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スバル、2019年3月期 通期決算。売上高2.2%減の3兆1605億円、純利益32.9%減の1478億円で減収減益
落としている国内工場の生産スピードを下期以降に戻したいと中村社長
2019年5月10日 22:02
- 2019年5月10日 開催
スバルは5月10日、2019年3月期(2018年4月1日~2019年3月31日)の通期決算を発表した。連結販売台数は前年同期比で6.3%(6万7000台)減の99万9900台、売上高は同2.2%(722億円)減の3兆1605億円、営業利益は同48.5%(1839億円)減の1955億円、当期純利益は同32.9%(725億円)減の1478億円となった。
また、合わせて2020年3月期(2019年4月1日~2020年3月31日)の通期業績見通しについても発表され、販売台数が前期比5.6%(5万6000台)増の105万5000台、売上高は同4.5%(1415億円)増の3兆3020億円、営業利益は同27.9%(545億円)増の2500億円、純利益は35.3%(522億円)増の2000億円とした。
なお、スバルでは2020年3月期から会計基準をIFRS(国際財務報告基準)に切り替えているが、前期となる2019年3月期が日本基準の数字であることから、本稿では参考として紹介されている日本基準の数字を2020年3月期分として掲載している。IFRSにおける2020年3月期の通期業績見通しなどの詳細は、スバルのWebサイトで公開されている各種決算資料を参照していただきたい。
同日に行なわれた決算説明会では、SUBARU 取締役専務執行役員 CFO 岡田稔明氏から、2019年3月期 通期決算の概要などが解説された。
岡田専務は最初に市場別の販売台数について紹介。海外市場では主力となる北米で新型車「アセント」がラインアップに加わったこと、「クロストレック(日本名:XV)」が好調を維持していることなどの要因で北米の販売が堅調に推移したことをアピール。一方で該当期間にフルモデルチェンジを目前に控えていた「フォレスター」で出荷台数が落ち込み、海外市場の合計は3万8900台減の86万4600台になっているという。
国内市場では7月にフルモデルチェンジしたフォレスターが好評となり、「インプレッサ」「XV」「レヴォーグ」の販売減少分を補って、結果的に2万8100台減の13万5300台を日本国内で販売。このほか、下期に複数の理由から発生した品質問題の影響などもあり、グローバルでは6万7000台減となる99万台9900台を販売している。
この販売台数減少に加え、リコールを主因とした品質関連費用の増加の影響から、営業利益は前年同期比1839億円減の1955億円となっている。なお、米国市場での販売奨励金(インセンティブ)は1台につき2100ドル(前年同期は2000ドル)で計46億円の減益要因になっているとのこと。
2020年3月期の通期業績見通しでは、すでにスタートしている今期からIFRSを会計基準に用いていることを紹介したほか、車両販売では全市場での増加を計画していると岡田専務は説明。米国では新型アセントやフォレスターの好調を背景に3万3500台の販売増を目指しているという。連結業績では2019年3月期の減収減益から反転し、全指標でのプラスを織り込んでいる。営業利益では2019年3月期に発生したリコール対策などのクレーム費が解消され、販売増と合わせて545億円の増益になる計画としている。
現在落としている操業条件の一部を、下期以降のいずれかのタイミングで元に戻したいと中村社長
また、今回の決算説明会では、SUBARU 代表取締役社長 CEO 中村知美氏による2019年3月期の振り返り、中期経営ビジョン「STEP」の取り組みとして掲げた組織風土改革の現状、2020年3月期に向けた方針などについてのプレゼンテーションも行なわれた。
中村社長はこの中で、組織風土改革の一環として自身や役員などが生産現場などに足を運ぶよう努めており、現場に寄り添う姿勢をアピールしているとコメント。3月にはこれまでの活動を振り返り、課題を共有するため経営層の全員で合宿を行なったことを紹介。春の労使協議でも組織風土改革について議論を行なって、労使双方で取り組みを進めていくことを確認したという。
対策の具体例として、以前にあった「1台でも多くの車両を作ろう」という意識付けを改めるため、生産現場で問題を発見した時はすぐにラインを停止して上長に相談できるよう、呼び出しスイッチを新設。また、勤務時間ないにコミュニケーションの時間を設定し、操業条件を見直しているという。
完成検査の問題では、完成検査員の再教育を実施したほか、完成検査員の増強や関連設備の改修を行ない、それまで製造本部に属していた完成検査部門を、2018年12月から品証本部に移動。検査業務の独立性を担保しているという。
このほか2020年3月期の販売に関連し、中村社長は国内工場のラインにおける生産スピードを落としていることについて、「製造、検査部門での組織風土改革が定着し、さまざまな改革がしっかりとなされるまでは現状の操業条件を維持したい」とコメント。一方で検査設備の増強工事が完了し、十分な習熟期間を取ってトライアルも行なったことを前提として、経営側として操業条件を戻しても確実で正確な検査ができるという判断を、どこかのタイミングで行なう必要があると説明。下期以降のいずれかのタイミングで、現在落としている操業条件の一部を元に戻したいとの意向を示した。
質疑応答では中村社長が研究開発費で大きなウェイトを占めている技術として上げた「次世代アイサイト」について、具体的にどのような技術にしていくイメージなのか質問され、これに対して岡田専務は「商品としての投入時期については控えさせていただきますが、一般的に使われている『自動運転』といった言われ方とは違い、われわれは『クルマを運転していきたい』というユーザーの皆さまをターゲットにしていますので、『運転支援』ということに絞ってやっていきたいと思っています。そのために、現在のアイサイトにセンサー類などを追加して、現在ある機能をさらに充実させていくことを考えています」と回答した。
また、同日に米国が行なった対中関税25%引き上げについて、中村社長は「ここで初めて知った」と語り、発表した決算にこの要素は織り込んでいないとしつつ、「少なからずアメリカの消費マインドに影響があるんじゃないかと個人的には思っています。そしてこれはよく見ていかなければならない部分ですが、われわれがアメリカで生産しているクルマで使う、アメリカで調達している部品のティア2、ティア3といったところに中国製品の影響がどのようにあるか、今後精査していきたいと思います」とコメントしている。