【特別企画】高橋敏也のプリウスPHVに乗ってみました!!【前編】
プリウスPHVでガソリン消費ゼロ通勤にチャレンジ


 不肖・高橋、40歳代後半、主にパソコン関係の記事などを書いて暮らしている。自宅が耐震工事で建て替えに入っていて、東京都杉並区に仮住まい中、仕事場は東京都千代田区にある。通勤手段は主にクルマ、3代目プリウス。片道約16kmの混雑した都内を、プリウスで往復(日によっては数回往復)する日々を送っている。

 ちなみにプリウスの前は、同じトヨタのマークIIブリットに乗っていた。積載量が大きく、好みのデザインだったので選んだクルマだ。しかし、ガソリンの高騰などもあり「燃費のいいクルマに乗りたい」ということで選んだのがプリウス。ちょうど3代目プリウスが登場したばかりということもあり、迷わずそれにした。

 これがもう大正解。自分としては運転方法を大きく変えたつもりはなかったが、マークIIブリットの時と比較して、なんと燃費は約3倍に伸びた。さらに工夫すれば燃費を向上させることもできたろうが、普通に乗って3倍の燃費ということで大いに満足した。そんなプリウスももう2年目、アクアとか、プリウスαとか、はたまた86(ハチロク)とか、気になるニューモデルが続々登場している。頭の中で「乗り換え」というキーワードがちらつく今日この頃。

仮住まいの駐車スペースに収まったプリウスPHV。普段はここに私の白いプリウスが停車している

 そんな中、Car Watch編集部から電話がかかってきた。以前、プリウスの長期レポートを連載してからのお付き合いなのだが、用件はというと「プリウスPHVに乗ってみませんか?」。現プリウスオーナーにプリウスPHVを運転してもらい、その違いなどをリポートしてほしいとのこと。もちろん「乗ります、乗せてください、乗るったら乗る」と即答。

 そしてゲット(借りただけです)したのがピッカピカの新車、プリウスPHVのSグレードであった。ボディーカラーは、何でもプリウスにはなく、プリウスPHVのみに設定されたトゥルーブルーマイカメタリック、そりゃ新車ですもの、各所にビニールがかかってたりして、それを剥がせる外せるというだけで大興奮もの。オドメーターに至っては引き渡し時で、わずか23kmである。一瞬、そのままプリウスPHVと一緒に、どこか遠くへ逃げようかと思ったぐらいである(燃費もよいらしいので、結構遠くへ逃げられそうだし)。

 冗談は別として、実にあっさりかつスムーズに、私はプリウスPHVをゲット(借りただけです)したのであった。ではそのプリウスPHV、いったいどういった代物なのか……。

そもそもPHVとは何ぞや?
 そりゃあなた、私だってPHVが「プラグイン・ハイブリッド・ビークル(Plug-in Hybrid Vehicle)」の略称だということは知っている。「プラグイン」のプラグは家庭やオフィス、充電スタンドにあるコンセントを意味し、そのプラグと接続して、プリウスPHVのバッテリーに電力を充電できるということだ。もちろん充電した電力は走行などに利用し、通常のハイブリッド車を超える、高い省燃費性能を発揮する。

 要するにプリウスPHVは、従来のプリウスよりも高性能なバッテリーを搭載し、そのバッテリーに家庭やオフィスなどで「プラグイン」で充電できる。そしてバッテリーの充電量に応じてEV(Electric Vehicle)走行モードと、HV(Hybrid Vehicle)走行モードを切り換えつつ走り、高い省燃費性能を実現しているという訳だ。

 別の言い方をすると、バッテリーがフル充電の時は電気だけで走って「燃料=ガソリン」を使わない。そしてバッテリーの充電量が少なくなるとハイブリッド車に切り替わって、バッテリー+モーターとエンジンを賢く使って走るのである。走行モードを手動で切り換えることもできるが、基本的にドライバーが走行モードを意識する必要はない。バッテリーの充電状況を車が把握していて、クルマが自動的にモードを切り換える。

