インターブランド、企業のブランド価値をランク付けする「Best Global Brands 2012」発表
自動車業界ではトヨタがトップ。日産はブランド価値を大幅に増加

左からインターブランドジャパンの岩下充志氏代表取締役社長CEO、ブランド価値評価担当コンサルタントの田中英富氏、日産自動車 チーフクリエイティブオフィサーの中村史郎氏

2012年10月3日開催



 ブランドコンサルティング会社・インターブランドの日本法人であるインターブランドジャパンは10月3日、東京 中央区の東京証券取引所(東証Arrows)において、企業のブランド価値をランク付けする「Best Global Brands 2012」を発表した。この発表会には、今年度のランキングでブランド価値を大幅に高めた日産自動車 チーフクリエイティブオフィサーの中村史郎氏が出席し、打鐘式を行った。

「Best Global Brands 2012」の発表は東京証券取引所(東証Arrows)で行われた
東京証券取引所の正面玄関

「Best Global Brands」とは?
 「Best Global Brands」は、グローバルに展開する企業を対象に、ブランドの持つ価値を独自に金額換算し、ランキング形式(トップ100)で発表するというもの。ブランド価値の評価手法は1984年に開発され、1999年から毎年発表を行っている。評価手法は、証券アナリストの予想値を元にどの程度儲かっているかを見る「財務分析」、ブランドがどの程度儲けに役立っているかを見る「ブランドの役割分析」、ブランドによる儲けがどの程度確実なのかを見る「ブランド力分析」の3つで、これらを元にブランドの価値を算出している。

 また、ランキングの対象になる企業の基準は「自国以外の海外売上高比率が30%以上」「財務情報が公開されていること」「B to Bブランドであっても、グローバルで認知されていること」を挙げている。

 今年の発表によると、1位はコカ・コーラで、2位にアップル、3位にIBMがランクイン。自動車メーカーでのトップは10位に入ったトヨタ自動車。以下メルセデス・ベンツ(11位)、BMW(12位)、本田技研工業(21位)、フォルクスワーゲン(39位)などが続いた。


岩下充志代表取締役社長CEO

 発表会では、インターブランドジャパンの代表取締役社長CEOである岩下充志氏と、同社のブランド価値評価担当コンサルタントである田中英富氏が出席。

 岩下氏は、同社が発表しているブランドランキングについて紹介。今回発表した「Best Global Brands」以外にも、グローバルに展開する日本企業だけを対象にした「Japan's Best Global Brands」(基準はBest Global Brandsに準ずる)、「自国以外の海外売上高比率が30%未満」「財務情報が公開されている」日本企業を対象にした「Japan's Best Domestic Brands」、さらに環境に優しいブランドが増えていることから「Best Global Green Brands」(Best Global Brandsにランクインするコーポレートブランドが評価対象)を2011年から公表している。

 このBest Global Green Brandsについて、岩下氏は「最近、日本企業の嬉しいニュースがあまりないが、今年のグリーンブランド・ランキングでは日本企業がトップ10に3企業入った。1位はトヨタ自動車、3位はホンダで、プリウスやインサイトといったハイブリッドカーが高い評価を得ている。世界中でもっともエコなブランドという指標で見ると、日本企業というのはまだまだ世界で先端を行っているし、我々はそれを誇りに思ってよいのではないか」と紹介した。

インターブランドについてインターブランドは世界展開するブランドコンサルティング会社1984年にブランド価値を金額換算する評価手法を開発
Best Global Brandsは世界のCEOが注目する重要な指標の1つと言う同社が展開するブランドランキング
今年のJapan's Best Global Brands今年のJapan's Best Domestic Brands今年のBest Global Green Brands

ブランド価値評価担当コンサルタントの田中英富氏

トップ10では3つの大逆転
 今回のBest Global Brandsについては田中氏が概要を説明した。

 今年度のBest Global Brandsのトップ10は、1位がコカ・コーラで、2位アップル、3位IBMとなり、以下Google、マイクロソフト、GE、マクドナルド、インテル、サムスン、トヨタと続いた。

 田中氏はこのトップ10で3つの大逆転があったと言い、1つはアップルの躍進で、「アップルが設立したときのライバルだったIBMを、ついにアップルが抜いてしまった」(田中氏)こと。そして2つめはマイクロソフトをGoogleが抜いたこと、3つめは「ブランド価値が対前年比40%増となり、トップ10に返り咲いたトヨタを上回るサムスンの躍進」。サムスンはアジアブランドで最高位の9位となっている。

 また、自動車メーカーが今後ブランド価値を伸ばして行くには「環境対応の強化」「IT革命・デジタル革命をどのように取り込んでいくか」というポイントとともに、今後自動車がモバイル・デバイスになっていくというトレンドを注視する必要があり、「フォードがマイクロソフトと組み、昨年からタッチベースのユーザーインターフェイス『My Ford Touch』を導入した。自動車メーカーがこうしたデジタルの流れをいかに取り込めるか。この点が、今後自動車のブランドを高めるファクターになるのではないか」との予測を述べた。

「財務分析」「ブランドの役割分析」「ブランド力分析」の3つの分析からブランド価値を算出ブランド価値評価の内容ブランド価値を「見える化」することが同社の役割
今年のBest Global Brandsトップ10アジアブランドのトップ10前年比でブランド価値が高まった企業
前年比でブランド価値が落ちた企業今年度からランキング入りした企業
ランキング入りした企業を国別で見たところ、米国が53でダントツだったランキング入りした企業をジャンル別で見たところ。自動車部門がもっとも多かった

中村史郎氏

世界で強い存在感を示した日産
 なお、発表会後に行われた打鐘式には日産自動車 チーフクリエイティブオフィサーの中村史郎氏が出席。

 日産は今回73位にランクインしており、インターブランドは「欧州でのシェア拡大のみならず、ロシアや中国といった新興国においても強い存在感を示しており、ブランド価値を大幅に増加させている」と分析している。

 Best Global Brandsのトップ100に入ったことについて、中村氏は「中期経営計画『日産パワー88』の柱の1つにブランドパワーの強化を掲げており、その結果が出て嬉しく思う」「一朝一夕にブランド価値が高まるものではない。(Best Global Brandsのようなランキングがあれば)長い間積み重ねてきたものが、目に見える形で向上しているのが分かるし、今後も継続してブランド力を高めていきたい」とコメントした。

(編集部:小林 隆)
2012年 10月 3日