試乗記

日産が本気で作った車中泊モデル「NV200バネットマイルーム」初体験 実際に1泊して居心地を試してみた

464万3100円(2WD/FF)
496万7600円(4WD)
クルマの車内を「居心地のいい部屋にする」というコンセプトはクルマを所有する理由になりえるか? 実際に使って体験してきた

 オートキャンプや車中泊などといった「クルマの車内で過ごす時間を楽しむレジャー」はブームとなり、大勢の人がこうした遊びを体験したことで「クルマを使う趣味」の1つとしては定着した感もある。

 特に最近は海外からの旅行者が増えたことから、著名な観光地は混雑し宿泊施設の予約も取りにくい状況になっており、そういった面からもオートキャンプや車中泊など「クルマ旅」の人気を支える要因になっているようだ。

クルマごとサイトに乗り入れできるキャンプ場だけでなく、車中泊利用を前提としたRVパークという施設もあるので、クルマ旅が楽しめる環境はかなり充実している

 さて、今回試したのは、日産自動車が発売する「NV200 VANETTE MYROOM(NV200 バネットマイルーム)」だ。

 このクルマは商用バンのNV200バネットをベースに「くつろぎの空間」をテーマにしたインテリアなど特別装備が盛り込まれた特装車。従来のクルマが燃費や走りのよさなどなど走行面から見たクルマの特徴を前面に出していたのに対して、NV200バネットマイルームは「駐まった状態」での車内での居心地のよさに重点を置いているのがポイント。

 それゆえ車検証上の乗車定員は5名であるが、シートアレンジを通常の走行時レイアウトからマイルーム仕様のインテリアに展開した際は、大人1人、もしくは2人での利用を想定したゆったり空間になるというユニークな設定。マイルームというネーミングがシックリくる作りなのである。

 なお、利用人数的には軽商用バンをベースにした軽キャンパーと同じだが「部屋」となるカーゴスペースの横幅は軽商用バンより大きいので、1人での利用はもちろんのこと、2人で使っても窮屈に感じることはないだろう。

 さて、そんなNV200バネットマイルームだが、自身でも車中泊をする筆者としては以前からに興味津々であった。筆者はホンダの軽商用車「N-VAN」に乗っていて、こちらも使い勝手はいいのだけど、たまに車中泊で使うスペースがもう少し広ければと感じることもある。そうしたことからNV200バネットマイルームを実際に使用してみたいと思っていたところ、試乗車を借りられたので今回、NV200バネットマイルームでの車中泊を体験してみることにした。

NV200バネットマイルーム。撮影車は4WDでボディカラーはサンドベージュ/ホワイト2トーン(専用色)。価格はFFが464万3100円、4WDが496万7600円
ボディサイズは4410(FFは4400)×1695×1870(FFは1860)mm(全長×全幅×全高)
MYROOMステッカー(リアサイドガラス、バックドアガラス)はディーラーオプション
ヘッドランプはハロゲンヘッドランプ(マニュアルレベライザー付き)。4WDにはバンパー下部にスポイラー的なパーツが付く
ルーフ部をホワイトに塗装。ピラー部の塗り分け位置は視覚的にシックリくることを重視してピラーごとに塗り分け位置の高さを変えている
艶のある黒い塗装を施したスチールホイール。タイヤサイズは175/80R14 99/98N LT(4WD)で、FFはフロント165/80R14 91/90N LTとなる
4WDは前後同サイズだが、FFはリアが165/80R14 97/95N LTになる。車高も4WDはFFより10mm高いのでフェンダーのクリアランスも広くなる
サイドミラーは大型で後方視界がよいもの。電動格納式だ
サイドミラーの操作部。運転席右下にある
MYROOMステッカーはオプション。リアサイドガラス両面とバックドアガラスに貼られる
スライドドアのウィンドウは一部開閉できる
左側にはオプションのスライドサイドウィンドウ用の網戸が付いている
これからの季節では換気のできる網戸はうれしい装備
マイルームシリーズにはキャラバンを使った「CARAVAN MYROOM」もある
車内が広いぶん、装備や使い勝手はいい。壁目に格納できるベッドを装備。平置ベッド仕様も選択できる

