三菱電機、EV用SiCインバーター内蔵モーターシステムを開発
モーターとインバーターを同軸配置し小型化

EV用SiCインバーター内蔵モーターシステム、左がインバーター部、右がモーター部

2012年3月8日発表



 三菱電機は3月8日、同社が開発したEV(電気自動車)用SiCインバーター内蔵モーターシステムに関する説明会を開催した。

 EV用SiCインバーター内蔵モーターシステムは、モーターの駆動部であるインバーターのパワー半導体素子すべてをSiC(炭化ケイ素)で構成。インバーターをモーターと同軸上に配置することで、EV用モーターシステムとして業界最小を実現したと言う。

タイヤを装着して、EV用SiCインバーター内蔵モーターシステムを動作させていたSiCインバーターを同軸上に配置する

 同社のEV用モーターは、市販車での採用はない。Si(ケイ素)インバーターを採用するEV用モーターを2014年に、SiCインバーター内蔵モーターシステムをそれ以降に出荷し、EV用モーターシステムの外販を図っていく。

三菱電機 先端技術総合研究所 電機システム技術部 竹内敏恵部長

 このSiCインバーター内蔵モーターシステムは、同社先端技術総合研究所で研究開発が行われている。先端技術総合研究所 電機システム技術部 竹内敏恵部長は、同社のモーター設計技術の特徴を「三次元微細構造まで詳細に考慮した設計」「モーター外周部にかかる応力を考慮した設計」「駆動電源の特徴を考慮した設計」にあると言う。実際の動作時の力の加わり方を解析することで、適切な磁界を発生させ続け、出力を得る。また、インバーター駆動によるモーターでは、インバーターからの電流に歪みが発生しており、その電流歪みを考慮した損失解析が大切と言う。

 これらモーター基本技術の上に、SiCインバーター内蔵モーターシステムは成り立っており、「円筒状のモーターにインバーターを内蔵することで体積を従来型(インバーター、モーター別体タイプ)に比べ50%減少した」「これはインバーターやモーターの冷却を一体化することで実現した」とし、SiCインバーターを用いることでSiインバーターに比べ、損失を50%以下に低減。そのほか、巻線密度向上と磁石利用効率向上で、モーター出力を5%改善していると言う。

三菱電機のモーター技術モーター磁気設計技術車載用モーターのロードマップ
左下の東京モーターショー出展品では、インバーターとモーターが別体となっていたが、同軸配置し一体化車載用のモーターは、出力特性が大きなポイントになる。JC08モード走行の損失解析ツールも開発磁気解析などにより、高出力化も図られている

 この試作システムの出力は70kWクラス。EVのi-MiEVの出力が47kW、リーフが80kWなので、コンパクトカー程度の出力を想定しているものだろう。もちろん、EVだけでなく、HV(ハイブリッド車)やPHV(プラグインハイブリッド車)にも使用可能ではあるが、HVやPHVでは、ほかにエンジンやトランスミッションも必要となり、「インバーターとモーターが同軸配置となっているこのシステムは全長が長くなることから(HVやPHVには)向かない」ものであると言う。EVの今後を見た場合、ホイール内にモーターを配置をするインホイールモーター式のものが登場することが予想されているが、これに関しては「小型化が可能なので、対応できる」ものであるとした。

 今後、さらに高出力化、レアアースレスなどの研究を続け、市販化を目指していくこととなる。

(編集部:谷川 潔)
2012年 3月 8日