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岡本幸一郎の「キャンター エコ ハイブリッド」でエコ&セーフティランに参加してきました
各チーム11km/L台半ば超えを記録。Car Watchチームは12.3km/Lで総合4位に
(2013/7/1 10:00)
世界初のデュアルクラッチAT搭載ハイブリッドトラック「キャンター エコ ハイブリッド」
三菱ふそうトラック・バスが昨年発売した世界初のデュアルクラッチAT搭載ハイブリッドトラック「キャンター エコ ハイブリッド」。このキャンター エコ ハイブリッドは、ハイブリッド用モーターを内蔵したデュアルクラッチトランスミッション「DUONIC(デュオニック)」とディーゼルエンジンを搭載し、バッテリーはラミネートタイプのリチウムイオンバッテリーを採用。アイドリングストップ機構も搭載するという先進的なトラックだ。
キャンター エコ ハイブリッドを含むキャンターシリーズが、発売から50周年という節目を迎えたことを記念した「50周年記念セーフティー試乗会」が北九州を舞台に開催されたので、Car Watchチームとして参加してきた。
キャンター エコ ハイブリッドにはさまざまなバリエーションがあるが、今回用いられたのは、最大積載量2t、標準(ハイルーフ)キャブ標準ボディー、低床、スタンダード仕様という車両。エンジンは最高出力96kW(130PS)のディーゼルエンジン「4P10(T2)」を搭載し、トランスミッションは6速デュアルクラッチATのデュオニック。もちろん、ハイブリッドモーター内蔵バージョンとなる。カタログ燃費値は12.8km/Lで、エコカー減税では自動車重量税と取得税が免税される。
このキャンター エコ ハイブリッドに、大人2名が乗車。荷台には1tのウエイトを積んだ状態で走行する。さらに今回は、「エコフリートPRO」という、進化型デジタコ(デジタルタコグラフ)を搭載。このエコフリートPROが記録する安全運転技術ポイントと、燃費の総合値を競い、同モデルの燃費性能と操縦性を体感する、というのが主旨だ。
参加チームは、Car Watchのほか、「コマーシャルモーター」「ワーキングビークルズ」「Full lord」「Driver」の5チームだ。
福岡市東区の海の中道駅前にあるホテル「ザ・ルイガンズ」を起点に、初日は高速道路・林間道路が主体のルートを、翌日は市街地が主体のルートを走行。市街地ルートでは、途中で大きく外れたルートを走行しないようチェックポイントが設けられていたほか、2ルートとも基準ゴール時刻が決められており、早くゴールすればよいというわけでなく、基準ゴール時刻に近い上位2チームにはボーナスポイントが与えられる。
高速道路・林間ルートでは14.0km/Lを達成かと思ったが……
いよいよ、初日の高速道路・林間道路ルートの走行開始。不公平のないよう、用意された5台の車両から抽選でドライブする車両を選ぶ。我々は2号車だ。考えてみるとトラックに乗るのも、福岡に来たのもひさしぶりだ。
梅雨の時期ながら、初日の天気予報はそれほど悲観する感じではなく、雨は降らずにすみそうだ。燃費計測を伴うイベントだがエアコンのON/OFFはチームの裁量に任されていたため、エアコンはOFFに。気温は25度以上と若干高めではあったものの、エアコンを使わないと耐えられないというほどのものではなかったためだ。
走り出してしばらくはアイドリングストップは作動せず、5kmほど走行して十分に暖機されるとアイドリングストップするようになった。
一般道を16kmあまり走ったところで、古賀IC(インターチェンジ)から九州自動車道 へ。この区間の制限速度は100km/hのため、良好な燃費が期待でき、かつ制限速度を超えずに維持しやすい80km/hを目安に走ることにした。この速度であれば、まわりの流れと同じくらいであり、巡航しやすいからだ。キャンター エコ ハイブリッドにはメーターパネル内にマルチファンクションディスプレイ「Ivis(アイビス)」が搭載されており、瞬間燃費や平均燃費を見ることができる。80km/hで巡航していると平均燃費が13km/L台になり、13km/L台半ばからあまり上下しなくなった。このあたりが80km/hの高速走行の上限なのかもしれない。
その後、鳥栖JCT(ジャンクション)を長崎方面に向かい、長崎自動車道へ。金立SA(サービスエリア)で軽くトイレ休憩を取り、佐賀大和ICで下りた。この時点の走行距離は約83km。
ここからは、国道263号を走行し、林間ルートをひたすら北へ。「やまびこロード」は、なかなか走り甲斐のあるワインディングロードで、上り坂でできるだけアクセルを開けず、下り坂でできるだけ転がすイメージで走った。ただ、ちょっとペースが速かったような気がする区間もあり、必然的に横Gが強く出た状況もあった。そうなると進化型デジタコであるエコフリートPROのデータによろしくない記録が残りそうで気になったのだが、やはりそのとおりになったことは後ほど改めて……。
国道263号を北進すると、最後には博多湾に突き当たるので、百道から福岡都市高速環状線へ。百道から東進し、箱崎で出て、県道59号を目指して走る。途中、香椎浜埠頭にある給油所で軽油を給油して満タンに。この給油所にはあらかじめ配置された給油スタッフがおり、すべてのチームのクルマを満タンにする役目を担っている。トラックの燃料タンクは乗用車と異なりほぼ直方体のため、目で確認しつつ給油ラインを揃えることができるそうだ。
この時点でのマルチファンクションディスプレイでの平均燃費値は14.0km/L。オドメーター計測での走行距離は153kmで、給油量は12.42L。計算すると約12.3km/Lとなり、ディスプレイ上では1つの目標値としていたカタログ値をだいぶ上回るので内心喜んでいたのだ、満タン法だと下回る結果に。ちなみに、給油スタッフを専属で配置していることから分かるように、今回は満タン法での評価となっている。1tのウエイト搭載に加え2名乗車で12.0km/Lを上回る値はハイブリッドトラックならではと言える値。十分よい数字だと思うが、はたしてほかのチームはどうなんだろう……?
