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スバル、2025年に向けた新中期経営ビジョン「STEP」策定。品質向上に今後5年間で1500億円投資など

中村知美社長「質的成長で量的成長を超えたい」

2018年7月10日 発表

株式会社SUBARU 代表取締役社長 中村知美氏

 スバルは7月10日、2018年~2025年における新中期経営ビジョン「STEP」を策定して公表した。新中期経営ビジョンでは、2025年にグローバルで130万台の販売を計画するとともに、生産からサービスまで会社の「全品質」向上に向けた投資枠1500億円(5年間)を設定するなど、品質向上への取り組みを1番に設定した。

 同日、代表取締役社長 中村知美氏が会見して、新たな経営ビジョンを策定する背景について「1つは自動車業界にとって大変革期であること、1つは近年の当社の急成長に伴う歪や課題、このへんが明確になってきた」と述べるとともに、「一刻も早く真の実力を養成して信頼を取り戻す。お客さまに“安心と愉しさ”を提供するというブランドの方向軸は動かさない。単なるメーカーを超えてお客さまに共感され信頼していただける存在を目指す」と新中期経営ビジョンに込めた思いを述べた。

新中期経営ビジョンへの想い
際立とう2020の取組状況
質的成長を目指す2025ビジョン

 新中期経営ビジョンでは、生産からサービスまで会社の質の向上を取り組みの1番に設定したことに、中村氏は「時代の変革へ備えて、早期に質的成長のキャッチアップをして量的成長を越えたい。それがブランドが磨かれている状態と考えており、量的成長は着実に成長していきたい」と狙いを話した。

STEPは「Speed(スピード)」「Trust(信頼)」「Engagement(共感)」「Peace of mind & enjoyment(安心と愉しさ)」

STEPの名称は「Speed(スピード)」「Trust(信頼)」「Engagement(共感)」「Peace of mind & enjoyment(安心と愉しさ)」の頭文字

 新中期経営ビジョン名称「STEP」の意味は、同ビジョンで大切にしている4つの要素、「Speed(スピード)」「Trust(信頼)」「Engagement(共感)」「Peace of mind & enjoyment(安心と愉しさ)」の頭文字とし、来るべき「JUMP」に備えて着実に地力をつける期間という意味を込めたとし、この中で“2025年ビジョン”として、次の3項目を掲げた。

新中期経営ビジョンの考え方

1.「個性を磨き上げ、お客様にとってDifferentな存在になる」
2.「お客様一人一人が主役の、心に響く事業活動を展開する」
3.「多様化する社会ニーズに貢献し、企業としての社会的責任を果たす」

 この中のDifferentという表現について、中村氏は「自らが変わった存在になるという意味でなく、スバルをお乗りのお客さまや販売店の皆さまから“スバルってほかのメーカーと違っていいいよね”と言っていただく、単にクルマを売ったり買ったりする存在でなく価値観が合うよねと共感していただく、そういう存在になりたいという思いを込めている。私もアメリカでDifferentなブランドと聞いており、我々としても誇らしいことだと思い、この言葉を使わさせてもらっています」と説明した。

新中期経営ビジョン名称「STEP」3つの取組み

 新中期経営ビジョンにおける取り組むとしては、1番目に「会社の質の向上」、2番に「強固なブランド構築」、3番目に「集中戦略を軸とした持続的成長」を設定。それぞれに「モノづくり」「販売とサービス」「新たなモビリティ領域」の取り組みを設定した。また、継続的な取り組みとして「組織風土改革」0番として設定している。

新中期経営ビジョン「STEP」の主な取り組み項目

 新中期経営ビジョン「STEP」の具体的な取り組み項目としては、「組織風土改革“Change the Culture”」「品質向上への取り組み」「スバルづくりの刷新」「安心・安全への取り組み」「ブランド強化の取り組み」「商品計画とデザインの方向性」「環境への取り組み」「トヨタ自動車株式会社とのアライアンス」「イノベーションの創出に向けた取り組み」「市場戦略」「航空宇宙事業戦略」といった項目で説明がされた。

組織風土改革“Change the Culture”
組織風土改革“Change the Culture”
品質向上への取り組み
品質を1番の取り組みに掲げたスバルづくりの刷新

 品質向上への取り組みでは、「お客様が安心して長く使い続けることができる品質No.1を目指す」とし、具体的には、商品企画から生産に至る品質に関わる全てのプロセスの見直し、システム化など生産工場のレベルアップ、品質マネジメント体制の強化、お客様へのサービス基盤の整備などに取り組む。また、これら「全品質」の向上のための投資枠として、1500億円(5年間)を設定した。

安心・安全への取り組み
安心・安全への取り組み

 安心・安全への取り組みとしては、スバル車に乗車中の死亡事故やスバル車との衝突による歩行者や自転車等の死亡事故をゼロとする、2030年に死亡交通事故ゼロを目指すとしている。同社では、自動化ありきではなく、“人が得意なタスクはそれを尊重し、人が苦手なタスクをクルマが補うことで安全に移動する”という考えのもと、レベル2の運転支援技術を磨き上げるともに、さらに衝突安全性能の向上を図る。また、「知能化技術」「つながる技術」によって、安心・安全をさらにレベルアップさせるという。

ブランド強化の取り組み
ブランド強化の取り組み
環境への取り組み
商品計画とデザインの方向性

 商品計画では、2025年に向けて、既存の主力車種のフルモデルチェンジを毎年実施。SUVモデルのバリエーション拡充とSTIモデルを含めたスポーツモデルの充実を図るとしている。また、デザインについてはスバルのデザインアイデンティティである「Dynamic×Solid」をより大胆なデザイン表現に進化させるという。

市場戦略

 市場戦略では、米国での成長を維持しつつ、日本・アジア・大洋州・ロシア・中南米・欧州・中国など、それぞれの市場ごとに適した姿の持続的な成長を目指し、2025年にグローバルで130万台の販売を計画する。

 そのほか、トヨタ自動車とのアライアンスでは、スバルの独自性は活かしつつ、EV基盤技術の共同開発やコネクテッド等の新世代技術領域での連携強化など、「もっといいクルマづくり」と「モビリティ社会全体の変革への対応」において協業を強力に進めるとしている。また、イノベーションの創出に向けた取り組みとしては、SBIとともにプライベートファンド「スバル-SBI Innovation Fund」を設立。スバルの既存事業分野や新規分野において、事業シナジーが見込まれる国内外の有望なベンチャー企業を投資して、先進の外部技術・ビジネスモデル情報獲得と新技術・新ビジネスモデルへのチャレンジに活かすという。

トヨタ自動車株式会社とのアライアンス
イノベーションの創出に向けた取り組み
航空宇宙事業戦略

 最後に収益計画・資本政策として、中村氏は「戦略的投資、試験研究費を積み増した上で、業界高位の利益率の確保にはこだわっていきたい。株主還元については、2018年度~2020年度の3年間は144円をベースとして、キャッシュフローに応じて自己株式取得を機動的に実施していきたい」と話した。

収益計画・資本政策