 充電できるハイブリッド車がプリウスPHV。そして充電しておけば最初は電気自動車として走り、やがてハイブリッド車に切り替わる。結果、カタログ燃費(プラグインハイブリッド燃料消費率、JC08モード)は、驚異の61.0km/Lだ! 3代目プリウスオーナーとしてプリウスPHVを実際に走らせ、その感覚を確かめるのが、私の使命ということなのだ。

 なお、プラグインハイブリッド燃料消費率に関しては、61.0km/Lという数値を見て私も最初は「嘘だろ」とか思い、同時に疑問も湧いてきた。「プリウスPHVは充電量に応じて電気自動車として“燃料を使わずに”走る。その間は燃費は無限大になるはず。ではどうやって燃費を算出しているのか?」。その疑問にカタログが答えてくれた。

 要するにPHVの燃費計算では、HV走行時の燃費である31.6km/Lに国土交通省が定めた係数を組み合わせて算出するのだ。その係数を「ユーティリティファクター」と呼ぶのだが、平均的な走行パターンにおける、EV走行の貢献度を数値化したものなのだそうだ。ちなみにプリウスPHVの場合は、走行全体のうち約48%をEV走行するとして計算したものだ。

プリウスPHVのエンジンルーム。プリウスと同じ1.8リッターのエンジンに加え、パワフルなモーターを搭載している「PLUG-IN HYBRID」の文字が。PHVであることのアピールだ

プリウスPHVをじっくり観察
 PHVの概念は、ほぼ把握した。お次はプリウスPHVの外観的な特徴を把握したい。特に今現在、プリウスを運転している人間としては、プリウスとプリウスPHVの違いが気になって仕方ない。もちろんスペックの違いはカタログから把握できるが、リアルな違いは見て触って分かるものだ(我ながらいいこと言った)。だが、民家の悲しさ、私のプリウスとプリウスPHV、車両2台を並べて見比べられる場所などどこにもない。さらに言えば私のプリウスは3代目だが、その3代目プリウスはすでにマイナーチェンジを行っている。出来るなら新3代目プリウス、私のプリウス、そしてプリウスPHVを同時に比較したい。

 そこで日頃お世話になっているトヨタディーラー、東京トヨタ井草店に相談してみた。「すいません、最新のプリウスと私のプリウス、そしてプリウスPHVを並べて見比べてみたいんですが」。無茶なお願いではあるが、そこはそれ今まで築いてきた関係である。快諾してもらい、なんとか車両の比較ができることになった。

 取材当日、東京トヨタ井草店の店頭は「プリウスまみれ」になった。納車待ちなどのプリウスαが3台、我々が持ち込んだプリウスとプリウスPHV、さらに井草店が用意してくれた現行プリウス。挙げ句の果てには試乗車のアクアまでいる。プリウスまみれ、ハイブリッド車まみれとなった。そんな中、3台のプリウスを比較してみる。ここからは私のプリウスを旧プリウス、井草店の現行プリウスを新プリウスと呼ぶことにしたい。

 まず車格に関しては、3台とも同じボリュームだ。そもそも新プリウスと旧プリウスの違いは、細かいマイナーチェンジである。そしてプリウスPHVは、新プリウスをベースに開発されている。従って3台の外観には、細かな違いしかない。例えばエンブレムとか、グリルまわりのエクステリアなどだ。

東京トヨタ井草店に集結したプリウス軍団。手前からプリウスPHV、私のプリウス、そして現行のプリウス。団子じゃないけど三兄弟!

 面白かったのが、実車を比較しないと分からない違いだ。プリウスPHVの後部ドアを閉めた時の感触と、私の旧プリウスの後部ドアを閉めた時の感触や音が明らかに異なる。実はマイナーチェンジで、新プリウスの後部は強化されているのだ。もちろんそれをベースとしたプリウスPHVの後部も強化されている。その違いがドアを閉めた時の感触に現れた訳である。

 そのほかは写真を参照して欲しいのだが、言われないと気がつかない違いを1つ。プリウスPHVのトランクルームは、プリウスと比較してほんの少しだけ狭い(容量にして3Lだと言う)。これはプリウスPHVが後部から見て右側に、充電リッド(蓋)と充電ポートなどを装備しているからだ。だが、実車を比較しないと分からないほど、その違いは小さい。

