三菱ふそう、世界初のデュアルクラッチAT搭載ハイブリッド車「キャンター エコ ハイブリッド」 デュアルクラッチAT「DUONIC」にモーターを内蔵、燃費は12.8km/L |
三菱ふそうトラック・バス(以下、MFTBC)は5月18日、世界初となるデュアルクラッチAT搭載ハイブリッド車「キャンター エコ ハイブリッド」を発売した。販売は、三菱ふそう系販売会社およびMFTBC地域販売部門から行われる。価格は、架装によって異なるものの、標準キャブ、標準ボディーで130PSエンジン搭載のドライバンが539万3000円からとなる。
新型キャンター エコ ハイブリッドは、2010年にフルモデルチェンジした「キャンター」がベース車。キャンターに初搭載されたデュアルクラッチトランスミッション「DUONIC(デュオニック)」にハイブリッド用モーターを内蔵、世界初のハイブリッド用モーター内蔵デュアルクラッチ式トランスミッションを搭載している。
新型キャンター エコ ハイブリッドに搭載されたハイブリッド用モーター内蔵デュアルクラッチ式トランスミッション | 左がデュアルクラッチ、センターがモーター、右がミッション部になる | ローターやステーターが見える |
実車への搭載状態。高電圧を示すオレンジ色のケーブルシールドが見える | リチウムイオンバッテリーケース |
バッテリーは、ラミネートタイプのリチウムイオンバッテリーを用い、MFTBC内にあるダイムラートラック部門のハイブリッド開発センター「グローバル・ハイブリッド・センター」にて開発したと言う。エンジンはキャンターに搭載されていた排気量3リッターの「4P10クリーンディーゼルエンジン」。これに排出ガス後処理装置「BlueTecシステム」を組み合わせ、ポスト新長期排出ガス規制(平成22年規制)に適合し、全車で低排出ガス認定車(NOx、PM10%低減レベル)および九都県市指定低公害車で平成21年「超」を取得している。「エコカー減税」では自動車重量税と取得税が免税されるトラックとなっている。
三菱ふそうトラック・バス 代表取締役社長 アルバート・キルヒマン氏 |
この新型キャンター エコ ハイブリッドの発表会において、同社代表取締役社長 アルバート・キルヒマン氏は、この車両を「世界初のハイブリッド技術とデュアルクラッチトランスミッションの組み合わせ、クラストップの燃費、クリーンな排出ガス」の3つの特徴があると紹介。2006年に発売した先代キャンター エコ ハイブリッドは、日本、オーストラリア、アイルランド、香港のパイロット試乗に投入したが、新型は世界で10以上のマーケットに投入し、欧州とアジアに注力すると言う。これは、JP09/EURO V排出ガス規制が導入されるためであるとした。
グローバル小型トラック商品プロジェクト部プロジェクトリーダー須々木裕太氏 |
新型キャンター エコ ハイブリッドの詳細については、グローバル小型トラック商品プロジェクト部プロジェクトリーダー須々木裕太氏が説明。ハイブリッドシステムとしては、エンジンとトランスミッションの間に、発電も可能な駆動用モーターを配置するパラレルハイブリッドを採用しており、モーターのみでのクリープ走行が可能。また、ブレーキ時のエネルギー回生も可能となっている。
新型キャンター エコ ハイブリッドが通常のハイブリッド車と異なるのは、デュアルクラッチATの偶数段にモーターが接続されていること。モータークリープ走行やモーター単体発進時は、モーターからの出力を2速、4速、6速ギヤで伝達。通常走行時は、エンジンからの駆動とモーターからの駆動が組み合わされるが、モーターからの駆動は常に偶数ギヤにより伝達される。アイドリングストップ機構も搭載しており、一定条件を満たすと、エンジンが停止する。
ハイブリッドシステム、デュアルクラッチトランスミッション、クリーンディーゼルエンジンの3要素を持つ | ハイブリッ方式は、パラレル方式を採用 | デュアルクラッチトランスミッション、ハイブリッドシステム |
バッテリー部は安全性に配慮 | モーターでのクリープ走行時の動力伝達 |
ハイブリッド走行時の動力伝達 | リチウムイオンバッテリーは、回生に向いたものだと言う |
ハイブリッドシステムの搭載により、メーターパネル内の多重情報表示「Ivis(アイヴィス)」に、リチウムイオンバッテリーの充電量や、モーターの状況(チャージ、アシスト)を表示させるモードを追加。安全性能としても、総輪ディスクブレーキやABS、EBD(電子制御動力配分システム)を搭載。排出ガスも、ポスト新長期排出ガス規制を30%ほど余裕を持ってクリヤする環境性能を得ている。
燃費に関しては、積載量1.5t~2tクラスで12.8km/L、2t~3tクラスで12.0km/L。いずれもそのクラスの燃費基準値を20%以上上回るものとなっている。
多重情報表示「Ivis」 | 実車のメーターパネル | 実車のIvis。シンプルながら、必要な情報を得られる |
環境技術 | 安全性能 | イモビライザーなども採用 |
ポスト新長期排出ガス規制の基準値を30%の余裕を持ってくクリヤする | 積載量1.5t~2tクラスの燃費値は12.8km/L | 積載量2t~3tクラスの燃費値は12.0km/L |
取締役副社長 国内販売本部長 末廣明夫氏 |
販売戦略については、取締役副社長 国内販売本部長 末廣明夫氏が解説。ハイブリッド車は初期導入コストが高くなりがちで、従来のキャンター エコ ハイブリッドでは、初期コストの燃料費による回収は8年~9年かかったが、新型キャンター エコ ハイブリッドでは、燃費向上などにより3年~4年での回収を見込めると言う。また、“10年コンセプト”を掲げ、10年間バッテリーモジュール交換費用を無料化。これには、リチウムイオンバッテリーの信頼性の向上などがあるとした。
そのほか、月額5万5000円のフルメンテナンスサービス付きリースプラン(100台限定)や、試乗車50台を全国に配備することで、新型キャンター エコ ハイブリッドの拡販を図っていく。
10年安心して使える車“10年コンセプト”を打ち出す | 10年間バッテリーモジュールの交換費用を無料化 | 新型キャンター エコ ハイブリッドは、初期コストを3年~4年で回収できると言う |
539万3000円から購入が可能 | 月額5万5000円、4万5000円のリースプランを台数限定で実施 |
試乗車を全国に50台配備 | 年間販売目標は2000台 |
(編集部:谷川 潔)
2012年 5月 18日