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NEXCO中日本、笹子トンネル工事現場を公開

2月下旬までに1万1000枚の天井板を撤去、換気方式を変更して開通

笹子トンネル上り線入口(甲府側)
2013年1月15日公開

当日は前日の大雪で笹子トンネルの迂回路となる中央道富士吉田線や東富士五湖道路などが通行止めとなり、中央道も通行止めとなったため、国道20号に交通が集中。さらに雪による事故が重なり、20号の勝沼から大月までは大渋滞となった

 NEXCO中日本(中日本高速道路)は1月15日、中央高速道路 笹子トンネル上り線の復旧工事現場を報道関係者に公開した。

 笹子トンネル上り線では、2012年12月2日に天井板が崩落する事故が発生、上り 大月JCT(ジャンクション)~一宮御坂IC(インターチェンジ)、下り 大月JCT~勝沼ICが通行止めとなった。

 その後、下り線の天井板を撤去し、12月29日に下り線のみを対面通行として暫定開通。上り線は2013年2月下旬の開通を目指し、天井板の撤去と開通へ向けた作業が進められている。

天井板を撤去して換気方式を変更

 公開されたのは、上り線の甲府側(東京と反対側)の工事現場。1月11日に開始された天井の撤去作業は甲府側と東京側の双方の入口から進められており、15日現在、甲府側は入口から260mまで進んでいる。工事は24時間行われており、2交代で1日あたりのべ約400人が携わっている。

 笹子トンネルの高さは最高部で10m。天井板は路面から4.7mの高さに置かれており、その上の空間は隔壁で仕切られ、換気路として使われていた。

 進行方向右側(追い越し車線側)が送気路、左側(走行車線側)が排気路で、トンネル外からの空気は送気路を通り、トンネル内壁の外側を伝って路面横の送気口から走路に送り込まれた。排気は走行車線側天井の排気口から排気路に吸い込まれ、トンネルの外に排出される仕組みだった。これを横流換気方式と言う。

 この天井板と隔壁を取り払い、東京側の天井に6機の換気用ジェットファンを取り付けることで、トンネルの出口から入口へ空気を流す縦流換気方式に切り替える。縦流方式は横流に比べ換気能力が劣るが、笹子トンネル建設当時よりもクルマの排出ガスが減っているため、縦流換気でも十分になったと言う。

 換気方式の切り替えとあわせて、内壁で剥落しそうな部分を取り除き、浸透性接着剤を入れることで補強する工事も行う。

 2月上旬までに天井板を撤去し、その後、換気設備などの設置と剥落対策を行って、2月下旬に開通させる目標としている。

工事は上り線入口から260mまで進んでいた
事故前の笹子トンネルの構造。天井板の上に隔壁があり、送気路と排気路が分かれていた。トンネル外からの空気は送気路を通ってトンネル内に導かれ、排気ガスは排気路からトンネル外に排出される仕組み
路面近くの送気口
上り線入口付近。すでに天井板と隔壁は撤去されている
入口から260mの工事現場。画面中央が撤去されようとしている天井板と隔壁で、その下を台車が支えている
天井板と隔壁部分。天井板に作業員が乗って作業している
天井板と隔壁を外した後の、笹子トンネルの壁。左が排気路、右が送気路。送気路はコンクリートの色が見えるのに対し、排気路は排気ガスで黒くなっている

1万1000枚の天井板・隔壁を運び出す

 現在進められている撤去作業は、まず長さ24mの台車2台(合計48m)をトンネル内に入れ、台車のジャッキで天井板を支える。その後、天井板とその上の隔壁をコンクリートカッターやガスバーナーで切断し、台車に乗せて、トンネルの外へ運び出す。それから、トンネルの外のヤードで、重機で天井板と隔壁を解体する。

 天井板と隔壁の1枚あたりの大きさは、送気側が5010×1195×80mm(全長×全幅×全高)、排気側が5010×1195×90mm、隔壁が530×1100×100mm。重さはそれぞれ1.16t、1.38t、1.448tある。これを約40枚、台車で運び出すわけだ。笹子トンネル上り線全体の天井板と隔壁は合計で1万1000枚あり、これを甲府側と東京側から順次撤去していく。

天井板と隔壁の撤去の手順。台車で天井板と隔壁を支え、天井板の左右両端と隔壁上のボルトを切断し、台車でトンネルの外に運び出す
天井板と隔壁を支え、外に運び出す台車。長さ24mの台車を2両使用
上り線入口(甲府側)のすぐ外に設けられた解体ヤード。画面左のヤードに天井板と隔壁を乗せ、奥に見える重機で解体する。この作業は天候に左右され、工事の進捗に影響を与える
隔壁の上を切断しているところ
天井板の端を切断しているところ
切断作業に使うガスボンベを乗せた車両が何台かいた
隔壁を撤去した後の天井。中央の2列の黒い丸が隔壁を止めていたボルト。ボルトの間隔は約60cmで、16本のボルトで天井板2枚と隔壁1枚を吊るしていた。ボルトを抜くと壁が弱くなるため、ボルトを切断して埋まっている部分は残してある。残ったボルトが落ちてこないように、接着剤などで止める
天井板は端の部分を残して切断されている。端の部分はトンネル内の構造物に乗っており、落ちないように写真中央上部に見えるワイヤで吊るされているが、これは開通前に撤去される
天井板を外した壁には、剥落防止処理などすべき場所が書かれている
記者が持っていた気温計は3度を示していた。息は白くなり、素手はかじかむ
夜を徹して作業は続けられる

(編集部:田中真一郎)