 ちなみに豆知識だが、プリウスシリーズのトランクルームは想像以上に大きく使える。これは2年間、プリウスに乗った男が言うのだから間違いない。プリウスに乗っていて、よく知人から「プリウスってバッテリー搭載してるから、トランクルーム小さいんでしょ?」と聞かれるが、そんなことはまったくない。もちろんワゴンなどよりは狭いが、一般的なコンパクトセダンよりは広々としており、後部座席を倒せば結構な大荷物を余裕で搭載できる。

 いずれにしてもプリウスとプリウスPHVの、外観的な違いは把握した。もっともエンブレムが「プラグイン」を意識しているとか、グリルがプリウスPHVスペシャルだとか、そういったことは些細なことである。ここまで来たら次はいよいよプリウスPHVの核心部分、充電にチャレンジだ。

左から、私の旧プリウス、プリウスPHV、現行プリウス。フロントに関しては、細かい所ではあるが違いがある。現行プリウスはちょっとスポーティだし、プリウスPHVにはシルバーの飾りがある
ヘッドライトのデザインにも違いが。プリウスPHVのヘッドライト上部に、青い装飾が入っている。これはプリウスPHV独自のものだそうだ
テールランプのデザインも変更されている。プリウスPHVは現行プリウスがベースとなっており、デザインは一緒。私のプリウスだけ取り残されたような気がして……
プリウスPHVのバックドアにはハイブリッドのエンブレムがあるのだが、さりげなくプラグがデザインされていて「PHV」をアピールしているこちらは現行プリウスのもの。ハイブリッドエンブレムにはプラグのマークがない
車名エンブレムはもちろん「PRIUS PHV」である。ほかの部分でも小まめに「PHV」をアピールしているところがかわいいセンターメーター表示の解像度がアップしました! 旧プリウスオーナーが悔しがるところ(私だけか?)
見づらい写真で申し訳ないのだが、右端のボタンが「HV、EV」となっているほう(写真右)がプリウスPHVだ。プリウスの場合はHV走行が基本で、「EV」ボタンを押すと、可能なら電気のみで走行する。プリウスPHVの場合は同等の機能も持っているが、EV走行時にHV走行へ切り換えるという使い方も想定されているお世話になった東京トヨタ井草店の駐車スペースがプリウスまみれに! プリウスαが数台あったほか、写真から外れているが、アクアの試乗車もいた
毎度毎度、お世話になっている東京トヨタ井草店さん。この場を借りてお礼申し上げます店頭でアクアののぼりとともに、プリウスPHVののぼりも発見! プリウスPHVに関心を持っているお客さんは多いとのことだ

感動のプリウスPHV初充電!
 プリウスPHVを「らしく」運用するには、バッテリーをドシドシ充電したい。「らしく」と書いたのは、実のところプリウスPHVは充電しなくても、省燃費なハイブリッド車として運用できるからだ。ただし、単純にハイブリッド車として使うのであれば、普通のプリウスでいいという話にもなる。バッテリーが大きい分、プリウスPHVはプリウスよりもコストアップしている。コストアップ分をしっかり活用しなくては、プリウスPHVを導入する意義が半減してしまう。

 ちなみに後編でチラッと登場する、箱根駅伝の先導車などとして活躍した市販前のプリウスPHVは、重量約160kgのリチウムイオン電池を搭載していた。現行プリウスが搭載しているニッケル水素電池が約40kg、プリウスPHVのリチウムイオン電池は約80kgである。重量がプリウスの2倍もあるバッテリーを搭載しているのに、プリウスPHVのハイブリッド燃費(JC08モード)はプリウスよりも優れた値になっている。具体的に言うと、プリウスPHVのSグレードが31.6km/L、現行プリウスのSグレードが30.4km/Lなのだ。

 バッテリー性能の向上といった背景もあるのだが、プリウスPHVの基本性能の高さにはつくづく驚かされる。その上で、プリウスPHVはバッテリーを充電して、電気だけのEV走行を行えるのだ。もちろんEVモードでバリバリ走れば、省燃費性能は天井知らず。だからこそ、プリウスPHVをゲットしたからには、何はともあれ充電するのである。そんな訳でさっそく充電ケーブルを引っ張り出し、マニュアルで充電方法を調べる。そして分かったのは、プリウスPHVがAC200Vで充電するのを基本としていることだ。200VならプリウスPHVは、約90分でバッテリーをフル充電できると言う。

