試乗記
スバルの新型「フォレスター」プロトタイプに最速試乗! ストロングハイブリッド化の走りはサーキットでも感じられた?
2025年4月3日 10:00
フルモデルチェンジでパワートレーンは2.5リッターストロングハイブリッドと1.8リッター直噴ターボの2種に
6代目フォレスターが、いよいよ日本でも発売を開始する。
これにあわせてスバルは袖ヶ浦フォレストレースウェイでプロトタイプ試乗会を開催し、筆者も発売寸前の日本仕様モデルたちに試乗することができた。
多くの読者がご存じのことと思うが、6代目フォレスターは2024年の春からすでに北米で販売を開始しているモデルだ。そして日本仕様が同時にデビューを飾らなかった理由こそが、スバル初となる「ストロングハイブリッド」の完成を待ったからだった。
ちなみにストロングハイブリッドのニーズは北米でも高く、これまで発売してきた2.5リッターの自然吸気・水平対向4気筒「FB25」エンジン搭載車をベーシックグレードとして、日本とほぼ同時期に2.5リッターストロングハイブリッドが上位モデルとして加わる。
そんなフォレスターの日本におけるラインアップは、2.5リッターストロングハイブリッドが「X-BREAK」「Premium」の2グレードで展開される。対して1.8リッターDITが「SPORT」としてベーシックグレードを担い、マイルドハイブリッドの2.0リッターe-BOXERはラインアップから姿を消した。
フォレスターに搭載される2.5リッターストロングハイブリッドの機構はクロストレックを受け継いでおり、エンジン出力160PS/209Nm+走行用モーター出力119.6PS/270Nmという数値も同じ。むしろ2.5リッター「FB25」ユニットを用いたのはフォレスターを見据えていたからで、そういう意味ではクロストレックが贅沢な仕様になっていると言える。そして燃費はPremiumで18.4km/L、X-BREAKで18.8km/L(どちらもプロトタイプ値)と、2.0e-BOXERの14.0km/Lを大きく上まわった。
1.8 DITも基本的には先代からのキャリーオーバーで、177PS/300Nmのスペックを保ったまま、1570kgから1640~1660kgへと増えた車重に対して、13.6km/Lの燃費を維持したのが自慢だ。
駆動方式は全て、アクティブトルクスプリット(ACT-4)式フルタイム4WDとなる。
スバルいわく3グレードの間にヒエラルキーは存在せず、よりアウトドア志向なモデルがX-BREAK、よりアーバン志向なモデルがSPORT、その中間がPremiumというキャラクター付けになっているという。
ただ実質的な価格はSPORTが最も買いやすいモデルであり、Premiumが最上級グレードとなるだろう。気になる価格はまだ試乗会当日には発表されていなかったが、ストロングハイブリッドでは先代のe-BOXERに対して+約88万円がスターティングプライスとなり、1.8 DITが+約55万円になる模様。そう聞くと「フォレスターも、ずいぶん高くなってしまったなぁ」と思う読者も多いはずだが、新型フォレスターには先代型に設定のなかったナビ、ETC車載器、アイサイトXが搭載されるため、X-BREAKを基準とした場合、実質的な値上がり幅は30万円程度になる。
エンジンバリエーションに次いでフルモデルチェンジの核となるのは、「フルインナーフレーム構造」へのアップデートだ。
スバルはこれで、ようやく全モデルが最新プラットフォームとなった。具体的にはリアまわりのプラットフォームとルーフ側骨格の結合が強化され、構造用接着剤の適用が8mから27mにまで拡大された。またスポットタイプナットをフロントのサイドメンバーに採用してサス取り付け部の剛性を向上するなどして、先代モデルに対してねじり剛性が6%向上している。さらに前後席シートをボディに直付けし、現行インプレッサから採用された高減衰マスチック(接着剤)をルーフブレースに塗布することで、動的質感を高めている。
フルモデルチェンジと言えばサイズアップが常套句だが、新型フォレスターはその寸法が先代モデルから大きく変わらない。実際の寸法はストロングハイブリッド/1.8 DITともに全長×全幅×全高が4655×1830×1730mm(ルーフレール付き)と、先代1.8 DITと比べて全長・全幅が15mm大きくなっているに過ぎない。ホイールベースは2670mmと変わらず、最低地上高も220mmで同じだ。
スバルはBRZ以外全てのモデルを同じプラットフォームでまかなっているから、そのサイズを大きく変えられないという理由もある。しかしプロジェクトリーダーである只木克郎さんはこのフルモデルチェンジに際して、むしろ「諸元は変えたくなかったくらいです」と筆者に語った。フォレスターは競合他車と比べても30~40mmくらい小さいが、「コンパクトのよさは間違いなくある」というのがその理由だ。
確かに新型フォレスターの後部座席に座っても、ひざまわりのクリアランスには相変わらず十分な余裕がある。ヘッドクリアランスも確保されており、グラスエリアも解放感が高い。シートバックはリクライニングも可能で、ロングドライブも楽にこなせそう。残念ながらラゲッジスペースは床下がバッテリで犠牲になるストロングハイブリッドが485L、1.8 DITが512Lと先代モデルを下まわってしまったが、開口部は1250mmを確保していて使い勝手のよさは維持している。
であれば運転しやすいサイズを保つというのは、ごくごく自然な流れだ。そしてクルマのサイズを大きくするときは、「室内空間が狭く感じる」というニーズが高まったときだと教えてくれた。
「実際(フォレスターの)外寸は他車と比べて小さいけれど、内寸は大きいんですね。大切なのはそのバランスだと思っていまして、きちんと室内空間が取れていれば、このクラスのクルマを選ぶ方は満足してくださると考えています」というわけだ。
そして寸法に頼らない存在感を出すために、今回新型フォレスターはそのデザインを刷新した。特に目を引くのは、フロントマスクの変更だ。いまやスバルのアイコンとなったCシェイプのヘッドライトや、ヘキサゴングリルを大胆にも捨て去った理由は、極めて理論的だった。
そもそもこれらのデザインは、車体を実際のサイズ以上にワイドに見せるための手法だった。しかしいつの間にかCシェイプであり、六角形のグリルであることがスバル車らしさの証となってしまった。だから新型フォレスターはヘッドライトを水平基調に改め、より外側の低い位置に搭載したのだという。
確かに先代モデルはCシェイプのヘッドライトとヘキサゴングリルを無理矢理に当てはめた影響で、顔つきが縦長に見えてしまっていた。
というわけでこの新型デザインが、これからのスバルのファミリーフェイスに直結するわけではないらしい。あくまでデザインは、その目的に沿うべきものという一例が、新型フォレスターのフロントフェイスだということになる。
注目すべきはストロングハイブリッドと思いきや!?
