横浜ゴム、低燃費タイヤ「ブルーアース・エース」「ジオランダーSUV」説明試乗会【中編】
“スッキリした気持ちよさ”を持つかなり魅力のあるタイヤ


 前編では低燃費タイヤ「ブルーアース・エース」「ジオランダーSUV」に投入された技術を紹介したが、この中編ではモータージャーナリストの日下部保雄氏による「ブルーアース・エース」の試乗記をお届けする。


 DNAシリーズでいち早く環境性能に注目した商品を展開していた横浜ゴムが、さらに進んだ環境性能を持つタイヤとして展開しているのがブルーアースシリーズ。転がり抵抗などの燃費性能を特化させただけでなく、ウエット性能、コンフォート性能も合わせてレベルアップしている。

 そのブルーアースシリーズの最新作がブルーアース・エース。ポジション的には従来のアース1の範囲をカバーするが、コンフォート性能を向上させつつ、スポーティ性能をカバーできるポテンシャルを備えている。

 低燃費タイヤのラベリング制度のグレーディングでは転がり抵抗性能「A」、ウエットグリップ性能「b」を獲得しており、低燃費タイヤとの先駆者としての意地を見せている。グレーディングではブルーアースシリーズの中ではブルーアース1が「AAA/c」を、ブルーアースAE-01は「AA/c」を得ており、今回はウエットグリップ性能を「b」まで上げたことが注目される。タイヤのポジションチャートでいえば、ブルーアース1とブルーアースAE-01の中間に位置するグレードになるが、カバーする範囲は広い。

転がり抵抗性能「A」、ウエットグリップ性能「b」を持つフルーアースA

 このブルーアース・エースの試乗コースは、クローズドのテストコースで操舵フィールの確認とウエット円旋回、それに一般公道が用意されていた。

 転がり抵抗軽減技術には各社知恵を絞っており、軽量化とゴムの技術がポイントになる。ブルーアース・エースでは同サイズのアース1に比較して9%の軽量化とともにナノブレンドゴムと呼ばれる専用コンパウンドを開発し、低転がり抵抗とウエットグリップ性能を獲得し、併せて耐久性の向上が図られている。アース1と比較して、燃費改善率は4.4%、ウエット制動は20%、ドライ操安性は7%、ウエット操安性は22%のアップとなっている。

 さて、クローズドコースの試乗でウエット円旋回とドライの簡単なレーンチェンジを行った。車両はマークXでタイヤサイズは215/60 R16。アース1との比較試乗だ。

 ドライのレーンチェンジでは60km/hのややタイトなもの、80km/hでのやや長めのスパンのものを行った。アース1単体で乗れば、腰のしっかりしたタイヤで、操舵応答やレーンチェンジ後のヨーの収束などはこんなものかなと納得できるものだったが、ブルーアース・エース装着車を同じ条件で走ってみると違いはかなり明確になった。

 ハンドルを切って曲がるときの最初の反応が素直で、スーと曲がっていく。かといってスポーツタイヤのようなグイとノーズを向けるような感じではなく、あくまでも自然に曲がっていくフィーリングだ。ハンドルを素早く切り返した時の反応も適度にシャープで好ましい。タイヤ剛性も妥当だと感じられた。アース1よりも明らかに操舵量が少ないのは初期のハンドル応答性だけでなく、タイヤのロールに対してトレッドとサイドの剛性バランスがよくて、適度にしなってくれるからだろう。

 これは操舵量が多めの60km/hのレーンチェンジでも、操舵量が少なめの80km/hの領域でも同様なフィーリングを持っていた。

 ウエット円旋回は楕円状の15R程度のもので、水深はコースの関係で一定ではないがアース1とブルーアース・エースの違いも確認できた。同じ速度で走らせると操舵角が異なり(ブルーアース・エースが小さい)、限界域の速度は40km/h前後だが、2km/hほどブルーアース・エースが高い。この差は大きく、実際の路上でもブルーアース・エースの制動やコーナリングでのウエットグリップ効果は大きいことは想像に難くない。低燃費タイヤでウエットグリップ性能がbというのはなかなか魅力的だ。

特設コースに水をまいて、ウエット円旋回用のコースを作る最初は、アース1装着車で周回次に、ブルーアース・エース装着車で周回した
高いウエットグリップ性能を持つブルーアース・エース

静粛性の高いブルーアース・エース
 一般公道ではレクサスIS350とアウディA4を試乗。レクサスのタイヤサイズはフロント225/45 R17、リア245/45 R17、アウディは225/50 R17でいずれも標準サイズ。西湘パイパスと箱根ターンパイクで適度に乗りまわした。

西湘バイパスを走行中

 最初に感じたのはスムースなことと路面接地性が高いこと、それに静粛性の高さに驚いた。低燃費タイヤは軽量化のために静粛性と乗り心地を両立させるのが難しいが、ブルーアース・エースは高いレベルで両立させている。

 リアシートに同乗したカメラマンから「静かなタイヤですね~」という声が思わず出たことからもこのタイヤの性能が理解できる。速度にかかわらずタイヤのパターンノイズはよく抑えられており、ロードノイズがかなり低い部類だ。ISでは敏感に耳を澄ますとリアからわずかにノイズが入ってくるが、それもほとんど気にならない程度だ。

 乗り心地は腰のあるもので、段差でもマイルドな感触。決してソフトでふわりとしたものではないが、突き上げなどは適度に遮断されているので心地がよい。路面の荒れたところでは低燃費タイヤではゴツゴツしたショックを感じることが多いが、ブルーアース・エースではそのショックは適度にいなされている。

 西湘パイパスでは高速直進性に優れており、微少舵でのハンドルのスワリが向上していることを確認できた。アース1ではハンドル中央付近にやや不感帯があったが、この部分の改善はロングドライブに効果が高い。

 ターンパイクではやや高Gをかけてみたが、タイヤの剛性バランスは崩れず、粘り腰でコーナリングしていく。がっちりとしたグリップ感ではないが、コーナリングパワーが高く、スムースにハンドルに反応して、切り増したときの応答性も安心感のあるものだ。4WDのアウディでも、2WD(FR)のISで感じたフィーリングと変わらず、静粛性、ハーシュネス、ハンドリングとも破綻のないものだった。

箱根ターンパイクも走ってみた

 ブルーアース・エースは守備範囲の広いタイヤで、コンパクトカーから輸入車まで多くのクルマとの相性がよい。スポーツタイヤの様ながっちりしたグリップではないが、ブルーアース・エースの性格を表すとしたら“スッキリした気持ちよさ”になるだろうか。すべてにわたって万能とは言わないが、かなり魅力あるタイヤだった。

(日下部保雄)
2012年 3月 27日