 この200Vを誤解している人が多いというので書いておくが、プリウスPHVは、一般的に使用されているAC100Vでも充電できる。プリウスPHVに標準付属する充電ケーブルの電源プラグは200V対応だが、オプションで100V対応の電源プラグも用意されているのだ(ケーブル本体は同じ物を使用)。ただし100Vを使った場合、フル充電にかかる時間は180分、約3時間になってしまうが。

 なお、プリウスPHVには、ほかの電気自動車のような急速充電コネクターは用意されていない。走行用の電力がなくなっても、プリウスPHVの場合はHV(ハイブリッド)で走行できるのだから急いで充電する必要性はないということなのだろう。EVで走れなくても、HVがある。これこそプリウスPHVのアドバンテージと言える。

 そんな訳でプリウスPHVの充電だ。当然の話として、充電は安全な環境で行わなくてはならない。車は日常的に使用するものだし、プリウスPHVの場合は日常的に充電して走らせることになる。日常的に行う作業だからこそ、安全性が重要になる。

 ちなみに私の現在の住居、建て替えのための仮住まいを調べてみたところ、分電盤から単独で出ている配線が野外にあり、さらに近場でアース線も確保できることが分かった。電源は単相AC100Vだが、確保できないよりはいい。とりあえずこのコンセントを、安全性を確保した上で使用することにした。幸か不幸か不肖・高橋、パソコン関係の物書きであるため、多少なりとも電気の知識はあるので、この安全確認が可能になった。

 では、そういった知識を持ち合わせていない場合はどうするか? トヨタではプリウスPHVの充電環境に関して「推奨工事仕様」の資料を用意している。これを見る限り、もしプリウスPHVのために充電設備を新たに用意するとしても、大きな工事や設備は不要だということが分かる。よく分からない場合は、車両を購入するトヨタのディーラーで相談してもいいし、工務店などに相談してもいい。

 ポイントは「単相200Vの専用回路を、推奨工事仕様」に準じて用意することだ。家庭用のコンセントが100Vなので、「ええっ? 200V?」とか思う人もいるだろう。だが、200Vは一般家庭であればエアコンなどで使われている場合がある。面倒なことは基本的にプロ任せにして、プリウスPHVの導入と一緒に充電環境も整えてしまうのがいい。もちろんプリウスPHVのために用意した充電環境は、将来的に電気自動車へ乗り換えても活用できるのだから。

 さて、前置きが長くなったが、プリウスPHVの充電である。100VのコンセントにプリウスPHV標準付属のケーブルを接続、ケーブルに用意されたコントロールユニットの電源インジケーターが点灯するのを確認。いよいよプリウスPHVを後ろから見て右側後部にある電源リッドを開き、充電コネクターを接続する(プラグイン!)。すると充電インレット脇のインジケーターランプが点灯し、充電が始まったことが分かる。

 ここから約3時間で、フル充電だ。自動車を充電している喜びを噛みしめつつ、3時間寒空の下、プリウスPHVを見ていてもいいのだが、それではあまりに非生産的。もちろんバッテリーがフルになれば、自動的に充電は終了する。しかもプリウスPHVには、素晴らしい機能が用意されているのだ。それがスマートフォンとの連動、「eConnect(イーコネクト)」である。

 プリウスPHVが対応カーナビを搭載していれば、ユーザー登録するだけでeConnectを利用できるようになる(初度登録日から3年間無料、通信パケット料はユーザー負担)。eConnect自体はアプリケーションとして提供されているので、やはり対応するスマートフォンやiPhoneにインストールする。

 eConnectの仕組みは意外とシンプルである。プリウスPHVが搭載する通信機能に対応したカーナビは、まずプリウスPHVのデータをトヨタスマートセンターに送る。eConnectをインストールしたスマートフォンは、そのトヨタスマートセンターにアクセスして、プリウスPHVの状況を表示するのである。

