横浜ゴム、低燃費タイヤ「ブルーアース・エース」「ジオランダーSUV」説明試乗会【前編】
ヨコハマらしく、走りの性能も高い仕上げに

低燃費タイヤ「ブルーアース・エース」

2012年3月11日開催



 横浜ゴムは3月11日、一般乗用車用低燃費タイヤ「BluEarth-A(ブルーアース・エース)」、SUV用低燃費タイヤ「「GEOLANDAR SUV(ジオランダー・エスユーブイ)」の説明試乗会を開催した。

ブルーアース・エースジオランダーSUV

 ブルーアース・エースは、同社の低燃費タイヤブランドである「ブルーアース」シリーズの中で、コンパクトカーから高級セダンまで対応するマルチパフォーマンス性を狙ったものであり、245/40 R19 98W~175/65 R14 82Hの38サイズをラインアップ。4月1日発売の6サイズを除き、すでに販売は開始されている。

 一方、ジオランダーSUVは、同社のSUV用タイヤ「ジオランダー」シリーズの中でも、よりオンロード志向の都市型クロスオーバー車や中・小型SUVへ向けた製品。245/50 R20 102V~175/80 R15 90Sの26サイズをラインアップ。こちらもすでに販売が始まっている。

 本記事では、技術説明会の模様を前編として、低燃費タイヤ「ブルーアース・エース」の試乗を中編、SUV用タイヤ「ジオランダーSUV」の試乗を後編としてお届けする。


ウエットグリップも重視したエコタイヤ「ブルーアース・エース」
 ブルーアース・エースの企画に関しては、横浜ゴム PC製品企画部 製品企画1グループ グループリーダー関口義英氏が解説。同社の低燃費タイヤブランドであるブルーアースは、青い地球がモチーフになっており、社会に対するやさしさや、環境負荷低減がテーマとなっている。

ブルーアース・エースのトレッドパターンセンター部には稲妻型のライトニンググルーブを採用サイドにはディンプルを配するなど空気抵抗にも配慮

 同社による調査では、タイヤに求める性能として「ブレーキの効き」「乗り心地」「濡れた路面での性能」「燃費」などが上位を占めており、雨の日の事故率が晴れの日の3倍であることを紹介。タイヤメーカーとしては、安全性の追求に限界はなく、ブルーアース・エースがそうした雨の日の安全性も追求したタイヤであると紹介した。

 ブルーアース・エースのラベリング制度のグレードは、転がり抵抗性能A、ウエットグリップ性能b。転がり抵抗性能を低燃費タイヤのレベルとしながら、ウエットグリップ性能を重視していることが分かるものとなっている。ブルーアースシリーズには、転がり抵抗性能AAA、ウエットグリップ性能cの「BluEarth-1(ブルーアース・ワン)」、転がり抵抗性能AA、ウエットグリップ性能cの「BluEarth AE-01(ブルーアース・エーイーゼロワン)」、ミニバン向けに作られた転がり抵抗性能A、ウエットグリップ性能bの「BluEarth RV-01(ブルーアース・アールブイゼロワン)」があるが、ブルーアース・エースは、ブルーアースAE-01よりもオールラウンド性能、とくにドライやウエットでの走る・曲がる・止まるを意識したタイヤになる。サイズラインアップも多く、ヨコハマの低燃費タイヤの中心になっていくモデルだ。

低燃費タイヤであるブルーアースシリーズのコンセプトユーザーニーズ。ブレーキの効きが重要視されているブルーアース・エースのコンセプト。低燃費タイヤ性能に加え、走りの性能を打ち出している
製品のポジショニングマップ。ブルーアース・エースは、アース1を置き換える製品になるターゲットユーザー。重量級セダンからミニバン、コンパクトカーまでをカバーするタイヤサイズ。すでに32サイズが発売されている

 そのブルーアース・エースに投入された技術に関しては、タイヤ第一設計部 設計1グループ リーダーの斉藤賢介氏が解説。ブルーアース・エースは、「低燃費」「ウエット」「耐摩耗」の3つの特性を向上させるため、専用ナノブレンドゴムを採用しており、「DNA ECOS(ディーエヌエー エコス) ES300」と比較して、JC08モードで4.4%の燃費改善を実現。オレンジオイルが増量してあるほか、補強材となるシリカも、特性に合わせた2種類のシリカを採用している。

 そのほか、重量級のセダンにも対応しつつ軽量化を実現するためにトレッドに非対称パターンを採用。センター部には、エッジ長を伸ばす大小2つの稲妻型グルーブ「ライトニンググルーブ」を配し、高い排水性を確保している。このトレッドパターンについては、低燃費性能、耐摩耗性能に配慮しており、コンピューターによる低燃費シミュレーション、摩擦エネルギーシミュレーションを繰り返してチューニングを図ったものであるとした。

ブルーアース・エースの採用技術ブルーアース・エース専用ナノブレンドゴム

 トレッドパターンは、運動面だけでなく、騒音にも配慮。ブロックのピッチの大小差を小さくして、摩耗時の静粛性を確保。84ピッチを採用することで、新品時の静粛性も従来より向上させている。

 タイヤの構造面に関しては、軽量化を追求しながらサイドのカーカスを巻き上げることで剛性を確保。同サイズで約6%の軽量化を達成している。

 その結果、前モデルである「DNA Earth-1(ディーエヌエー アースワン)」と比べて、燃費性能は同等ながら、ウエット時の性能を大幅にアップ。とくにウエット時のブレーキングでは20%手前に止まれる性能を持つと言う。ドライ性能も進化しており、ドライ制動2%向上、ドライスラロームタイム7%向上を実現。車外通過騒音は0.5dB低減している。