ホテルに戻って、夕食時に初日の結果発表と表彰が行なわれた。燃費について、ひょっとして1位ではという淡い期待もあったのだが、トップのワーキングビークルズチームが13.1km/Lをマークしたため、我々は2位に。以下、3位12.0km/L、4位11.6km/L、5位10.9km/Lと、各チームともまずまずの燃費を達成した。それよりもショックだったのは、岡本の運転でのエコフリートPROの点数が思ったよりもかなり低かったことだ(4位の54点)。
その場で、エコフリートPROの関係者より、どのようなロジックで採点されるかなどの説明があった。そういえば、アクセル操作は気にしていたのでスムーズの項目で満点の20点だったけれど、ブレーキはより回生がかかるよう、さらには少しでも早くアイドリングストップするようやや急で強めの踏み方をした。交差点も、燃費に有利かと思い速度が乗ったまま惰性で曲がろうとしていたので、減速量が足りていなかったように思うし、まだ曲がっている最中にアクセルをONにしていた。その辺りがシビアに採点されてしまったようだ……。
エコフリートPROのシビアな診断に猛省
燃費値はまあよかったものの、運転診断で順位が落ちてしまったので、その失敗を挽回すべく、2日目の市街地ルートに挑んだ。2日目は高速道路は走行せず、ホテルから県道を東進し、チェックポイントでチェックを受け、国道3号で戻ってくる。スタート地点からしばらくは前日と同じものの、走る時間帯が前日の午後とは異なり、朝の通勤時間帯と一部重なっていた。そのため、交通量はだいぶ多かった。
前日も満点だったスムーズな走りを心がけるとともに、ステアリングの切り方やブレーキの踏み方にもかなり注意した“つもり”。それがエコフリートPROで高得点が出る運転なのかどうか、本来運行管理に使われる機械であるだけに、何がどう判断されているのかリアルタイムで分かったほうがありがたいところではある。
アイドリングストップでのエンジン停止と再始動にはやや時間を要する(約5秒)ので、気持ち早めにブレーキから足を離したほうがもたつかない。上り勾配の場所で信号停止しても、ブレーキが保持されるのでずり落ちる心配はない。デュアルクラッチATの制御についても、乗用車ですらギクシャク感が気になるものが少なくないのだが、キャンターのものはいたってスムーズで運転しやすいところがよい。
駆動用バッテリーがフル充電に近づき、その他の条件も整った場合には、ときおりモーター走行モードに入る。電車のような音が聞こえて、スルスルと走っていくさまは、ちょっと不思議な感覚だ。
この日のコースの後半は、主に国道3号のバイパスを走った。制限速度が50km/hの区間で、キャンターエコハイブリッドの場合、Dレンジでは6速に入らず、マニュアルシフトで6速に入れると、エンジンが1000rpm程度となり、かえって燃費がわるそう。どう走ると効率的なのか迷いながら、とりあえず昨夜、開発関係者より聞いた、「コツをつかむとマニュアル操作のほうが燃費はよいが、迷ったらDレンジ」の言葉を思い出し、Dレンジで50km/hキープを心がけた。
マルチファンクションディスプレイの燃費表示は、13km/L台後半であまり動かなくなってきた感じ。前日は表示と実燃費に差があったのだが、果たしてこの日はどうだろう……? 前日と同じ給油所、同じ給油スタッフで給油したところ、給油量は7.99L、走行距離はオドメーター計算で98km。燃費は約12.3km/Lと、偶然にも前日とまったく同数値になった。
ただし、これまたエコフリートPROの運転診断では、ブレーキがなんと4点、右左折は12点という低得点となった。完全停止が採点される「停止」は20点満点なのだが、停止までいたらない減速が採点される「ブレーキ」でこのような低い点数となったのは、速度調整のためのブレーキ操作がよろしくなかったということにほかならないのだが、これほど低得点になるようなことをした心当たりもないし……。これは厳しいなと思う半面、結果は結果として真摯に受け止めたいと思う。
1日目と2日目の合計となる総合では、1位がFull lord、2位ワーキングビークルズ、3位コマーシャルモーター、4位Car Watch、5位Driverとなった。バス&トラック系の専門誌の方々が強かったなと、ちょっと負け惜しみを言いたくなるところでもあるけれど(笑)。いずれにしてもどのチームも、1tの荷物と大人2名乗車ながら総合で11km/L台半ばを上回る燃費が出ているわけで、キャンター エコ ハイブリッドの燃費性能のよさを実感させられた。そして、エコフリートPROの搭載によりスムーズな運転を心がけるようになることは、必ずや安全な運行に寄与するに違いないと強く思った次第である。