 ではeConnectで何ができるのか? まず私が真っ先に活用したのが、バッテリーの充電情報を知る機能だ。離れたところからスマートフォンとeConnectで、どれぐらいバッテリーが充電されたか、その充電量でどれぐらいEV走行できるのか、あとどれぐらいでフル充電になるのか……こういったことを把握できる。また、ケーブルは接続しているが充電を開始していない場合、eConnectからリモートで充電を開始することもできる。

 eConnectを使うことで、プリウスPHVの充電状況をいつでもどこでも知ることができる。もちろんeConnectにはこのほかにも、プリウスPHVで活用できる便利な機能が用意されている。また、トヨタスマートセンターの活用という点では、eConnect以外にも「トヨタフレンド」というアプリケーションが用意されている。これは言うなれば「トヨタ版Twitter」で、登録ユーザー同士の双方向コミュニケーションを「つぶやき」という形で行うことができる。

 「充電完了なう」とか「こんなところで充電スタンド発見、超便利だし」とか、そんな雰囲気になるのだろうか? トヨタフレンドに関しては、今後の展開が楽しみである。

 eConnectに関してはさらに紹介したい機能、実際に活用した機能があるので、それらは後編で紹介したい。何はともあれプリウスPHVの充電だ。eConnectを駆使して充電状況をチェックしていたら、3時間と少しで「充電完了」の文字が! 電気だけで走れる「EV走行可能距離」は21.2km! 充電が終わったプリウスPHVは、約21kmを電気自動車として走ることができる! よし、出発だ!(充電時間とEV走行可能距離がカタログスペックと異なる点に関しては、後編で取り上げる)

ガソリン給油口のちょうど反対側、後ろから見て右側に「充電リッド」、すなちわ充電口がある充電リッドを開くと、そこには見慣れぬ充電ポートが隠されていた(隠した訳じゃないけど)充電ケーブルはというと、トランクルームを開けて……
ここに入っている。外出先での充電を考えれば、ケーブルは常備しておきたい。充電スタンドによっては、ケーブルが用意されている場合もあるがこれがプリウスPHVに標準付属する充電ケーブル。標準で付属するケーブルは、AC200V対応のものなので注意ちゃんとオプションでAC100V対応のプラグも用意されている。上が200V用……といっても、違いはプラグ部分だけだ
100Vと200Vの違いは、この部分だけ。ケーブル本体は同じ物を使用する。外出先などでは100V充電も考えられるので、できれば100Vプラグも常備したいところだケーブルに取り付けられたコントロールユニット。安全性の確保など、重要な役割を持っているプリウスPHVのポートに接続する普通充電コネクター。業界全体で、このコネクターの共通化が図られている
充電ケーブルを持って、嬉しそうにしているおっさん。いや、本当に嬉しいんだって!感動のプラグ、イン! といってもまあ、小さな充電ランプが点灯するだけなんですけどね
ちなみにプリウスPHVはプラグイン・ハイブリッド車。だからガソリンの給油口もちゃんと用意されている。45L満タンで、充電を小まめに使えば、走行可能距離はどんどんどんどん伸びる私のスマートフォン(Android携帯)に、トヨタのアプリケーションをインストール。eConnectとトヨタフレンドだ。特にeConnectはプリウスPHVオーナー必携のアプリであるあらかじめユーザー登録はしてあったので、さっそくeConnectを起動、ログインしてみる。現在「プリくん(私のプリウスPHVの愛称)」は充電していない状態。「充電開始」とあるのは、充電ケーブルは接続してあるのにタイマーなどで充電が始まっていない状態から、充電を開始するための機能だ
プリくん、充電中! 離れたところにあるプリウスPHVの状況が、このようにスマートフォンからチェックできる。充電完了まで、あと3.7時間。「あれ? 100Vなら3時間じゃないの?」と思ったあなたは鋭い。この理由は後編を見てね仕事中に充電したのだが、状況が気になる、気になる。時計を見て、eConnectをチェックして、時計を見て……おおお! EV走行可能距離が結構伸びたぞ! すごいぞプリウスPHV、仕事しろ高橋!
あと0.9時間! 0.9だから……54分ぐらいか?! 仕事サボってギター弾いてた証拠、ギターピックが脇にある……充電完了! 完了! EV走行可能距離、21.2km! 約21kmも、電気だけで走れるんだ! すごいぞプリウスPHV!

