BASF、最新のカラートレンド予測を発表、アジアではグリーンやパープルが主流に
カラートレンドのテーマは「Wide Awake(すっきりした目覚め)」

各地域のカラートレンドについて発表を行ったチーフカラーデザイナーの松原千春氏

2012年7月26日発表



佐藤昭彦 代表取締役社長

 BASF(ビーエーエスエフ)コーティングスジャパンは7月26日、2~3年先の世界のカラートレンド予測を発表、都内で記者会見を行った。

 同社は4輪、2輪車などの塗料メーカーで、自動車塗料メーカーとして唯一、欧州、北米、日本の3大主要市場に自社のカラーデザインセンターと研究開発機関を持つ。自動車のボディーカラーは、製品の特性やスタイリングによって似合う色が異なり、かつ使う人や時代によって好まれる色は変化する。そのため、同社のカラーデザイナーは独自のトレンド分析を行い、数年先の消費者の価値観や気分を予測しながら各メーカーにカラーの提案を行っている。

 今回の発表は、2~3年後に世界で流行するカラーを予測したもので、カラートレンドのメインテーマは、現実を受け入れ前へ進もうとする気持ちを表した「Wide Awake(すっきりした目覚め)」。このテーマを前提とし、「Invent(創造する)」「Narrate(ストーリーテリング)」「Cultivate(クリエイティブに育む)」という3つの共通テーマに沿ってアジア太平洋、北米、欧州での流行の予測を行っている。いずれも全体的に落ち着いた色彩や、鮮やかさを抑えた自然を感じる色調が主流になっており、世界的にブラウンのトレンドが継続される一方で、グリーンを感じる色が増えてきているのが特徴と言う。

 さらに地域ごとに独自のテーマを掲げ、それに沿った形での各地域のカラートレンド予測も発表。アジア太平洋では「SCENT(母国の香り)」、北米では「COPE(真摯に取り組む)」、欧州では「PLY(多層)」というテーマが掲げられている。

カラートレンドのメインテーマは、現実を受け入れ前へ進もうとする気持ちを表した「Wide Awake(すっきりした目覚め)」「Invent(創造する)」について
「Narrate(ストーリーテリング)」について「Cultivate(クリエイティブに育む)」について
アジア太平洋では「SCENT(母国の香り)」、北米では「COPE(真摯に取り組む)」、欧州では「PLY(多層)」というテーマのもと、地域ごとのカラートレンド予測も発表

 これらの内容について、アジア太平洋地域でカラーデザインを担当するチーフカラーデザイナーの松原千春氏が説明を行った。

 メインテーマについて、松原氏は「今の新興国での経済のスローダウン、世界各地で起きている自然災害など、世界的に見て困難な状況が続いている。個人レベルではどうすることもできないかもしれないが、今こそ個人レベルで立ち上がるべきだ。それがどんなに小さい力でも、それ(住みやすい世界)に向けた道筋は見えている。そのことからメインテーマに『Wide Awake(すっきりした目覚め)』を掲げた」と説明する。

Invent(創造する)
 まず「Invent(創造する)」は、「今まである常識が、今後も同じ常識であり続けるわけではない」という認識をコンセプトに掲げたもので、光、波長といった抽象的なモチーフを、無彩色やグレー味をおびたカラーで表現したと言う。そのため、各地域で予想されるトレンドカラーは、シャープというよりは曖昧さのある落ち着いたカラーが多い。

「Invent(創造する)」のテーマでは無彩色やグレー味をおびたカラーが多い

Narrate(ストーリーテリング)
 そして「Narrate(ストーリーテリング)」は、現代はインターネットなどを通じたコミュニケーション社会へと移行しており、国という枠を越えて各人の言葉や表現が世の中を動かす原動力になっている。また、「方向を見失っているこの時代には、どのような道に進んでいくべきなのか、個人個人の意志をはっきりと示していく必要がある」「製造業として、その商品にどのような背景、ストーリーがあるのか。エンドユーザーはモノを買うだけではなく、開発コンセプト、開発思想というものを商品価値として見ている。色々な意味で表現、表現力、ストーリー性が重要になるテーマ」(松原氏)。

 そうしたコンセプトから、「Invent(創造する)」よりも視覚的にはっきりとした華やかなものが多く、各地域ともソリッド感のあるカラーが並ぶ。特に日本市場においては、電気自動車(EV)の製品化に伴い「新しい分野の自動車が出てくることによって、受け止められる価値観、使われ方が変わってくると思う。そのことから、より個性を活かしたような表現力のあるカラーが求められるのではないか」(松原氏)とした。

「Narrate(ストーリーテリング)」欧州で提案されるカラー北米で提案されるカラー

「Cultivate(クリエイティブに育む)」のテーマの中で提案される各地域のカラー

Cultivate(クリエイティブに育む)
 「Cultivate(クリエイティブに育む)」については、「我々日本人は東日本大震災以降、何事もなく家族とともに過ごせることがどんなに大事なことか、気づいたと思う。今ある自然、日常を大切にして、それをよりよくするために少し手を加えて育んでいく。そうすることで、私たちの近未来の生活は幸せで豊かになっていくのではないか」(松原氏)という思いを込めたコンセプトと説明。

 Cultivate(クリエイティブに育む)には“自然”というテーマが入ることから、3つのテーマの中でも重要とし、各地域からはブラウン系のほか、特にグリーン系に注目して開発していると言う。このグリーンの表現も地域によって異なり、欧州ではマットなグリーン、北米ではソリッドなグリーン、アジア太平洋ではオリーブ系のグリーンが提案されている。


地域ごとのカラートレンド予測。こちらはアジア太平洋で提案される「SCENT(母国の香り)」。アジア地域では自然を感じさせるブラウンやオリーブ、幅広いレッドカラー系やゴールドなど、アジアらしい色域で洗練されたリッチカラーが中心になると予測。写真右は中国での流行カラーを予測したもの
欧州でのテーマは「PLY(多層)」。同地域には多彩な文化や社会が層に分かれて重なり合っており、衝突や交わりを融合の美ととらえるユニークさによって、新しい色域と意匠の組み合わせへのチャレンジが見られるとしており、くすんだ表情のダークカラーや、彩度のコントラストを強調したカラーがトレンドになると予測北米でのテーマは「COPE(真摯に取り組む)」。経済と生活の安定を目指す北米では、信頼感のあるシンプルなデザインが求められると言い、低彩度で視覚的に安定感のあるカラーに、独創性を加えたカラーが注目されると予測している

(編集部:小林 隆)
2012年 7月 27日