基本仕様について

 NV200バネットマイルームのベースであるNV200バネットは、2009年から発売されている商用バンのロングセラーモデル。搭載されているエンジンはHR16DE型のDOHC水冷4気筒で排気量は1.6リッター。最高出力は85kW(113PS)/5600rpm。最大トルクは150Nm/4000rpmというもの。燃料はレギュラーガソリンで燃料タンク容量は55L。

 駆動方式はFFと4WDがあり、トランスミッションはFFがエストロニックCVTで、4WDはフルレンジ電子制御4速AT。サスペンションはFF、4WDともフロントはストラット式で、リアはFFがリーフリジッド式、4WDはマルチリンク式となる。

 そしてボディサイズは全長4400mm、全幅1695mmと、同じく日産の商用バンのキャラバンと比べるとコンパクトな部類なので、アウトドアフィールドにありがちな道幅が狭い道路で運転しやすいのも特徴。

 また、オートキャンプ場やRVパークでは、サイトの縦の長さが6~8mほどに設定されることが多いが、バンボディの場合、バックドアを開けて装備を展開することあって、そのときにクルマの全長が長いとサイトの前後スペースの余裕がなくなりサイトの使い勝手がよくない感じになることもある。そんな視点からNV200バネットマイルームの全長4400mmのサイズはサイトを選ばないものとも言えるので、ソロや2人での利用であればこのサイズがちょうどいいだろう。

 乗ってみた印象としては約1.5tの車重にエンジンパワーは113PSなので体感的にはターボエンジンの軽自動車と同等。一般道での加速感に不満はないが、高速道路の合流等はアクセルを多く踏み込む必要がある。だけどパワー不足を感じるのはそんなシーンだけで、速度にのってしまえば快適。約80km/hで走行したときのエンジン回転数は2000rpmを少し下まわる程度と低く、エンジンの騒音も気にならない。追い越しをかけるときは3000rpm~4000rpmというトルクが太い回転域を使うので、スルスルと加速してくれる感じだ。ただ、巡航が楽な特性だけに「インテリジェントクルーズコントロールがあればなぁ」とNV200バネット自体の世代の古さを残念に感じてしまう面もあった。

 次に乗り心地。NV200バネットはFFと4WDでリアサスが違っていてFFがリーフ、4WDがマルチリンクサスペンション。そのため乗り心地は4WDのほうがよく、実際、4WDだった試乗車は高速道路の継ぎ目を通過する際、フロントは軽い突き上げがあってもリアはスムーズに越えてくれた。

 それに対してリーフスプリングは、構造上「ゴツゴツ感」が出やすいが、マイルーム仕様はメインリーフスプリングの下にリーフスプリングをもう1枚追加することでメインリーフがたわんだ際の動きを適正化し、バネ特性を滑らかな非線形特性になるような変更がされた「コンフォートサスペンション」を採用。さらに底付きした場合の衝撃をやわらげるゴムも追加していて、リーフ式としては乗り心地が向上しているという。

 そうしたことからNV200バネットマイルームは商用車ベースながらもFF、4WDともに乗り心地は乗用車としてに乗るにあたっても許容できるのものと言えるだろう。

都市部、高速道路、山あいの道と走ってみた。パワーやトルクはほどほどだがふつうに乗るには不満なはい。乗り心地はわるくないが、試乗車はリアがマルチリンクサスペンションだったのでリアの動きがよすぎてフロントのゴツゴツ感が目立つときもあった

運転席まわりについて

 NV200バネットマイルームは2列目以降のスペースを大きくカスタマイズしているが、前席はベースのNV200バネットと同じ。そして商用車ゆえに飾り気はないが、2009年から働くクルマとして活躍しているだけに、「操作性がいい」「ものを置きやすい」という面に不満はない。

