スバル、2012年3月期通期決算発表
2012年3月期は減収減益、2013年3月期は630億円の経常利益を見込む

富士重工業 吉永泰之代表取締役社長

2012年5月8日発表



決算発表会場には、一部改良を受けたばかりのレガシィが展示されていた

 スバル(富士重工業)は5月8日、2012年3月期通期決算を発表。決算に関する記者会見を開催した。同社代表取締役社長 吉永泰之氏は、決算概要とあわせ2011年度から2015年度までの5年間を対象に推進している中期経営計画“Motion-V(モーションファイブ)”の進捗状況と、今後の取り組みについて説明を行った。

 吉永社長は、最初にMotion-Vの5つの柱について紹介。同社のブランドステートメントである“Confidence in Motion”について触れた後、「お客様の信頼をDNAとして、革新し続けていく」とした。

 2012年3月期については、「インプレッサ」「XV」「BRZ」と、3台のニューモデルを投入。すべての車種で、高い評価を得ていると言う。また、先進安全運転支援技術「EyeSight」については、世界展開を開始しており、1月にはオーストラリアで搭載車を投入。夏には北米に投入すると言う。

 トヨタ自動車との協業に関しても順調に立ち上がっており、今後もこの関係は維持していくとした。そのほか、塵芥収集事業および風力発電事業を他社へ売却したことに触れた。


中期経営計画“Motion-V”の進捗状況5つの柱2012年3月期に投入した3車種
先進安全運転支援技術「EyeSight」も海外展開を開始販売台数は期初の計画よりは増加しているものの、昨年対比では減少
事業基盤を強化するために、コア事業に集中していく2012年3月期決算概要

 中期経営計画の今後に関しては、北米を中心として計画以上に販売台数が伸びていること、中国での現地生産の実現が遅れていること、為替状況が厳しいことから、中国市場においては専用の車種となるレガシィ セダンを投入。米国においては、現地生産工場であるSIA(スバル オブ インディアナ オートモーティブ インク)の能力増強に着手すると言う。

 群馬製作所本工場の生産能力増強にも着手し、群馬工場は当初計画15万台/年を16.5万台/年に引き上げ、SIAは17万台/年を20万台/年に引き上げるとした。中国生産計画の頓挫から、2015年度の生産計画は、国内50万台、海外32万台の計82万台から、国内58万台、海外21万台の計79万台へと海外生産予定を引き下げた。

今後の取り組み販売が好調なことから生産体制を強化するものの、中国現地生産に関しては進展がない中国市場では専用車種を投入。現地生産については今後の検討課題
米国市場では、販売拡大傾向が続く2012年度の連結販売台数2015年度の販売計画を見直し。中国現地生産を計画上なくしたことから、90万台から85万台へと減少している
国内からの輸出を増やす必要があり、生産体制の増強を図っていく2013年3月期決算概要。今期は増収増益を見込む収益目標。生産台数は下がったものの、登録車販売の増加により、成長を見込んでいる
6月の株主総会で経営体制も変更する。前社長である森郁夫氏が取締役から相談役へと退く2.0リッター直噴ターボを搭載したレガシィも紹介された。この直噴技術も、今後のスバルのコア技術となっていく

専務執行役員兼CFO 高橋充氏。6月22日付けで取締役に就任する

 決算の詳細な数字については、専務執行役員兼CFOである高橋充氏が発表。2012年3月期の売上高は1兆5171億円で、前期比635億円減。営業利益は440億円で、402億円減。経常利益は373億円で、449億円減。純利益は385億円で119億円減となった。

 販売台数については、国内17万2300台で1万4200台増、海外46万7500台で3万1300台減で、合計では63万9900台で1万7100台の減となっている。

 主な原因としては東日本大震災の影響なども挙げられていたが、為替レート差によるものが420億円あり、これが402億円の減益につながっている。


2012年3月期通期実績2012年3月期通期販売台数通期の利益増減要因
営業外収支について特別利益・特別損失。固定資産売却益の内280億円は、新宿スバルビルのものになる
設備投資など事業別売上高

 2013年3月期については、売上高1兆8600億円と3429億円の増を見込んでおり、営業利益670億円(230億円増)、経常利益630億円(257億円増)、純利益480億円(95億円増)の見通しとしている。主な増収増益要因は、販売台数の増加にあり、国内では2万6900台の減少を予測しているが、海外では10万7900台の増加としている。また、国内においては、総販売台数こそ減るものの、軽自動車から登録車へのシフトが進むため、増収要因になるとした。

 2013年3月期については、本日発表されたレガシィのほか、主力車種1台のフルモデルチェンジを予定しており、それも販売台数の増加につながるとものであるとした。

2013年3月期の見通し。増収増益を見込む販売台数は、国内は減少、海外は増加
増減益要因。主な増益はクルマの販売によるもの設備投資など

 なお、この期の変動要因としてエコカー補助金の終了が挙げられるが、それに関しては「スバルは、エコカー補助金の対象車が他社よりも少なく、大きく影響を受けないのではと見ている。また、現状すぐに注文をいただいてもインプレッサは9月納車、BRZは来年2月納車と、(エコカー補助金の原資がなくなると見られている)夏を超えている」と語り、計画の達成に大きな影響はないとの見方を示した。

(編集部:谷川 潔)
2012年 5月 8日