いよいよガソリン消費ゼロ通勤に初チャレンジ!
 充電環境も整い、充電も完了した。いよいよプリウスPHV第1の課題、「ガソリン消費ゼロ通勤」にチャレンジである。プリウスPHVをフル充電してEV走行を行い、自宅とオフィスの行き来を完全に電気だけ、すなわちEV走行だけで乗り切ろうというのである。一応、カタログスペックによればプリウスPHVは、フル充電で最大26.4kmを走行可能。

自宅とオフィスの距離は約15km、途中どこかに寄った場合でも、18kmほどの距離である。これならフル充電しておけば、プリウスPHVは電気だけでガソリンを1滴も使わず、言い換えればエンジンを始動させずにEVモードで走りきるはずだ。ただし現実は、そう甘くない。

 これは電気自動車に関して調べた時に知ったことだが、電気自動車の走行可能距離は、環境や条件によって大きく変化する。向かい風であったり、上り坂の距離であったり、はたまた運転の仕方で電力の消費率は大きく変化するのだ。実際、プリウスの場合でもラフなアクセルワークをするだけで、燃費は低下してしまう。また、プリウスの場合はエアコンが暖房になるとエンジンが稼働する割合が高くなる。もちろんその分、燃料を消費する訳だ。

 また、プリウスPHVのマニュアルを見ても、エンジンがかかるタイミングに関しての記述がある。「時速100kmを超えた時」「オートエアコンが暖房としてONになった時」「急加速やきつい上り坂などパワーが必要になった時」などなど。状況によってプリウスPHVは、自動的にエンジンを始動させる。

 もっとも私の通勤路に高速道路はないので、100km/h以上にはならないし、急な上り坂などもない。急激なアクセルワークを控えるというのは、プリウスで実践済みである。問題はこの季節柄、暖房をどうするかである。というのもうちの嫁、南のほうの出身で、寒さに極端に弱いのである。実はプリウスの燃費を向上させようとあれこれやっていた時も、嫁が設定する暖房温度が、最大の障壁だったりしたのだ。

 「寒いじゃ、もっと暖かくするじゃ!」とか言いながら(うちの嫁のは語尾は“じゃ”なのだ)、オートエアコンの設定温度を28度(!)ぐらいにしたりする。プリウスやプリウスPHVにとって、暖房の稼働は燃費に大きく影響するのだ。だが、プリウスPHVにはそんな状況に対応した心強い機能が用意されている。それが運転席、助手席共に用意された「シートヒーター」だ。

 プリウスPHVのシートヒーターは「Hi/Low」で切り換えられるようになっている。プリウスPHVには、ベースグレードであるSグレードを含め、このシートヒーターが全車に標準装備されている。これは冬場に暖房を確保しつつ、バッテリーによるEV走行距離を延ばすことを可能にするためのアイデアなのだろう。

 初のガソリン消費ゼロ通勤チャレンジということもあって、冬場のEV走行で一番の障壁となる嫁は除外。緊張感とともに自宅をスタート、EV走行だけで約15km離れたオフィスへと向かう。感覚としてはプリウスのEV走行、モーターだけで走行しているのと同じである。実に静かだし、ドライブフィーリングは普通のクルマとなんら違いはない。

 オートエアコンを起動しているとEV走行モードが解除されてしまう可能性が高いのでOFFにし、シートヒーターをLowで使いながらの走行。さらにアクセルワークをスムーズにして、エンジンがかからないようにする……。結果、なんのトラブルもなくプリウスPHVはオフィスに到着した。ただの一度もエンジンを始動させず、バッテリーに蓄えられた電気だけで走りきったのである。

 近距離は電気自動車、中・長距離はハイブリッド車。両方のいいとこ取りをしたクルマ、それがプリウスPHVということを、体感した瞬間である。本当のところ、ちょっと感動的ですらあった。これは行ける! ということで次はガソリン消費ゼロ通勤、その往復にチャレンジだ。

