レビュー

【タイヤレビュー】オンロード性能を高めたヨコハマタイヤ「ジオランダー H/T G056」

中・大型4×4/SUV向けタイヤを一般道・ワインディングで試す

市街地や高速道路での快適な走りを目指して開発

 ヨコハマタイヤ(横浜ゴム)は「GEOLANDAR H/T G056(ジオランダー・エイチティ・ジーゼロゴーロク)」を7月より販売開始した。このタイヤは中・大型4×4/SUVに向けた製品ではあるが、悪路走破性を第一に考えたタイプではなく、オンロード性能を重視しているところがポイントの1つ。本格派4WDユーザーといっても実際のところ悪路を走る機会は少なく、市街地や高速道路を走ることが多いため、そこに合わせ込んだ製品として考えられたタイヤがコレだ。

 実は従来モデルの「ジオランダー H/T-S G051」でも同様のコンセプトが掲げられてはいたが、新タイヤとなるG056はレーンチェンジ時のふらつきやタイヤの偏摩耗、さらにはハンドリングや静粛性といった部分までを向上させようと改良を重ねてきたところがポイント。とはいえ、いざという時の悪路走破性も欲しいということで、M+S(マッド+スノー)の基準を満たす設計を施しているのはさすがである。

オンロードでの利用頻度の高い中・大型4×4/SUVユーザー向けに開発された「ジオランダー H/T G056」。耐摩耗性を向上させつつ快適性も確保し、転がり抵抗、通過騒音等の環境性能にも配慮したタイヤとなっている。メルセデス・ベンツ「Gクラス」やクライスラー「ジープ」、トヨタ自動車「ランドクルーザー」「ランドクルーザー プラド」「FJクルーザー」、三菱自動車工業「パジェロ」など重量級モデルがターゲット
トレッドパターンには中・大型4×4/SUVの特性に合わせてチューニングした専用パターンを開発。コンパウンドには特性の異なる2つのポリマーに、ウェット性能を高めるシリカと独自開発のオレンジオイルを配合した「マルチコンビネーションコンパウンド」を採用。これにより従来モデルの「ジオランダー H/T-S G051」と比べ、耐摩耗性を21%向上、パターンノイズを13%低減することに成功し、さらにレーンチェンジ時の操縦安定性においてハンドル舵角で4%、ヨーレートで13%改善した

 トレッドパターンを見れば、以前のように細かいブロックが独立して配置されるようなことはなく、ショルダーブロックに剛性を持たせたことは明らか。この手のタイヤに必ずあるサイプも、三層構造の立体サイプを採用して倒れ込みを抑制していることが伺える。さらに、ブロック長の異なる5種類のエレメントを配置することで、音の周波数ピークを分散させ、パターンノイズを低減していることも見どころの1つ。前述したコンセプトが見え隠れするトレッドパターンには期待が高まる。

 コンパウンドについては耐摩耗性を考え、摩耗に強いポリマーの採用に加えて、カーボンとシリカによる補強性を強化。また、ウエット性能の向上を考え十八番のオレンジオイルを配合することで、しなやかなコンパウンドとしているところもポイントだ。トレッドパターンの改良に加え、コンパウンドでのこうした努力の結果、耐摩耗性能は21%向上、ウエット制動は3%短縮できるようになったという。

最新のH/T G056(左)と従来モデルのH/T-S G051(右)
トレッド中心部にジグザグ溝を、ショルダー付近にストレート溝をそれぞれ2本ずつ配置した従来モデルのH/T-S G051。H/T G056と同様に、静粛性と耐磨耗性を重視するとともに、燃費性能にも配慮したオンロードSUVタイヤとなっている

快適性が増した感覚

H/T G056を装着したメルセデス・ベンツ「Gクラス」。タイヤサイズは265/60 R18

 今回はそんなH/T G056とH/T-S G051を比較テストする機会を得た。走ったステージは一般道とワインディングロード。本格4WDがその環境でどう走るかが興味深い。

 実際に走ってみると、旧製品は全体的に剛性が低く、いかにもタイヤがたわんでいることが手に取るように理解できるようなタイヤだった。それはゆっくり走っている一般道から感じるもので、ステアリングの手応えも薄く、フラフラと応答遅れも感じてしまう。ワインディングではそれが頼りなさに繋がり、ハイペースで走る気にはなれない感覚がある。

H/T-S G051を装着したトヨタ自動車「ランドクルーザー プラド」。タイヤサイズは265/65 R17

 G056はそれとは打って変わり、ステアリングの剛性感も感じられ、背の高い4WDに乗っていることをさほど気にせずオンロードを走れるところが面白い。ふらつきは明らかに減り、ワインディングだって怖さを感じることなくペースを上げられるほど。クルマによってはシャシーのほうが軟弱に感じられてしまうくらいである。横浜ゴムのデータによれば、ハンドル操舵角は4%減少。ヨーレートは13%も収まったというが、実際に乗れば数値以上に違いを感じるほどだった。また、パターンノイズやロードノイズについても改善が見られ、快適性が増している感覚もあった。

 今回はウエット性能や悪路走破性についてはテストできなかったが、それもきちんと視野に入れ、いざという時に対応できるという。万が一の保険がありながら、いつも使うオンロード性能が高まっているのであれば文句ナシ。ユーザーが求めるものをキチンと把握し、それに真面目に対応したタイヤであることは間違いないだろう。

Photo:高橋 学

橋本洋平

学生時代は機械工学を専攻する一方、サーキットにおいてフォーミュラカーでドライビングテクニックの修業に励む。その後は自動車雑誌の編集部に就職し、2003年にフリーランスとして独立。走りのクルマからエコカー、そしてチューニングカーやタイヤまでを幅広くインプレッションしている。レースは速さを争うものからエコラン大会まで好成績を収める。また、ドライビングレッスンのインストラクターなども行っている。現在の愛車は18年落ちの日産R32スカイラインGT-R Vスペックとトヨタ86 Racing。AJAJ・日本自動車ジャーナリスト協会会員。