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ブリヂストン、免震ゴムの製造ラインおよび試験設備を公開
タイヤ技術が活かされた免震ゴムと免震装置の役割
(2012/12/21 12:57)
世界最大級のタイヤメーカーとして知られるブリヂストンでは、80年以上の歴史で培ったゴム製品やタイヤの技術を地震対策に投入している。それが、建造物の揺れを抑制する免震ゴムだ。同社横浜工場にて報道陣向けに免震ゴムの製造ラインおよび試験設備の公開が行われたので、本稿では免震装置や免震ゴムの役割り、有効性を紹介していきたい。
未曾有の被害をもたらした昨年の東日本大震災。それ以降も頻繁に起きる余震などの影響もあり、地震対策を真剣に検討している人は、以前にも増して多くなっているだろう。建造物の地震対策には、「耐震」「制震」「免震」の3つの対策方法がある。
耐震とは、建物を強度を構造上高めることにより振動に対応することを指す。具体的には、構造物にブレースなどの補強を入れて対策を行う。
続いて制震だが、建物自体に粘りを持たせることで振動を低減する。具体的には、建物にダンパーなどの減衰力を持ったものを入れることになる。
最後の免震は、建物と地面の間を絶縁することで、建物に振動を伝えないという地震対策になる。免震構造に使われているのが、ブリヂストンのゴムで、今回の主題になる免震ゴムそのものとなる。
耐震と制震は建物の損傷を防ぐことができるが、地震による揺れは建物に伝わってしまう。だが、免震は、地面と建物の間に緩衝材を入れることで建物そのものの揺れを防ぐのが最大の特徴になる。建物自体の揺れを抑えることのメリットとして、内部に置かれた物の損傷を防ぐという効果や、揺れ自体を抑制するため、被害を受けた人の恐怖心を和らげる効果もあると言う。
ブリヂストンの免震に対する取り組みは1980年初頭から行われていて、実際に免震ゴムを使った建物が建設されたのが1983年と言う。それ以来30年にわたり、免震ゴムの製造や開発を行っている。
製造工程が公開された横浜工場の一部分も免震ゴムを用いた免震構造になっていた。建物の地下には免震ゴムが配された32本の柱が設置されていて、その上に建物が乗せられている。地震が起きたときには、この免震ゴムが地面からの揺れを受けることで、建物の揺れを抑制するというのが免震構造のメリット。東日本大震災のときも、ガラスが割れることや壁が剥がれることもなかったそうだ。
免震装置に求めれられる機能としては、以下の3つがある。建物の重量を支える「支持機能」、水平方向に柔軟に変形し復元する「バネ機能」、水平方向の揺れを小さくし、かつ収束させる「減衰機能」だ。これらの機能が合わさることで地震の揺れから建物を免震することが可能となる。
この免震装置の要となる免震ゴムとはどのような構造になっているのだろうか。免震ゴムは、積層された鋼板とゴムの組み合わせ部材で、まわりを対候性のある被覆ゴムが覆っている。つまり、すべてがゴムで構成されている訳ではない。なぜ鋼板と積層するかというと、ゴムだけだとたわむ量が多いので、重たい構造物が上に乗ったときに上下方向のたわみに弱くなる。鋼板を間に入れることで、ゴムのたわみが減り潰れにくくなることで上下方向の入力に強くなると言う。
免震ゴムには、数種類のタイプがあり、建築構造や地盤によって設計者が最適なものを選ぶのが一般的だと言う。ゴム自体に減衰力を持った「高減衰ゴム系積層ゴム」やゴム自体に減衰力を持たない「天然ゴム系積層ゴム」、センターに減衰特性を持つ鉛プラグを入れた「鉛プラグ挿入型積層ゴム」などがある。ブリヂストンでは、上記のすべての免震用積層ゴムをラインアップするので、用途に応じた対応ができるとしている。
奇しくも大震災により、クローズアップされることになった免震装置は、現在多くの構造物で取り入れられている。マンションやオフィスに代表される高層建築のほかに、庁舎や病院、防災センター、歴史的建造物など。具体的な建造物として、東京駅丸の内駅舎や大阪市中央公会堂、日本橋三越本店の名前が挙げられた。
ブリヂストンは、今後とも免震ゴムの研究開発や生産に力を入れていくことはもちろん、免震、耐震、制震の違いといった地震対策への啓蒙活動も積極的に行っていくと言う。