トレッドパターントレッドパターンのシミュレーションピッチの大小差を小さくすることで、摩耗時の静粛性を向上した
タイヤ構造性能チャートブルーアース・エースの性能

 企画者・開発者によると、このブルーアース・エースは、「低燃費タイヤながら、ヨコハマらしい走りを楽しめるタイヤ」とのことで、低燃費タイヤのラベリング制度に適合させるために開発されたタイヤではなく、タイヤ本来の楽しさを追い求めた製品として設計されている。

最新のクロスオーバーSUVをターゲットにする「ジオランダーSUV」
 ジオランダーSUVは、ヨコハマのSUV用タイヤブランド「ジオランダー」の最新モデル。最新モデルだけあり、従来タイヤの「ジオランダーH/T-S」から転がり抵抗を16%低減し、低燃費タイヤと銘打たれている。

 ただし、現在のラベリング制度は乗用車用の夏タイヤを対象としており、冬用タイヤとしての性能を併せ持つジオランダーSUVは、ラベリング表示がされていない。これは、現在各社から発売中のスタッドレスタイヤも同様で、ラベリング表示の適用外になっている。

ジオランダーSUVジオランダーSUVは、低転がり抵抗タイヤと位置づけられ、ブルーアースロゴがタイヤサイドに入る

 ジオランダーSUVの製品企画を行った、PC製品企画部 製品企画2グループリーダーの政友毅氏によると、このタイヤは近年増加しつつある乗用車シャシーをベースとしたクロスオーバーSUVに向けたものであると言う。

 日本でも、レクサス「RX」、日産「ムラーノ」「ジューク」などクロスオーバーSUVが増加しているが、これは米国、欧州を含めた世界的な傾向で、中国でも爆発的な増加を見せているとのこと。ジオランダーブランドでは、ハイウェイでの使用を見据えた「ジオランダーH/T-S」、オールラウンドタイプの「ジオランダーA/T-S」、オフロード用フラッグシップ「ジオランダーM/T+」、スタッドレスタイヤ「ジオランダーI/T-S」の4製品をこれまで展開していた。ジオランダーSUVは、ユーザーの燃費性能や静粛性に対する要望に応えたタイヤとなり、ジオランダーH/T-Sよりも、コンフォート性に優れ、よりオンロード志向のタイヤとなっている。

 とはいえ、SUV用タイヤでもあり、M+S性能(マッド+スノー)も確保。トレッドパターンや新コンパウンドにより、ジオランダーH/T-Sよりスノー性能を向上させている。

SUV車両の販売動向。モノコック構造のクロスオーバーSUVが増えている国内はクロスオーバーSUVがメインとなっているSUV用タイヤの不満
クロスオーバーSUVの増加に対応し、ジオランダーSUVが企画されたジオランダーSUVが狙ったのは、環境性能、快適・安全性、ユーティリティ・わくわく感。ハンドリングやスノー性能も重視しているジオランダーSUVのポジショニングマップ。ほかのジオランダーと比べ、よりコンフォート志向であり、オンロード志向である
ターゲット車種ターゲット車種をカバーするサイズ展開

 ジオランダーSUVに投入された技術については、タイヤ第一設計部 設計4グループ リーダーの大聖康次郎氏が解説。ジオランダーSUVには、SUV用タイヤとして初めて、ブレンドポリマー、オレンジオイル、マイクロシリカのナノブレンドゴム技術を投入。耐摩耗性を向上させるとともに、ウエット性能向上、転がり抵抗低減を実現している。このナノブレンドゴム技術により、低温でも硬くなりにくく、スノー性能向上にも寄与していると言う。

 トレッドパターンは騒音低減を考慮したもので、4本のストレートグルーブを配することで、ウエット性能やハイドロプレーニング性能に配慮。中央の2本のグルーブは、ジャギーエッジグルーブとし、新品時はもちろん50%摩耗時もエッジ成分が残るパターンを描く。このエッジ成分によってスノー性能も確保している。このパターンは5ピッチバリエーションで構成され、各速度域でノイズを低減。偏摩耗を抑制することで、ノイズの発生も抑えていると言う。

ジオランダーSUVのコンパウンド最新のヨコハマテクノロジーである専用ナノブレンドゴムを採用
SUVタイヤでありながら、騒音やハンドリングにこだわっているため、これまでとは異なるパターン傾向を持つトレッドパターンのノイズシミュレーション。ジオランダー H/T-Sより明らかに静かな波形となっている

 タイヤ構造に関しては、トレッド面に低燃費レイヤードゴムを、サイド部に高強度サイドゴムや専用高弾性フィラーを採用。タイヤプロファイル(タイヤ形状)も専用のものを採用し、燃費性能や耐摩耗性能に寄与している。

 その結果、ジオランダーH/T-Sに比べ、騒音を大幅に低下させながら、ドライの運動性能、転がり抵抗性能を大幅に改善。スノー制動に関しても、向上を見ている。

 低燃費タイヤであるブルーアースの開発で得られた知見や技術をSUV用タイヤに本格的に投入したのが、このジオランダーSUVになる。

ジオランダーSUVのタイヤ構造性能チャート

 中編ではモータージャーナリストの日下部保雄氏によるブルーアース・エースの試乗記を、後編では岡本幸一郎氏によるジオランダーSUVの試乗記をお届けする。

(編集部:谷川 潔)
2012年 3月 26日