光岡自動車、3代目となる新型「ビュート」発表会
中身を進化させながら独自のデザインテイストは継承

新型ビュートを挟んでフォトセッションに臨む河村賢整 取締役副社長(写真左)と青木孝憲 開発課長(写真右)

2012年5月23日開催



 光岡自動車は5月23日、同社の人気モデル「ビュート(Viewt)」をフルモデルチェンジし、5月24日から発売する。

3代目となる新型ビュート。展示車のグレードはすべて12LX3代目ビュートのアンベール

 ビュートは、1993年1月に日産「マーチ(2代目)」をベースとした同社の「ファッションカー」としてデビュー。歴史ある高級車を思わせるクラシカルな外観デザインを与えながら、ベースとなったマーチが持つ高い実用性を兼ね備えるという独自の魅力によって人気を博し、これまでにシリーズ累計で1万台以上を生産する同社の中心的モデル。また、ベース車両のマーチがモデルチェンジしたことを受け、2005年にビュートも2代目に進化したものの、外観デザインは初代モデルから極力変えることなく受け継がれているのも、このクルマの大きな特徴となっている。

 都内で開催された発表会では、まず同社の河村賢整 取締役副社長が登壇し、同社の歴史とファッションカーの設計・生産を行う光岡事業部などについて紹介。今年で25年目を迎える光岡事業部が、昨年からタイでの車両生産と直営の販売店を立ち上げるなどアジア諸国でも事業展開を進めており、新しく発売する3代目ビュートは海外市場における「ミツオカ車のエントリーモデル」という位置づけになると説明。また、3代目を迎えたビュートは、同社にとってのブランドリーダーカーにもなっていると語った。

 また、ビュートがユーザーから支持される理由について、デザイン性の高さと職人が1台ずつ手作業で作り上げることによる付加価値と希少性にあると分析。ブランド品の衣類やバッグなどと同じように、“他人が持っていないものを手に入れたい”という欲求を満たす製品作りが独自の価値になっていると言う。

 河村副社長は最後に、新聞記事からの引用という形でドイツで実施されている「Hナンバー」の制度について紹介した。これは主力産業である自動車の伝統と価値を次世代に受け継ぐことを目指し、一定の年式基準を超えたクルマにHナンバーを発行するというもので、自動車税や保険料などを減免し、排出ガス基準を緩和することで歴史あるクルマの価値を高めているものだと言う。この考え方が、同社の持つ「長く楽しめる価値観を持つクルマを提供する」という理念とも一致すると語り、今後も長く愛され続けるクルマ作りを継続していくと意気込みを述べた。

河村賢整 取締役副社長ビュートに代表されるミツオカ車は付加価値と希少性を持ち、長く楽しめる価値観を持っていると解説された

「ビュートという車名は、キャッチコピーでもある“美しく、遊ぶ、人へ。”という言葉から文字を取って美遊人と名付けられています」と解説する青木 開発課長

 続いて新型ビュートの技術解説を行ったのは、同社のオロチやヒミコなどのデザインも手がけたことで知られる青木孝憲 開発課長。新型の変更点について、外観デザインでは先代が女性からの人気が集中したことを踏まえ、3代目では「初代ビュートが持っていた、ただかわいいだけではない品格のあるデザイン要素」を復活させたと説明。

 インテリアでは、オプション品ながらビュートでは初めてとなるオリジナルデザインのインパネを採用するなど、当初からさまざまな内装のカスタマイズプランを設定。外観が持つクラシカルテイストと調和する質感が与えられている。また、ベース車両の進化に伴い、2WDモデルは全車エコカー減税&補助金の対象となっており、クラシカルな見た目ながら現代の社会的要請に応える1台となっている。

 発表会の終盤には質疑応答の時間が用意された。ビュートに続く、今後のモデル戦略について質問された河村副社長は、同社が始めた「ニッチ&グローバル」という戦略で可能性が広がっていくことに期待感を持っており、かつて生産していた「ミツオカ・ゼロワン」のような自分たちらしい車種をぜひ復活させたいと回答。

 また、アジアでの事業展開に関連して足を運んだ中国やタイで受けた印象から、「30年前の日本にあったような“一番欲しいものはクルマ”という雰囲気を老若男女問わず持っている。私たちが25年間続けてきた経験をぶつけていき、さらに現地での意見や要望を反映したクルマを届けたい」とコメントした。

ミツオカ車といえば外観デザインの大胆な変更が印象的だが、3代目ビュートではウッドタイプインパネ(7万5000円高)や本革シート(20万円高)など、内装でも数多くのオプションをラインアップして独自の世界観を車内でも楽しめるようになっている「海外展開を進めるとはいえ、大都市とは違う地方都市独自の視点や技術などはこれからも活用していけると思う」と語る河村副社長

 また、外観デザインの変更内容で具体的なポイントを尋ねられた青木 開発課長は、「2代目は全体のシェイプが後方に行くに従って下がっていくことで、女性的な柔らかい印象を抱かせるシルエットでした。そこで今回は、フロントからリヤにかけて上がっていくウエッジシェイプを持たせ、リアウインドーも立ち気味にして角の立った処理にしています」と解説

「男女両方から人気のあった初代の品格あるデザイン要素を復活させた」と語る青木 開発課長ウエッジシェイプを強調したサイドビューや、鋭角に下りていくルーフラインなどで力強さをアピールする3代目ビュート

 3代目ビュートの価格は2WD(FF)車が205万円~258万円、4WD車が244万円、272万5000円となっている。なお、ミツオカのファッションカーはすべて受注生産となっており、オーダーから納車まで3カ月程度の期間が必要になる。

 このほか、7月1日~31日の期間中に新東名高速道路にある休憩施設「NEOPASA(ネオパーサ)清水」で、3代目ビュートの車両展示イベントを開催する予定。

4種類あるボディーカラーのうち、写真のホワイトとブラックメタリックはダークレッドの内装色との組み合わせになる
ワインレッドメタリック(写真)とブリティッシュグリーンメタリックのボディーカラーは、内装色がアイボリーになる
マーチにはないビュート独自の魅力はやはり独立したトランク。高い段差はあるものの、絶対的な容量はマーチより増加している
リアシートは、上位グレードのLXは6:4分割可倒式、そのほかのグレードは一体可倒のベンチタイプとなる
ステアリングの中央に、大きなミツオカのロゴマークが入る
標準仕様のシフトレバーオプション設定のセンターコンソールセット。価格は3万5000円で全車に設定
標準仕様のトリコットシート全車にオプション設定される本革シート。ダークレッド、アイボリーともに価格は20万円高となっている
ダークレッド内装のリヤシート標準仕様のドアトリム
全車にオプション設定されるクラシックドアトリム。ダークレッド、アイボリーともに12万円高の価格設定
標準仕様のタイヤ&ホイール。サイズは165/70 R14
オプション設定となるアルミホイール。タイヤサイズも175/60 R15に変更される。価格は15万9600円
中央で2分割されているオプションのリアカーテン。価格は1万2000円赤木目を使ったウッドタイプパーセルボードは1万2600円で設定
パワートレーンはベース車と同じで、直列3気筒DOHC 1.2リッター「HR12DE」エンジンとエクストロニックCVTの単一設定

(佐久間 秀)
2012年 5月 23日