ヴァレオの駐車支援システム「Park4U(パーク・フォー・ユー)」を体験してみた
アクセルとブレーキ操作で完璧な縦列駐車


 自動車は約2万点~3万点という多くの部品から構成されており、それらの部品は数多くの部品メーカーによって生産されている。ヴァレオはそうした部品メーカーの中でも大規模な部品サプライヤーとして知られており、世界28カ国に125個所の工場を持ち、グループの社員数は6万7900人を誇る。

 日本には、ヴァレオジャパン、ナイルス、ヴァレオユニシアトランスミッションの3つのグループ会社があり、アフターマーケット市場ではPIAAとビジネスパートナーシップを締結している。自動車を裏から支える企業であるためあまり表に出るブランドではないが、シングルアームワイパーなどでヴァレオの名前を聞いたことがある人もいるのではないだろうか。

 自動車の電子化、自動化は大きなトレンドとなっているが、それらの集大成として自動運転などの運転支援システム開発の動きがある。たとえば、スバルのEyeSightもその1つであるし、今回紹介するヴァレオの駐車支援システム「Park4U(パーク・フォー・ユー)」も今後の自動車の未来を示すものだ。このPark4Uは、海外ではフォルクスワーゲン パサートやトゥーラン、フォード フォーカスなど38車種に搭載されている。

Park4Uを搭載したトゥーラン車体の周囲に超音波センサーを装備するPark4Uの制御ユニットと、超音波センサー

 今回は、ヴァレオグループのナイルス つくばテクノセンター内でPark4Uを搭載したトゥーランを試乗する機会を得たので、その駐車支援システムの動きをお届けする。

縦列駐車、バック駐車を支援
 Park4Uは、ドライバーがステアリングホイールに触れなくても縦列駐車やバック駐車ができるというもの。車両の周囲に超音波センサーを多数配置することで、車両周辺の環境を認識し、ステアリング操作を行ってくれる。ただし、アクセル操作とブレーキ操作は自分で行う必要がある。

 具体的な操作は、シフトレバー前にあるPark4Uスタートボタンを押し、駐車支援モードに移行。駐車パターンを、縦列駐車、バック駐車など選ぶことで、後はメーターパネル内に表示された前進、後進の指示に従っていけばよい。駐車パターンは縦列駐車、バック駐車のほか、欧州には多いという斜め駐車にも対応している。また、駐車支援だけでなく、たとえば縦列駐車からの発進などの支援も行ってくれる。

マルチインフォメーションディスプレイ内に、駐車モードが表示されている。これは、縦列駐車モードに設定し、駐車可能な空間を見つけたところ

 実際の動きは以下の写真と映像で確認してほしい。今回は報道陣向けのデモ試乗ということで駐車間隔は、一番狭くしてあるとのこと。そのため、バック駐車を終えた時点で隣の車との間隔が、ドアミラー間で数cmしかなく、ドアをあけて降車するのがほぼ不可能なほど。逆に言えば、それほどの精度でのコントロールが行われているわけだ。

Park4Uスタートボタンは、シフトレバー前にある。フォルクスワーゲンでは、この機能をパークアシストと名付けているバック駐車終了時の写真。ドアミラーの間隔に注目してほしい。この精度でバック駐車が可能となっている

バック駐車
 バック駐車は、最初にバック駐車の開始位置に自動車を止めることから始まる。Park4Uスタートボタンを押し、駐車モードを選ぶ。その際、車の左側に止めるのか、右側に止めるのか選ぶ必要がある。後は、マルチインフォメーションディスプレイの指示に従って、アクセル操作とブレーキ操作、そして前進や後進を繰り返すのでシフト操作をすればよい。


Park4Uによるバック駐車を室内後席から撮影した映像。ステアリングホイールの動きと、マルチインフォメーションディスプレイの表示に注目

駐車開始位置まで移動し、駐車支援モードに移行。後は、アクセル、ブレーキ、シフト操作を行うだけ。ステアリングホイールに触れる必要はない

縦列駐車
 縦列駐車もバック駐車と同様の操作となる。違いはモードだけ。統一された操作で駐車が行える。

縦列駐車もバック駐車と同様。駐車位置からの発進サポートも行う

 実際にPark4Uの動きを見ていると、ステアリング操作から解放されるのは嬉しい点だが、意外とシフト操作が面倒だなということ。アクセル操作、ブレーキ操作まで自動化するには法律などの問題もあり、この点の解消には社会的な合意が必要となる部分だろう。

 精度に関しては、申し分がなく、音の変化で周囲との間隔を知らせてくれ、正しいステアリング操作をしてくれる。一般的に縦列駐車を苦手とする人は多いだけに、これだけ正確な駐車支援であれば助かる人も多いと思う。個人的に気になったのは、Park4Uでは短い区間で向きを変えようとするため、やや据え切り気味のステアリング操作をする点。タイヤや車への負荷が高いように見えたが、その辺りも調整範囲なのだろう。ヴァレオは、これら高度な制御を伴うシステムの拡販を目指していくと言う。

(編集部:谷川 潔)
2012年 7月 19日