プリウスPHVに乗り込み、スイッチON(基本プリウスPHVはハイブリッド車なので、エンジンスタートではなく、システム起動[ON]である)。充電完了のメッセージがまぶしい!もちろんEV走行モードでスタートする。トリップメーターをリセットして、準備万端。ちなみに左端の「21.5km」という表示に注目。これはEV走行可能距離を示しているのだが、eConnectの表示とは異なっている。これは起動時にプリウスPHVがバッテリーの状況をチェックし表示している。こちらの表示の方が、よりリアルなものということだ何事もなくオフィス前に到着。走行距離15.5kmを完全EVモードで走りきった
それでもプリウスPHVは「あと8.3kmはEV走行できますよ」と言っている。15.5+8.3は23.8km……出発時の21.5kmとは異なった数値だ。これは、走行状況や環境によってEV走行可能距離が変化することを意味している走行時間38分、距離15.5km、そして燃費は「99.9km/L」。ただし、完全EV走行だったので、実際には「無限km/L」である。だって電気しか使ってないから!(ちょっと自慢げ)オフィスでもeConnectで状況を確認してみる。まだバッテリー残量があり、EV走行可能距離は8.3kmと、プリウスPHVのリアルなメーターと同じ数値になっている

あっさり成功したガソリン消費ゼロ通勤、しかも往復!
 基本、盛り上がる話というのは、例えば主人公が困難に直面し、それを苦労の末に乗り越えるとか、そういったものである。カタルシスというか、挫折のち成功というか。エッセンスとしてドラマチックな展開が必要なんじゃないかと、ふと思ったりもしてみる。

 だが、プリウスPHVを使ったガソリン消費ゼロ通勤、怒濤の往復編は何のトラブルもなく、ドラマチックな展開をまったく見せずに成功、終了した。いや、それが当たり前なんだろうけど、何か盛り上がる要素はないものかと探してみたりするが、まさしく皆無。クルマを使った通勤の往復でエンジンをまったく使わず、すなわちガソリンを一滴も使用しなかったというのは凄い話だと思う。そこだけ切り出せば電気自動車であり、燃費は無限大ということになるからだ。それが普通にできるというのは、ドラマチックではないにしても、やっぱり凄いことなんだろうなあと思う。

 自宅で出発前にフル充電状態となったプリウスPHVに乗り、オフィスまでEV走行する。オートエアコンはOFFにしたが、その代わりにシートヒーターはLowで暖房とした。この状態で大人1人を乗せて、約15kmの市街地走行。オフィス到着時には、まだ少しだけEV走行可能な電気が残っていた。

 オフィスではやはり安全を確認した回路で、プリウスPHVの充電を行う。多少、走行用の電力がバッテリーに残っていたため、フル充電までの時間は最初より短い。もちろん充電状況はeConnectで、リアルタイムに把握できる。まったく何事もなく、充電は完了。帰宅時は嫁が同乗、大人2人を乗せて、シートヒーターを運転席、助手席共にLowで使用した。なお、1個所寄りたい場所があり、復路は走行距離が若干伸びている。それでもやはりバッテリーに余裕を残して自宅に到着。

 正直に言うが本当に、何も、特別なことはなかった! 私が充電状態を気にして、何度も何度もeConnectを使ったぐらいである。後はもう、何もすることがないのである。充電という作業を除けば、プリウスPHVは省燃費性能に優れたハイブリッド車なのである。記事にしたくても、本当に何もないのだから仕方ない。

 こうして私のプリウスPHV、ガソリン消費ゼロ通勤チャレンジは何の盛り上がりもなく、私1人が大騒ぎしただけで幕を閉じた。ちなみに嫁に向かって「今日はね、ガソリンを1滴も使わないで往復したんだよ!」と言ったら、「だって充電したんでしょ、電気」と返された。はい、そのとおりです、すいません。

 それと意外だったのは、そこそこ寒い中で帰宅したのだが、あの寒がりな嫁が文句を言わなかったことだ。実はシートヒーターが嫁には好評で、「わたしの使っている電気敷毛布みたいで暖かいじゃ」とのこと。渾身のアイデアであるプリウスPHVのシートヒーター、電気敷毛布にされちゃいましたよ、トヨタさん……。

