試乗記

スバル「フォレスター」「アウトバック」で八丈島を巡る1日旅 海釣り、ドライブ、大自然を満喫

スバルのSUVで八丈島を遊んできた

自然豊かな離島でフォレスターと釣りを楽しむ

 スバルのSUV試乗会が、八丈島で開催された。

「いつか行ってみたい!」「新しいことに挑戦してみたい!」と想う気持ちを後押ししたい。そう考えるスバルが提案する、アクティビティ主体の試乗会。テーマはずばり、「SUBARUのSUVで遊ぼう!」だ。

 ちなみにスバルはこれまでにも直近だと、佐渡でレヴォーグ レイバックの試乗会を開催している。また「SUBAROAD」の体験試乗なども積極的に行なって、スバル車を通して自然と触れ合う活動を実施してきた。

 そして今回新たなステージとして、八丈島を選んだというわけだ。ご存じ八丈島は東京都に属する自然豊かな有人島であり、関東在住の筆者にとっては「近くて遠い場所」でもある。まさに「行ってはみたいけど、なかなかね」と思っていた八丈島に赴くチャンスを得て、筆者も素直に心が躍った。

 羽田空港から片道、およそ1時間弱。八丈島までの所要時間は飛行機だと驚くほどに短い。本来はフェリーでクルマを運ぶところから体験するのが本筋だし、個人的にはそうした“ひと手間”は大好物なのだが、今回はCar Watch単独の旅ではなかったことから就航の安定と時短が優先されたことをまずお詫びしたい。参考までにフェリーだと、東京(竹芝客船ターミナル)から最短10時間20分で八丈島に着くようだ。

 八丈島ビューホテルでクリスタルホワイト・パールの「フォレスター X-BREAK」を受け取って、真っ先に向かったのは地元の釣具屋さん。そう、今回のアクティビティで筆者は「釣り」を選んだ。

 筆者と編集部北村女史と、高橋学カメラマン。スタッフ3人分の釣り竿と仕掛け、餌の入ったクーラーボックスを受け取って、カメラ機材と共に広いラゲッジに詰め込む。ライフジャケットを受け取って、釣り竿を車内のロッドホルダーに取り付けると、がぜんやる気がみなぎった。

八丈島での1台目の相棒は、レッドオレンジの差し色が気分を上げてくれる「フォレスター X-BREAK」のe-BOXERモデル(333万3000円)
ボディサイズは4640×1815×1730mm(全長×全幅×全高)、ホイールベースは2670mm。最低地上高は220mmで、最小回転半径は5.4m
最高出力107kW(145PS)/6000rpm、最大トルク188Nm(19.2kgfm)/4000rpmを発生する水平対向DOHC 2.0リッター直噴「FB20」エンジンに、最高出力10kW(13.6PS)、最大トルク65Nm(6.6kgfm)を発生する「MA1」モーターを組み合わせ、トランスミッションにはリニアトロニックCVTを採用。燃料タンク容量は48Lで、WLTCモード燃費は14.0km/L
X-BREAKは室内にもレッドオレンジの差し色が用いられる。シートは撥水性ポリウレタンで、“X-BREAK”専用のタグが付く
車内のロッドホルダー(社外品)に釣り竿を装着するだけで、これからの釣果が楽しみで、気持ちが爆上がり。ただ、リールを付けたままだと後席乗車時にわずかながら圧迫感がある
オプションのカーゴステップパネル(1万5620円)を装着しているので、釣り竿を立てかけてもボディが傷つかない

 内陸をショートカットしながら、島の南端にある藍ヶ江港へと向かう。先導する軽バンのドライバーは、なんと自動車評論家の国沢光宏さんだ。国沢さんは2023年にふとしたきっかけで島に訪れ、その魅力に一発ではまってしまった。その日に地元の不動産屋さんに駆け込んで物件を借り、以来何度も八丈島に来ているのだという。

