月~12月の所在地別営業利益 | 金融セグメント営業利益 |
■通期の連結販売台数見通しを3万台上方修正
このほか、2012年3月期の通期見通しの中で、北米や欧州といった市場での販売状況を反映し、連結販売台数の見通しを3万台プラスした741万台に上方修正した。また、日本国内でも2011年の5月に発売したプリウスα、12月に発売したアクアなどのハイブリッドカーを中心とした環境対応車を活用して販売増加に努めるとしている。
連結販売台数の通期見通し | プリウスαやアクアといったハイブリッドカーの環境対応力をアピール |
最後に伊地知 取締役専務役員は、「昨年3月に公表したグローバルビジョンのとおり、トヨタは各地域のお客様にとっての“いいクルマ”を作り、その結果として販売台数や収益を伸ばし、次の“いいクルマ”作りに再投資するサイクルを構築するよう務めてきました。“いいクルマ”は徐々に目に見える商品としてお届けできるようになってきており、引き続きこのよいサイクルをしっかり回して持続的成長を実現していきます」とコメントし、説明を締めくくった。
連結決算の通期見通し | 通期見通しの増減要因 | 通期見通しの増減要因における前年度比較 |
報道陣との質疑応答では、タイの洪水に関連する減産を28万台としつつ、1~3月で4万台挽回して通期としては24万台の減産と回答している。また、タイの洪水や東日本大震災から得た教訓として、パーツの供給拠点の一極集中を問題視して柔軟性を持たせることや、設計段階で専用品から代替可能な共通部品にシフトする取り組みを進めていることなどが明かされた。
世界市場での取り組みについては、「円高にはこれまで同様奇策はない」と語り、海外市場ではすでに始めている車両価格の引き上げを続けていくことになる。このほか、欧州市場の信用不安がどう展開していくかは見通しが立たないと言う。しかし、日本国内ではエコカー補助金が延長され、アメリカでも景気対策の施策や雇用情勢の向上といった要因があり、「自動車市場全体ではこれまでを上回るレベルになると予想している」と語られた。
質疑応答に臨む伊地知 取締役専務役員と早川 常務役員 | 質疑応答で「中国市場は昨年少し伸び悩みが見えたものの、昨年の88万台から100万台以上は売っていきたい」と語る伊地知 取締役専務役員 |
(佐久間 秀)
2012年 2月 8日