ニュース

NEXCO中日本、安全性向上のための3カ年計画を策定

恵那山トンネルの天井板も撤去へ

会見するNEXCO中日本の金子社長
2013年2月1日発表

 NEXCO中日本(中日本高速道路)は1日、笹子トンネルの天井板落下事故を受け、安全性向上のために3カ年計画を策定すると発表した。安全管理体制やプロセスの見直しから、人材育成、企業文化の再構築まで踏み込んだものとなる。

恵那山トンネルの天井板を撤去、時期は未定

 また、すぐに実行できる安全性向上策として、笹子トンネルと同様の構造を持つ恵那山トンネルを、笹子トンネル同様に天井板を撤去し、換気方式を変更する。同トンネルは緊急点検や監視強化により安全を確認したとしており、天井板撤去は2014年度の着工が計画されていたが、利用者の不安を払拭するために、撤去を前倒しして実行する。

 恵那山トンネルで全面に天井板があるのは下り線のみだが、笹子トンネルの約2倍の長さがあるため、1カ月程度の通行止めが見込まれる。周辺への影響が大きいため、関係機関との協議を経て、具体的な工事の方法や時期を決める。

 また、現在実施中の、全トンネル内の付属物(標識など)の緊急点検と不具合補修は、当初計画を前倒しして2月末に完了する。さらに、天井板を持つトンネルは、当面の対策として監視体制を強化し、対応方針を個々に決定していく。

 なお笹子トンネルの開通前倒しについては、下り線での工事の実績、上り線が下り線よりも施工環境が厳しいことなどから、2月末まで工期がかかると予測していたが、作業員の増強や作業の習熟などにより、8日開通が可能になったとしている。

安全性向上に3カ年計画

 同社は1日、本社で会見を開き、金子剛一社長(非常対策本部 本部長)らが安全性向上策について説明した。

 笹子トンネルの事故原因は国土交通省の事故調査委員会などで審議中だが、「“これが事故原因だ”と、すべて分かるまで待つのはいかがなものか。今から手の打てるものは打つ」(金子社長)との考えから、安全性向上策を打ち出した。

 これによると、同社は「安全」を経営理念の1つに掲げ、社員も「安全に関わる仕事に従事している」ことを意識してきたものの、安全を優先することが日常に埋没し、意識も自分の担当業務の範囲内のみにとどまる傾向があったなど、企業風土・文化の問題があったとしている。

 また、点検・補修の業務プロセスが、構造物の経年劣化に対して十分に機能していなかったこと、点検・補修技術やノウハウの承継がシステム化されていなかったこと、潜在的な問題点を把握したり解決したりするための組織横断的な体制がなかったこと、社外から情報収集し、業務に活かす体制がなかったこと、安全に関する教育に体系的なカリキュラムがなかったこと、などを問題点として挙げている。

 これらを踏まえ、「安全への意識改革」「構造物の経年劣化に対応した業務プロセスの見直し」「安全管理体制の確立」「体系化された安全教育を含む人材育成」を4本の柱とした、安全性向上3カ年計画をこれから策定し、2013年度から実施する。

 また、外部有識者による検討委員会を早急に設置し、計画について諮問するほか、事故調査委員会での審議結果も計画に反映していくとしている。

 なお金子社長は自身の進退について、「笹子トンネル事故の遺族への対応、安全性向上の取組み、恵那山トンネルの天井板撤去などに全力を尽くす責任がある」と述べた。

(編集部:田中真一郎)