 そんな運転席まわりで印象に残ったのはシート位置の高さ。キャンピングカーや車中泊仕様車に多いキャラバンやハイエースは運転席の下にエンジンがあることから運転席、助手席の位置が高く乗り降りがちょっと大変だったりする。極端に言えばよじ登ったり飛び降りたりという感じだ。

 対してNV200バネット(マイルームも)はエンジンが前席より前にあるのでシートの位置はミニバン並みだし、フロアには大型のステップも設けてあるので乗り降りが容易なのだ。

 NV200マイルームのようなクルマは対象とする年齢層が広いし、観光地に行くのであれば立ち寄り地ごとに乗り降りする機会もあるだろう。それだけに乗り降りしやすいと言う部分は重要なポイントと捉えたほうがいいだろう。

運転席。オール樹脂パーツで飾り気はないがNV200バネットシリーズの中でマイルームのみステアリングは加飾パーツ付きのDシェイプタイプとなる
助手席側。グローブボックスはふたがないタイプ。エアコンはマニュアル
運転席、助手席はトリコット地のヘッドレスト一体式。4WDのみオプションでシートヒーターが設定される
運転席と助手席の間の間隔は広く感じたので大人の男性が並んで座っても窮屈な感じはないと思う。サイドブレーキは手で引くタイプ。小物置きスペースも多く設定されている
前席はミニバン並みの高さで視界はいい。乗り降りに関してはステップがあるので容易。筆者の場合、アシストグリップは不要と思うくらいふつうに乗れた
地面からステップまでをざっくり測ると約40cm。このステップのおかげで乗り降りはしやすいが欲を言えばピラーやダッシュボードなどに手をかけられるアシストグリップがあればなおよかった
世代的にインテリジェントクルーズコントロールはないが、衝突回避・被害軽減用のインテリジェントエマージェンシーブレーキは装備している
日産オリジナルナビゲーションはディーラーオプションとして設定。バックモニターもある

マイルームの「部屋」をチェック

 NV200マイルームの特徴はなんといってもセカンドシート以降のスペースにある。多くのキャンピングカーでは、ベッド展開できる汎用タイプのセカンドシートを使用していることが多いが(表皮はそれぞれで設定)、NV200バネットマイルームに採用されているセカンドシート「2in1シート」は日産のオリジナルである。

 特徴はシートの表面と裏面で硬さが異なるクッションパットを使用しているところで、走行中のモードである「ドライブモード」では背もたれと座面側にしっかり感のある硬めのクッションパッドが来るようになっているため長い時間、同じ乗車姿勢で座っていても身体が痛くなりにくい。

 そしてシート表皮は日産ノートのシートに使われていたヘリンボーン柄。デザイナーが「マイルームのインテリアイメージに合う」ということから採用したという。

マイルームシリーズの特徴である「2in1シート」は日産のオリジナル。表面と裏面で硬さの異なるクッションパッドを採用。ドライブモードとリビングモード、そしてベッドモードのそれぞれで最適なクッション性になる作りだ
ドライブモード。シートは前後スライドとリクライングが可能
リビングモードにする際は座面を跳ね上げ、スペースに背面だった面を倒す

 対して座面と背面を裏返して使うリビングモード。こちらは柔らかなクッションパッドの面になるのでソファ的なフカフカした座り心地となる。また、座面の長さがあるので楽な姿勢で浅く腰掛け、足をだらーんと伸ばすような座りかたも可能。

 そして前後にスライドできるテーブルを手前に引き寄せれば、なにか作業したり食事やお茶を飲んだりするのにちょうどいい居場所になる。座りかたや気分によっては手前にテーブルがないほうがいいと感じる場面もあるが、そんなときはテーブルを奥へスライドさせることで自分の前にスペースができるところも居心地のよさに貢献しているポイントだ。

