日産、ASEAN地域にダットサンブランドを投入し50万台以上の販売を 中期計画で2016年度の販売台数は3倍以上、シェアは2倍以上に |
日産自動車は7月9日、ASEAN(東南アジア諸国連合)地域に対する同社の取り組みに関する説明会を報道陣向けに開催した。
主な地域に関しては、アジア・パシフィック日産自動車会社(NMAP)社長・タイ日産(NMT)社長・アジア大洋州およびアセアン(除く中国)事業統括を兼務する木村隆之氏から、インドネシアに関しては日産自動車 アジア大洋州部 部長 スティーブ・アルディアント氏から、説明が行われた。
木村氏は、ASEAN主要5カ国における2010年度の販売状況を紹介。ここで2010年度の数字を示したのは、2011年度に関しては、トヨタ、ホンダにおいてタイ洪水の影響があったためと言う。その2010年度の数字に関しては、販売台数15万台でシェア6%。2011年度は17万6000台で6.9%となっているが、中期計画で示しているとおり、販売台数3倍以上の50万台、市場シェアで2倍以上の15%を目指すとする。そのために、10車種以上を投入していくと語った。
ASEAN地域の特徴は、多数の人口と低い自動車普及率にあると言う。たとえば、日本では1000人あたり550台という自動車普及率となっているが、タイでは1000人あたり150台、インドネシアでは40台となり成長過程にある。また、タイ、インドネシア、マレーシアの2011年の販売台数トップ10を示し、市場ごとの特徴が顕著であると言う。
ASEAN主要5カ国の概要 | ASEAN地域における中期計画 | ASEAN地域の統計データ |
たとえばタイでは、ピックアップトラックとそれの派生が市場の半分を占める。乗用車はセダン型が人気だが、これは新たなトレンドで、政府の補助もありエコカーがランキングに食い込んでくる。インドネシアでは、乗用車の3台中2台がMPV。このMPVとは3列シート7人乗りを指し、トヨタ、ダイハツのトヨタグループがシェアの過半を占める。マレーシアは、プロトンなどの国民車が強いとしており、日産はそれらの市場に対して適切な車種を投入し、いずれの国においてもベスト10に食い込んでいる。
タイでの販売ベスト10。日産は、6位と8位にランクイン | インドネシアの販売ベスト10。日産は、5位にランクイン |
マレーシアの販売ベスト10。日産は、9位にランクイン | ASEAN市場の見通しとソリューション |
今後は中期計画の達成のため、4つの施策を実施。1つ目がインドネシアおよびASEAN地域における販売を伸ばすために「ダットサン」ブランドを投入し、インドネシア政府が主導する「低価格・グリーンカープログラム」に積極的に参画していく。
2つ目が現地化。研究開発やパワートレーン生産の現地化を加速し、日産テクニカルセンターサウスイーストアジア(NTCSEA)の従業員を2011年度の120人から、2016年度には3倍増の370人に引き上げる。
3つ目が生産能力の倍増。現在38万5000台の生産能力を2016年度に70万台に引き上げる。70万台中、50万台はASEAN地域での需要にあてられるが、20万台は別地域の輸出にまわる。どの工場をどう増強するかについては日産の戦略と深く関わってくるため、現時点では言えないとのことだった。
4つ目が、タイにアジア・パシフィック日産自動車会社を設立すること。現地に研究開発や商品企画の能力を持つ会社を設立することで、中期経営計画の進捗と確実な達成を目指していく。
ASEAN地域に関する4つの取り組み | ダットサンブランドをインドネシアに投入 |
現地での研究開発や生産を実施 | 生産能力の増強 | 現地会社を設立 |
とくにタイでは、政府が初めてクルマを買う人向けに10万バーツ(約25万円、1バーツ≒2.5円)の補助金を行っており、市場が拡大。日産はこのタイ市場にエコカー第1号として「マーチ」を投入し、セダンタイプのエコカー第1号として「アルメーラ」を投入。エコカーの市場シェアでは、日産車は65%を占めると言う。このエコカーを中心にピックアップトラックを強化していくことで、2016年度に全体シェアの15%を目指す。
タイの需要動向 | タイの市場シェア推移 | 日産は、タイではエコカーブランドとして認識されている |
マーチとアルメーラの成功で、エコカーの中では63%の市場シェアを獲得 | 日産は、3年連続で現地のカー・オブ・ザ・イヤーを獲得している | タイでの次なる目標は、2016年度のシェア15% |
ASEANの中で2億4000万人という最大の人口を持つのがインドネシア。そのインドネシアと担当するのがスティーブ・アルディアント氏で、この市場ではMPV Low(低価格MPV)が最も多数を占めていると言う。日産は2007年度に「リヴィナ」を投入。それまでのシェア1.50%から5.10%に大幅に上昇させ、「マーチ」「ジューク」と投入することで2011年度には6.6%にまで引き上げた。
トヨタ・ダイハツをあわせたトヨタグルーブが6割以上というこの市場に、市場シェア10%を目指し「エルグランド」「セレナ」などMPVを投入していくと言う。とくに重要な戦略車が「エヴァリア」で、手頃な価格設定によりトヨタと真っ向勝負していくとした。
また、インドネシアはインドと違い1万ドル以下のクルマがないのが特徴となっており、このレンジに車種を投入すれば、新たなマーケットが創出されると見ている。そのための突破口がダットサンブランドの新興国向け車種になり、ASEANでの研究開発は現地の要望に即した車種開発に大切な機能を持つものであるとした。
ASEAN最大の人口を持つインドネシアを担当するスティーブ・アルディアント氏 | インドネシア市場の状況 | 日産の販売台数とシェアの推移 |
インドネシアの5大自動車賞をジュークとマーチで占めたと言う | インドネシア市場のメイン車種であるMPVを投入していく | エヴァリアで、トヨタと勝負していく |
エヴァリアの受注状況は好調だと言う | インドネシアには1万ドル以下のクルマがない。右はインド市場の分布図 |
1万ドル以下の車種を投入することで、新しい市場の可能性がある | その鍵となるのが、ダットサンブランドになる |
なお、最近民主化が行われたミャンマーに関しては、人口6500万人という魅力的な市場だが、まだ民主化が行われたばかりであり、状況を見ている段階であると言う。
(編集部:谷川 潔)
2012年 7月 9日