試乗は袖ヶ浦フォレストレースウェイのインフィールドで60km/hまでの常用域、外周路とストレートでMAX130km/hまでのハイスピードレンジにおけるキャラクターを確認した。
インフィールドでは、先代モデル(2.0 e-BOXER)も用意されていた。そして新旧比較の“あるある”だが、これがなかなかわるくなかった。確かにマイルドハイブリッドはモーターのアシスト感が弱いのだが、ユニット全体としてはアクセルの踏み始めから、eブーストのトルクの追従性がリニアで心地いい。
サーキットの路面は極めてフラットだから乗り心地は精査できないが、スラロームではそのソフトな足まわりを巧みにロール制御しながら、背の高いSUVボディをコントロールしていた。
これはクロストレックでも感じたことだが、ストロングハイブリッドが登場したことでマイルドハイブリッドの株は上がった。筆者も素直に「これも残せばよいのに」と思ったワケだが、月販約2000台の規模を考慮すると、ベーシックグレードとしてe-BOXERは残せなかったのだという。
しかしこうしたノスタルジーは、新型1.8 DITを搭載したSPORTがスマートに払拭してくれた。
キーポイントとなったのはフットワークで、SPORTの名前よろしく操舵追従性が一段とリニアである。本来であれば先代型1.8 DTIとの比較をしたかったが、とにかく新型ボディが足まわりからの入力をきちんと受け止め、その性能を引き出している。
ハンドルの切り出しに合わせてヨーが自然に立ち上がり、後輪まで滑らかに横Gが追従する。切り返しでの身のこなしも、素早くスムーズだ。
真打ちとなる2.5リッター ストロングハイブリッドは、上質さが際立っていた。たとえスタートでエンジンがかかっても、車体側の遮音が高くそれ自体が気にならない。かつ走り始めれば積極的にモーター走行を織り交ぜて、トータルで静かな走りが得られる。
約110~120kg重たい車重と、これに対応するサスペンション剛性のバランスがどっしり・しなやかで、確かにプレミアムな乗り味とオフローダーらしさの使い分けができる仕上がりになっていた。
高速ステージではそのキャラクターが、さらにクッキリと色分けされた。SPORTは1.8 DTIの加速が爽快で、ハンドリングの軽快さも、そのトーンにばっちり合っている。
フォレスターは全てのモデルがオールシーズンタイヤを装着しており、SPORTはPremiumに対して1サイズ小さな225/55R18サイズを装着していたが、荷重がかかったターンミドルでも旋回Gを高く、一定に保てていた。その身のこなしが軽くて、走らせてとても気持ちいい。
筆者は午前と午後の試乗ができたため、気温が低かったり、空荷の状況だったりすると、ややSPORTの初期操舵感にフィードバック不足を感じる場面もあった。そういう意味ではもう少しまったりとしたサスペンション剛性の「ベーシック」グレードを用意してもよいかと思ったが、乗り心地も含めてそれは公道試乗で判断することにしよう。
対するPremiumは、その加速感が実に奥深い。
コーナーの立ち上がりで分厚く滑らかなトラクションが瞬時に得られるのは、まさにストロングハイブリッドの効果だ。また全開加速でも1コーナーのエンドでは1.8 DITより5km/h近くトップスピードが高く、速さも感じる。その上で車体がしっかりしているから、飛ばしても安心感がある。まさに高速巡航には、もってこいの選択だ。
ターンミドルでは、1.8 DITに比べてより深いロールを示す。ややリアの慣性重量は大きいけれど挙動が安定しているのは、シンメトリカルAWDがもたらすボディバランスのよさゆえだろう。そして60:40を基本にトルクを前後配分する、ACT-4が穏やかに旋回性と安定性を両立させているはずだ(制御が感じ取れないくらいに自然)。
また全開加速で失った電力が、ブレーキングでかなり回収できたのも発見だった。車重が重たい分だけ回生力が高まるとのことで、回生ブレーキもクロストレックより効いている印象を持った。
1.8 DITと2.5リッター ストロングハイブリッドは、値段以上にそのキャラクターがきっちり別れていたから、どちらを買うかは個性で判断するとよいだろう。そしてこうしたすみ分けがきちんとできたのも、ベースとなるプラットフォームのおかげだと感じた。
とにもかくにもその第一印象は、とてもいい。早くこの2台を連れ出して、リアルワールドで乗り比べてみたい。