リビングモードにした状態。リビングモードではヘッドレストは付けられない
座面の引き上げ操作はストラップを引いて行なう。女性や子供でも操作できるよう軽い力で引けるようになっている
リビングモードにしてスライドテーブルを引き寄せた状態。バックドアを開けておくと景色を眺めながらくつろげる。足下はフロアに降ろしても楽な姿勢を取れるし、平置きベッド部に載せると真っ直ぐ伸ばせる

 次にベッドモード。セカンドシートの背もたれと座面がフラットになるようにセットし、シートをスライドさせて平置きベッドとつなげることでベッドモードに変更できる。ベッド長は1840mm、ヘッド幅が1200mmとソロなら十分、余裕はないが大人が2人で並んで寝ることも可能だ。

 ベッドの上から天井までの距離は955mmとなるが、この高さだと腰を曲げてもベッド上で立ち上がって着替えなど行なうのはやや厳しい。そこで着替えはベッド上に座って行なうようになると思うが、前後の幅が十分あるので座った状態や寝転んだ状態でも着替えのために手足を広げたり、身体をひねったりすることは問題なくできた。

 ちなみにソロでの利用であればセカンドシートの片側だけベッドモードにして、もう片側をリビングモードのままにしておけば、そこでフロアに立てるし、フロアからの室内高は1285mmなので、やや屈めば立って着替えることも十分可能だ。

2in1シートを倒して平置きベッドとつなげた状態。ベッド長は1840mm、幅は1200mm
封筒型シュラフを置いてみた。ソロでの利用であれば余裕。広くはないが大人2人でも大丈夫だ
リビングモードの状態
平置きベッドを外した状態。フロアを広々と使える
ベッドモードの状態。テーブルは外してある
片側のシートを起こした状態。今回はこのモードで使用した
内装は日産のデザイナーがデザインしたインテリアパーツが使用されている。木目調の素材はすべて難燃性素材で、テーブルなど身体をぶつけそうな角は滑らかな形状としている
車内の照明。木目調のルーフパネルに2つのLEDスポット照明が付く
LED照明は調光機能付き。リモコンで操作する。就寝時にシュラフに入った状態で照明を消せるのは便利だった
サイドトリムの左側には照明のスイッチがある。ここでは天井照明と間接照明をそれぞれ別に操作できる
右側には停車時車内換気システムの操作スイッチがある。ファンの速度は2段階調整
左後方にはAC100V外部電源入力用の端子を配置
キャップを開けた状態
外部電源用ケーブルも付属。長さは10mもあるので、駐める場所から電源まで距離があるサイトでも問題ないだろう
コンセントは左右の収納スペースの中にしまっておける
1500Wまで使えるが、車体側の照明や換気ファン用の電力があるので持ち込みの家電は1300Wくらいまでの対応となりそうだ
左右とも収納スペースのフタは開口部に対して上部にすき間ができるよう作ってある。これはフタを締めた状態でもコンセントにつないだコードを通すための配慮
ノブはプッシュ式。普段は写真のように出っ張りがない状態だが、ノブの中心部を押し込むとつまみの部分が飛び出てくる
つまみの部分を出した状態。使用しないときに収納できるので積み込んだ荷物がひっかることはない
ポータブルバッテリを電源として使うためのポータブルバッテリ用電源入力端子を車内左後方に備えてある。上側は12V電源取り出しソケット
633Whの「ポータブルバッテリーfrom LEAF」。高さが205mmでベッド展開時でもベッド下に収まる

RVパークで1泊してみた

 利用したのは千葉県君津市黄和田畑920にある「RVパーク七里川(しちりがわ)」で、このサイトは一部を除き山肌に沿って段になっているので、バックドア側を敷地の後方に向けて駐めると、室内でくつろぎながら景色が楽しめるというマイルームの特性を存分に生かせるサイトなのだ。