 自動車評論家にしてラリーストである国沢さんと、軽バンの組み合わせは言ってみれば最強だ。島の細い道を軽快に、スイスイと駆け抜けていってしまう。

 とはいえフォレスターだって、負けてはいない。立ち上がったAピラーのおかげで、狭い路地でも見切りは抜群。荒れた路面でも足まわりがしなやかにショックを吸収し、ハンドルを切れば気持ちよく舵が反応してくれる。

 e-BOXERはあいかわらずハイブリッド感が薄いユニットだけれど、自然吸気の2.0リッター水平対向エンジンをモーターが影ながら支えて、低速でもじわりと粘る。そしてアクセルを踏み込んでいけば、心地よく吹け上がりながらパワーを出していく。CVTの連携も上々で、急な坂道での再発進や、下りのエンジンブレーキでも過不足ないレスポンスを見せた。スバルによれば間もなく新型フォレスターがストロングハイブリッドになって登場するとのことだが、だからか余計に現行型の熟成した走りが尊く感じられた。ちょっと優しすぎるけれど、実にいいクルマだ。

 港へ着くと、さっそくアクティビティ開始だ。

 仕掛けの網にコマセを詰めて、針にはオキアミ。海水の透明度はとっても高く、目の前でたくさん魚が泳いでいる姿が見える。けれど、狙うのはもう少し下にいる、アジやイシダイたちだという。

海水の透明度が高く、泳いでいるたくさんの魚影が見える

 釣りをするなんて、小学生以来だ。うまく釣れるかな。アタリの感触、分かるだろうか?

 にわかに湧き上がる男の子のプライドと、それをいさめる大人の自分。そういう心の葛藤が、実に面白い。

 コツコツと手に響く、小さなアタリ。しかし、ここで焦ってはいけない。浮きがグーッと沈み込んだら、同じくらいの強さと早さでグーッとその沈み込みを止める。

 ヒットしたあとの引きは、かなり強めで楽しかった。“ピン!”と張った釣り糸。そこから伝わる振動が、魚の生命力の強さを教えてくれる。

 最初に釣り上げたのは、「オヤビッチャ」。青みがかった背びれと黄色い差し色、縞模様のコントラストが美しい小ぶりな魚だ。どうやら食べてもおいしいらしいのだが、小さくてさばくのが面倒だから、地元の人たちはあまり食べないのだという。要するに八丈島ではもっと大きい魚が、たくさん簡単に釣れるというわけだ。

最初の釣果はオヤビッチャ

 その後は何度か途中で逃げられつつも、さらにオヤビッチャを2匹、カンパチの子供を1匹、ハリセンボン1匹(キャッチ&リリース)釣り上げた。でも地元の方にいただいたイシガキダイが、一番大きかった(笑)。

一緒に釣りをした人の分も合わせたこの日の釣果。ブダイとイシガキダイは地元の方からのいただきもの
ハリセンボンも釣れたものの、食べられなくもないが調理しづらいということで海へお帰りいただいた。ハリセンボンに完全にビビっている……

 撮影そっちのけで没頭した2時間弱はアッという間で、このうえなく贅沢な時間だった。餌を取られるたびに湧き上がる何とも言えない悔しさと、「もう1回!」と再び挑む気持ちがクセになる。

 本当はこのままずーっと釣りをしていたかったけれど、そういうワケにもいかない。後ろ髪を引かれながらも午後からはアウトバックに乗り換え、海岸沿いを走ってみることにした。

国沢さん、ありがとうございました!!
寄り道をしながらレストランへ向かう
海風を浴びて育った「うみかぜ椎茸」がいただける「うみかぜテラス」でランチ。肉厚のうみかぜ椎茸を青ヶ島の「ひんぎゃの塩」でいただく塩焼きは、シンプルながらも椎茸のしっかりとした味を楽しめる。ほかに、うみかぜ椎茸のボロネーゼやうみかぜ椎茸のパンナコッタなども

アウトバックで海沿いをのんびりドライブ

 アウトバックの走りはゆったりと力強く、子供のように集中してちょっと疲れた体を癒やしてくれた。こうした状況で乗り比べるとやっぱりアウトバックが、スバルのフラグシップモデルなのだと強く実感できる。

 ボディがひとまわり大きく、全高が少し低いグランドワゴン形状はSUVボディのフォレスターに比べて重心が低く、その走りはどっしりと座っている。かつ足まわりだけでなくシートのダンピングまでもが、快適性に対するトーン&マナーをそろえている。

