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スバル、2015年3月期 第2四半期の決算は好調な北米販売が牽引して純利益1130億円
試験研究費を100億円増額して環境性能などの開発スピードをアップ
(2014/10/31 22:34)
スバル(富士重工業)は10月31日、2015年3月期の第2四半期決算を発表した。売上高は、前年同期に比べて16.4%(465億円)増の5934億円、営業利益は同13.0%(91億円)増の787億円、経常利益は同24.9%(1846億円)増の1兆3102億円、当期純利益は同13.2%(132億円)増の1130億円となった。
併せて公表された第2四半期の連結完成車販売台数は、国内が前年同期に比べて18.1%(1万6000台)減の7万2000台、海外が同17.9%(5万5000台)増の36万0000台。合計の世界販売台数は前年同期に比べて9.9%(3万9000台)増の43万2000台となり、海外販売台数、世界販売台数、連結売上高、各利益段階のそれぞれの項目で第2四半期としては過去最高の数値を記録したと公表している。
市場別の販売台数などについては、富士重工業 代表取締役社長CEOの吉永泰之氏から解説され、日本国内は4月の消費税の増税後の影響が想定を超えて厳しく、販売の回復まで長引いていると表現。登録車は前年同期に比べて8.6%減の5万2000台、軽自動車は同41.1%減の1万5000台の販売となっている。
これについて吉永氏は、2015年通期の販売目標を期初計画の19万5000台から2万8000台マイナスの16万7000台に下方修正したことを明かしているが、一方で2014年通期の販売実績を取りあげ、この内訳と新しい販売目標を比較して、「ご案内のとおり、現在軽自動車はダイハツさんからのOEMに切り替えており、ここ数年は登録車を伸ばしていきたいと注力している。2012年の8万台から2014年に12万6000台まで増やし、今期は14万4000台まで上げたいと考えていたが、これを昨年度実績を確保するところで努力しているところ。台数の減る主な部分は軽自動車で、利益に大きく影響するところではなく、好調は維持できるとご理解いただきたい」と解説。また、6月からは新型「レヴォーグ」、8月からは新型「WRX S4」「WRX STI」を市場投入して順調に販売が推移。10月にも「レガシィ アウトバック」「レガシィ B4」を発売しており、「なんとか国内の市場を盛り上げていきたい」と意気込みを語っている。
海外市場で同社の販売を牽引している北米市場は持続的に販売台数が増加しており、前年同期に比べて19.5%増の36万台となった。北米市場ではリーマンショック以降、7年連続で前年超えとなっており、日本の発売に先がけて市場投入した「レガシィ(B4)」「アウトバック」が非常に好調に推移しており、現地のディーラーからは在庫が品薄状態で、潤沢に台数が用意されればさらなる販売増につながるとの意見も出ているとのこと。また、2015年通期では期初計画を上方修正し、北米市場の販売台数で初めて50万台の大台を超える51万3000台を通期連結販売台数の予定となった。吉永氏は「5年ほど前までは、年間で20万台が1つの壁になっている状態だったが、ここに来て年間10万台近いボリュームアップの好調な勢いを持続できている。ディーラーさんの努力とお買い上げいただいているお客さまに心から感謝しています」とコメント。また、人気を集めている理由についてはスバル車が持つ安全性能の高さにあると紹介し、IIHS(米国道路安全保険協会)から「トップセイフティピック+」に3車種、「トップセイフティピック」に4車種が選ばれていることが販売の核になっていると語っている。
このほかに吉永氏は、業績の内訳から135億円の利益を為替以外の要因で増益したことを取りあげ、会社としての実力をさらに高めることに成功していると語り、手応えを感じていると表現した。
決算内容の詳細については、CFO(最高財務責任者)の肩書きを持つ富士重工業 取締役専務執行役員CFOの高橋充氏から行われた。このなかで高橋氏は、営業利益の増減要因の1つとして試験研究費の増額について解説。試験研究費を100億円増額して840億円にすることで研究開発をスピードアップし、商品競争力を強化することが目的とのことで、開発のメインターゲットは環境性能の分野。また、社外リソースの活用を視野に入れたことも増額の理由と説明されている。
このほか、発表された事業セグメント別の業績では、航空宇宙の分野で売上高が増加している半面で営業利益がマイナスになっているが、この点について発表会後に富士重工業 代表取締役副社長の近藤潤氏に確認したところ、これは同社が中央翼の開発・製造を担当しているボーイング787の販売が好調に推移していることが要因になっていると説明された。中央翼の開発では莫大な開発費が投入され、これがボーイング787 1機あたりに分割されて計上されていることから、機数が増加すると赤字が増える計算になるとのこと。この開発費が回収されたあとは、長期的に大きな利益をもたらすことになるそうだ。
最後に行われた質疑応答では、発表内で積極的に触れられなかった中国での販売について質問され、10月前半に中国に足を運んできたばかりという吉永氏から回答。中国での販売で日本メーカーは全般的に苦戦を強いられているという印象を受けたと語り、自分たちもこれに含まれると説明。ただし、同社は中国国内で自動車生産を行っておらず、工場の操業維持のプレッシャーはない。販売をがんばりつつ、現状に見合った輸出を心がけて過剰な在庫を持たないようにしたいと語った。また、北米での需要増に対する生産強化、さらに輸出台数と為替の関係などについての質問では、同じく吉永氏から、生産能力の増強は中期経営ビジョン「際立とう 2020」で2016年と2020年に北米の生産台数を増やす計画を発表しているが、これは為替との兼ね合いではなく、今後の北米での需要増加に対応する施策であると語られた。その一方で販売が好調な北米ディーラーからのリクエストに対しては、現状でディーラー在庫が少ないことは認識しているが、闇雲に供給を増やすことで供給過多になるとインセンティブ合戦になる恐れもあり、不毛な競争に発展するよりは健全な状態であると語り、「1台足りないぐらいがちょうどいいという具合で、よい意味で慎重に見ています」とコメントしている。
余談になるが、決算発表会が行われたエビススバルビルにあるショールーム「SUBARU STAR SQUARE」では、表通り沿いのオープンスペースで展示用にカラーリングされた特別な「XV」「フォレスター」が並べられていた。特にXVは現在のスバル車のラインアップにないイエローのボディーカラーとなっており、ボディーカラーは名称も設定されていない特別なものとなっている。