千葉県君津市黄和田畑920にある「RVパーク七里川」。七里川温泉の目の前にある
サイトは第1から第4と分かれていて車室スペースは31個もある。今回は第2サイトのC車室を使わせてもらった

 筆者はCar Watchの僚誌トラベルWatchで毎月RVパーク訪問記事を担当させてもらっているので、いちおう車中泊はやり慣れているほうだと思う。

 さて、車中泊といってもRVパークは車外で調理やたき火ができるところが多く、行くときはそうした施設を選んでいるので持ち物には屋外で使うテーブルやイス、たき火台などもある。また、外で火を使えるのでカセットガスコンロやキャンプ用のクッカーといった簡単な調理道具も持っていっているが、積み込みや現地での展開、撤収にあまり手間をかけたくないので荷物は絞っている傾向。

 それらの装備をNV200バネットマイルームに積んでみると、平置きベッドを外した状態の荷室に無理せずに収まった。

 実際は車中泊道具のほかにカメラバッグ、三脚、ストロボ用三脚、電気ケトルなど小物もあり、さらに時期的に暖かいか寒いかも予想しにくかったので、冬用のシュラフや厚手の衣類など余計な荷物もあったが、それでもセカンドシートに置ける範囲に収まった。

内装を作っているので荷室としての横幅は狭くなっているが積載量は十分
道具を出した状態。このほかは車内にあるシュラフや着替え、カメラバッグなど

 現地について荷物を降ろしたあとは寝床の準備だが、ここで地味に面倒なのが「窓の目隠し」だ。普段は吸盤やマグネットで留めるシェードを使うのだが、すべての窓に貼っていくのは手間である。それに対してNV200バネットマイルームはカーテンが装備されているので(ディーラーオプション)目隠し作業が非常に楽。

 しかもカーテン同士の合わせ目は、プリーツの「山」を重ねてホックで留めるようになっているのでカーテンの合わせ目にすき間ができない。シェードを使う目隠しの際、すき間ができることが多く、それがちょっとストレスと感じるが、このカーテンは準備が楽なだけでなくキレイに閉められるところがかなり好印象だった。

カーテンは遮光タイプ。サッと引くだけで目隠しができる便利さ。用意が楽で自分のN-VANもカーテン仕様にしたくなった
カーテンの合わせ目はプリーツの「山」の部分を重ねてホック止めなので、合わせ目にすき間ができない
車内の照明を最大の明るさで点けた状態でも光漏れはほぼない
これも車内照明が点いた状態。光漏れはない。外からも見えないのでプライバシーを重視したい人には特に向いている

 車中泊のときは室内にそれなりに荷物が広がるし、日が暮れたあとは外でゴソゴソしにくいので、室内レイアウトは日のあるうちに決めて、その後はあまりいじりたくない。

 NV200バネットマイルームは室内で過ごすときのモードとして「リビングモード」と「ベッドモード」の2つがあって、これらは室内にいる状態でもモード変更ができるのだけど、今回はソロということでセカンドシートの片側だけベッドモードにして、もう片方はリビングモードとした。

 これだと寝るまでリビングモードで持参したコミックを読んだりPCをいじったりしたあと、眠くなったらすぐに横になれるし、起きたときも身体をちょっとずらすだけでイスに座れるのがいい。

 また、リビングモードであれば車体のフロアに立てるので、立ち上がって着替えられる。車内で「立てるかどうか」は車中泊においてけっこう重要なポイントなのでこの使い方は多いにアリだと感じた。

片側だけベッドモードとしてみたがこれがかなり居心地いい
ベッドを出しつつフロアに立てるから便利。フロアから天井までは1285mmなので腰を曲げた状態になるがそれでも立てるのはいい
スライドテーブルも便利だった。通常はシートに座った状態で使いやすい位置にしつつ、移動したいときや身体の前を広々としたいときはテーブルを押すだけでスペースを作れる
スライドテーブルをいっぱいまで後へ動かし、バックドアを開けてベッドに座って足を車外に投げ出して座り景色を眺めながらコーヒーを飲む、なんてこともできる
スライドテーブルは2か所でロックができる
安定感が欲しい湯沸かしや調理時、そして走行中は動かないようロックしておける

