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スバル、吉永社長はCEO職と代表権を返上して取締役会長に

吉永氏「企業風土改革、コンプライアンス・CSRに専念」

2018年6月5日 発表

3月2日に行なわれた記者会見に出席した株式会社SUBARU 代表取締役社長 吉永泰之氏

 スバルは6月5日、4月2日に発表した新役員人事の内定を変更すると発表した。現代表取締役社長の吉永泰之氏は、6月22日付の新役員人事で代表取締役会長に就任予定だったが、CEO(最高経営責任者)職と代表権を持たない取締役会長へと内定が変更された。

 吉永氏が代表権を失うことにより、現専務執行役員の大河原正喜氏が代表取締役専務執行役員に就任する。また、CEO(最高経営責任者)職は代表取締役社長に就任する中村知美氏が担当する。

 同社が発表した6月22日付の新たな取締役候補者は下記の通り。

・取締役会長:吉永泰之氏(現 代表取締役社長)
・代表取締役社長:中村知美氏(現 専務執行役員)
・代表取締役専務執行役員:大河原正喜氏(現 専務執行役員)
・取締役専務執行役員:岡田稔明氏(現 取締役専務執行役員)
・取締役専務執行役員:加藤 洋一氏(現 取締役専務執行役員)
・取締役専務執行役員:大拔哲雄氏(現 専務執行役員)
・社外取締役:駒村義範氏(現 社外取締役)
・社外取締役:青山繁弘氏(現 社外取締役)

 今回の経営体制の変更については、新たに発覚した不適切事案を踏まえたもので、吉永氏は「私は代表権を持たず、またCEO職を新社長候補の中村に委譲することにより、本件を含む企業風土改革、コンプライアンス・CSRに専念することと致しました」とコメントしている。

同社はリリースで、吉永社長の記者会見冒頭メッセージを公開したので、以下に全文を掲載する。

 株式会社SUBARU、社長の吉永でございます。

 本日は、去る4月27日に調査報告書を公表した、当社群馬製作所における、燃費・排出ガス測定データの不正な書き換え行為に関連して、大変遺憾ながら、新たに二つの不適切事案の存在が判明したことについて、現時点で分かっていること、及び今後の当社の対応について、ご報告申し上げます。

 まず、昨年の完成検査員問題の発覚以降、問題の背景に当社の企業体質に関わる根深い問題があることを強く認識し、企業体質の改革に取り組んで参りました。

 それにもかかわらず、国交省の調査を契機として、改めて過去に行われていた不適切事案が判明したことは誠に遺憾であり、お客様、お取引先様、その他の関係者をはじめ、当社を取り巻くすべてのステークホルダーの皆様に、さらにご心配をおかけすることについて、心よりお詫びいたします。

 現時点で判明している事実を以下簡潔にご説明申し上げます。

 事案の内容としては、当社の完成検査工程に属する燃費・排出ガス測定の抜き取り検査に関し、過去において、次に述べるような不適切な測定が一部に行われていたことが判明したというものです。

 燃費・排出ガスの抜き取り検査では、国が定める「JC08モード」と呼ばれる速度パターン通りに車を約20分間走らせ、その間の排出ガスを測定し、燃費を算出します。

 画面をご覧ください。実際にはこの図の通り、工場内の計測室にあるシャシーダイナモメーターと呼ばれるローラーと測定機器が一体になった装置の上で、専門の計測員が実際にアクセル・ブレーキ・ギアを操作して、その速度パターン通り加減速させ、走行状態を再現します。

 次の画面は、JC08モードの速度パターンをグラフにしたものです。縦軸が速度、横軸が時間(単位は秒)を表します。約1200秒、つまり約20分間、実際の走行同様に、細かい加速・減速・停止を繰り返して、市街地から郊外まで実際の走行環境に近い状態を再現することで、実用に近い燃費値を計測することを狙っています。

 抜き取り試験ではこのモードの速度に対して±2㎞/hまでの誤差が認められています。

 図で申し上げると、上限が青のライン、下限が緑のライン、赤いラインが実車速、すなわち計測データを示します。拡大した部分のような上限下限からの逸脱が、約20分間の走行中に、トータルで2秒以上あった場合、または、1回あたり連続1秒以上逸脱した場合、JC08モードで認められた許容誤差の範囲外となり、測定データとしては採用できないものとされています。これを「トレースエラー」と言います

 同じく、試験室内の湿度についても30~75%の範囲に入っていないと、JC08モード走行の前提となる条件を満たさず、同様に測定データとしては採用できないものとされています。これを「湿度エラー」と言います。
しかしながら、当社群馬製作所で抜き取り検査に従事していた完成検査員の中には、トレースエラーや湿度エラーが発生した際に、そのエラーがないものとみなすか、または、データを書き換えて、有効な測定結果として処理するものがいました。こういった処理が、データが確認できる2012年12月以降で、少なくとも927件確認されました。

 この内容を、本日国交省に報告いたしました。

 そして、本日国交省より、今回の問題及び完成検査業務全般について、事実関係の詳細を調査し、1ヶ月を目途に報告すること等の指示を受けました。この調査結果については、国交省へ提出すると共に、皆様にも公表致します。

 なお、現時点では、昨年12月以降に順次実施したデータ書き換え事案の再発防止策によって、トレースエラー、湿度エラーに関する不適切な処理も防止できており、この問題がこれ以上拡大する可能性は無いと考えております。

 上記事案についての原因や動機など詳細は、今後の調査によって明らかにしていきますが、定められた試験方法や、試験の条件を逸脱していたものを有効な測定結果として処理していたという点で、コンプライアンス上到底許容されない問題と認識しております。

 こうした認識に立ち、今回の事案だけでなく、完成検査業務全般について、社外専門家により、独立性を確保した上で、徹底的な調査を行っていく予定です。

 前回、4月27日の記者会見においても、「全役員および全従業員が一丸となって、完成検査員問題と併せた再発防止策を徹底的に遂行して参ります」と述べましたが、より強い危機感の下、再発防止策についてもこれまでの延長線上の対策のみならず、社外専門家に行って頂く調査の結果を踏まえて、検査にかかわる組織体制の一からの見直しや完成検査に係る設備の刷新などにも踏み込んだ形で抜本的に検討して参ります。

 最後に、一連の問題を受けた経営責任の考え方については、既に記者会見等の場で申し上げておりますが、さらに今回の事態を受けて、会社に宿る“膿”を出し尽くすことが、足下の喫緊の課題と考えます。これを確実にやりきるため、社長を辞するだけでなく、明確な形でその任に専心的にあたることが、お客様やお取引様等に対する責任ある対応と考え、次の株主総会をもって、私は代表権を持たず、またCEO職を新社長候補の中村に委譲することにより、本件を含む企業風土改革、コンプライアンス・CSRに専念することと致しました。

 お客様、関係者をはじめとする当社を取り巻くステークホルダーの皆様に、多大なご心配・ご迷惑をおかけすることを、改めて心よりお詫びいたします。

新たに判明した不正データ書き換えの対象台数