充電完了を、eConnectから確認する。だいぶ慣れてきたので、もう騒がない。「ああ、充電が完了したのだなあ」とか余裕であるメーター読みでEV走行可能距離、21kmからスタート運転席側から見た、フロントコンソールトレイにあるシートヒーターのスイッチ。前回と同様、オートエアコンはOFFにして、シートヒーターをLowで使用する
明るい時に撮影したシートヒーターのスイッチ。プリウスPHVでは運転席、助手席のそれぞれに独立したシートヒーターが装備されているオフィス前到着、走行距離15.5km、EV走行可能距離を6.3km残してフィニッシュここでハイブリッドインジケーターの面白いデータを1つ。これは5分間ごとの燃費を示したグラフなのだが、EV走行しかしていないので、キレイにフル表示されている。一見、無意味だとも思うが、この場合はクルママーク、すなわち回生ブレーキによる発電量が重要になる。この分だけ、EV走行可能距離が伸びる(取り戻せる)からだ
オフィスで充電開始。バッテリーに残量があったため、出発時よりは短い時間でフル充電できる帰宅時の状況。ちょっと寄り道をしたので、少しだけ走行距離が長くなっている。しかし燃費は99.9km/Lで、なおかつ2.5kmのEV走行可能距離を残している。ガソリン消費ゼロ通勤往復、無事成功!

凄いのに、凄さを感じさせないプリウスPHV
 家庭のコンセントから充電できるんだよ! 充電したらその分だけ、電気だけで走ることができるんだよ! だから、平日の通勤では一滴もガソリンを使わないんだよ! 電気がなくなっても、そこから普通にハイブリッド車として走ることができるんだよ! 電気自動車だったり、ハイブリッド車だったりするんだから、エコだし環境にも優しいんだよ! 本当に凄いんだよ、プリウスPHVは!

 だが、そんな凄さを感じさせないことこそ、プリウスPHVのもっとも凄いところなのかも知れない。安全に充電すること、充電したらしばらくは電気だけで走ることができる。近距離だけを小まめに充電しながら走れば、電気自動車とほとんど変わらないということ。しかし電気自動車と違って、電力切れの心配は不要だということ。そのあたりが把握できていれば、プリウスPHVはいい相棒になってくれる。

 もちろんeConnectであったり、走行モードの切り換えであったり、プリウスPHVにはさまざまな機能が用意されている。それらを使えば、より便利にプリウスPHVを運用することができるのだ。さらに後編で詳しく紹介するが、プリウスPHVはスマートハウスとも連動できる。シンプルにも使えるし、さまざな機能を存分に楽しむこともできる。間口が広くて奥の深い車、それがプリウスPHVと言えるだろう。

 さて、現役プリウスオーナーから見たプリウスPHVだが、感覚的にはほぼ同じだと思う。プリウスより大きく重いバッテリーを搭載しているプリウスPHVだが、それを感じるシーンはほぼ皆無である。一方、プリウスのニッケル水素バッテリーよりも、プリウスPHVのリチウムイオンバッテリーのほうがパワフル(流せる電流が強い)だというが、それを感じることもほとんどない。若干だが、プリウスPHVの方がしっかりしたトルク感だなと思うことはある。

 いい意味でプリウスPHVは、プリウスが次の世代へと向かって進化した姿なのだと思う。もちろんその進化は家庭で、プラグインで充電できるというだけに留まってはいない。住宅とのネットワーク、すなわちスマートハウスとの連携なども今後の「車の在り方」に関わって来るポイントだ。次回、後編では前編で積み残したプリウスPHVのポイントや、スマートハウスとの連携を紹介したい。また、ガソリン消費ゼロ通勤は近距離圏でのプリウスPHV運用だったが、後編では長距離をプリウスPHVで走る。果たして長距離ではEV走行、そして燃費はどうなるのだろうか? 乞うご期待!

さっそうと加齢臭をまき散らしながらプリウスPHVを運転するおっさん。やっぱり嬉しそうだな、おっさん

(高橋敏也)
2012年 2月 24日