 車中泊のときの食事は車内で食べてもいいし、車外のテーブルでもいい。土地のものを食べたい場合は、クルマで目当てのお店まで行って食事を楽しみ、その後、宿泊地まで戻ってくる方法もある。NV200バネットマイルームはリビングモードにしてもベッドモードにしても、運転席は運転ができる状態をキープできるので、宿泊地で準備を終えたあと、食事や入浴にクルマで出かけることも容易だ。

 今回は車外のテーブルで食事をしてあとは車内で過ごしてみたが、半分リビング、半分ベッドモードの居心地が最高だった。車内照明の明るさは本を読むのにも十分なもので、しかもランタンなど簡易的な光源を置いたときのような眩しさが一切ない。車中泊ではランタン等の照明を車内照明として使うことも多いと思うが、やはり天井から照らす照明は明るいだけでなく眩しかったり、照らしムラがあったりなどの「明かりのストレス」がないことも分かった。

すみずみまで明るくて眩しいところがない室内は、夜も居心地がよかった
飾りかなと思っていた間接照明だが、消すと部屋が明らかに暗くなるので点けっぱなしとなった
間接照明を消すと予想外に暗くなる

 さて、1泊した感想だ。RVパーク七里川は千葉の山の中にあって、千葉には「キョン」という大型の動物がいるので、車外に出るとそれらしき動物の鳴き声が山に響いていたが車内に入ると聞こえない。また、サイト内の小さい池にはカエルがいて、外にいるとゲコゲコと賑やかだがそれもほぼ聞こえないレベルの遮音性。このへんはN-VANとハッキリ違うところだった。

 そしてベッドの印象だが、2in1シートはベッド面のクッションが硬め、平置きベッドも同じような硬さなので寝心地はしっかり。寝転んだときに身体の沈み込みは少なく感じたが、車中泊を何度かしていくと「マットの硬さ」は迷うのはありがちなことだと思う。

 NV200バネットマイルームの「比較的硬め」のベッドモードの寝心地は筆者的に問題なく、ふつうに寝ることができ、朝起きたときに身体のどこかが痛いこともなかった。でも、人によってはもっとクッションが効いていたほうが好みということもあるので、寝てみてシックリこない場合はマットを追加で敷くなど自分なりのアレンジを加えてみるといいと思う。

 どんなに居心地がよくても、車中泊は特殊な環境であることは確か。緊張や不慣れさなどで睡眠の質は低下しやすいだけに「寝心地」を少しでもよくする工夫は大切である。

 ちなみに寝るのに問題なかったと書いたが、1点だけ気になったところがあった。それが「枕」だ。クッションパッドがしっかり目なぶん、寝転んだときのベッドへの身体の沈み込みが少ないので、いつもの車中泊用で使っていた枕だと高さが足りない感じになった。枕の高さが合うかは寝付きにけっこう影響があると思うので、そこは多少気になった部分だった。ということから筆者の場合、このベッドに寝るなら「枕」はある程度の高さがあったほうが寝やすくなるのだろう。

夜の様子。山あいなので人工音はほぼない。まわりに他の利用者もいなかったので夜はいい感じで過ごせた
写真なので多くの星が写っているが、まわりや山で暗いので肉眼でもかなりの数の星が見えた
寝る前は荷物など横によけたくなるが、そういうときもスライドテーブルは便利だった
ベッドモードにしたセカンドシートの前にちょうどいいスペースがあったので着替えなど入れたバッグを押し込んでみた。取り出しやすいしちょうどいい
以上がNV200バネットマイルームで1泊を試した内容。車両価格は約500万円と安くはないが、このクルマがあることで体験できることを考えると、有意義なクルマ選びなのではないだろうか
深田昌之