八丈島で2台目の相棒は「アウトバック Active×Black」(454万3000円)。ボディサイズは4870×1875×1675mm(全長×全幅×全高)、ホイールベースは2745mm。最低地上高は213mmで、最小回転半径は5.5m
シックにまとめられているインテリア。11.6インチセンターインフォメーションディスプレイ&インフォテインメントシステムは全グレード標準装備
ラゲッジはかなり広く、リアシートバックまでカバーカーゴトレーマット(2万3540円)を装着すれば、使ったあとの釣り道具を載せても汚れを洗い流せる

 そして1.8リッターターボの過給レスポンスがこの大きなボディをパーシャルスロットルでもグイグイ走らせ、水平対向エンジンの緻密で澄んだ吹け上がりが、耳を楽しませてくれる。

最高出力130kW(177PS)/5200-5600rpm、最大トルク300Nm(30.6kgfm)/1600-3600rpmを発生する水平対向4気筒1.8リッター直噴ターボ「CB18」エンジンを搭載。トランスミッションはリニアトロニックCVT。燃料タンク容量は63Lで、WLTCモード燃費は15.8km/L

 フォレスターは確かに視界が良好で運転しやすく、人も荷物もたくさん積めるコストパフォーマンスの高いSUVだ。しかしコストに対するパフォーマンスが高いクルマと、きっちりコストを掛けたクルマとは根本的に違うのだなと改めて感じた。両車は非常によく似た優しさを持っているのだが、高級感はアウトバックが1.5枚上手だ。

 そんなアウトバックで走る海岸線のドライブは、曇り空のせいもあって異国の旅を楽しむかのようだった。溶岩流が冷えてできた黒い岩肌の大地や、そこからのぞく緑のコントラストは目に鮮烈。大海原の向こうに見える八丈小島のダイナミックな景観は、イギリスに留学経験のある北村女史いわく「ちょっとスコットランドみたい」だという。ここでマン島のようなレースをしたら、どうなるだろう?

八丈島は溶岩が冷え固まってできたであろう岩場の海岸線が多く存在する。岩に打ち付ける白波が大自然をさらに感じさせる

 面白いのはメインストリートである国道215号線をはじめ、主要道路の路面がとてもきれいなことだった。さすがは東京都の管轄、というところなのだろうか。

 そしてひとつ脇道を入れば、素敵な風景が現れる。「大里の玉石垣」では文字通り横長の玉石が美しく積み上げられ、その上に植えられたソテツが、南国ムードを静かに盛り上げていた。そしてこの風景に、カシミアゴールド・オパールのアウトバックがよく映えた。

六方積みという手法で規則正しく積み上げられた玉石垣が続く独特の景観。過去に八丈島に流された罪人たちがおにぎり1個と交換で海岸から玉石を運んだという話もある

 まだ行ったことのない土地へ行く相棒として、アウトバックは実にいい。アドベンチャーなら確かに、ゴリゴリのクロスカントリー系4WDの方が気分は盛り上がる。けれど、その実日本でそうした走破性が求められる場所はほぼない。

 だとしたらこのゆったりとしながらも質実剛健さを合わせ持つアウトバックの走りと使い勝手のよさは、実質ベストチョイスだ。

 対してフォレスターは、もっと元気があってもいいと思う。滑らかさは、もう十分にある。あとは運転して元気になれるような、それこそ旅に出たくなるようなエネルギッシュさが出せるといい。

 それはグレード的に「SPORT」の役目だとも言えるが、これに乗った経験を踏まえてももっと、ダンパーや駆動系の動き出しにメリハリを与えていいと思う。アシを硬くしろというのではない。可変ダンパーやモード変更、電動パワステの制御であえての“噛みごたえ”をもう少しだけ与えて、モーターのリニアリティを存分に使いこなして、乗り手をワクワクさせてほしい。それが次期型フォレスターに望むことである。

山田弘樹

1971年6月30日 東京都出身
A.J.A.J.(日本自動車ジャーナリスト協会)会員。

自動車雑誌「Tipo」の副編集長を経てフリーランスに。
編集部在籍時代に参戦した「VW GTi CUP」からレース活動も始め、各種ワンメイクレースを経てスーパーFJ、スーパー耐久にも参戦。この経験を活かし、モータージャーナリストとして執筆活動中。またジャーナリスト活動と並行してレースレポートや、イベント活動も行なう。

Photo:高橋 学