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ブリヂストン、「断トツの低燃費を実現した」新コンセプトタイヤ説明会
狭幅・大径・高内圧。「近々に装着車両が登場」
(2013/3/6 00:00)
ブリヂストンは3月5日、次世代の新カテゴリー低燃費タイヤを謳う「ラージ&ナローコンセプト(LNC)タイヤ」の記者発表会を都内で開催。発表会には同社のタイヤ研究本部長である坂野真人氏が出席し、概要を説明した。
今回発表されたLNCタイヤは、3月5日(現地時間)に開催したジュネーブモーターショーで発表されたもの。これまでのタイヤと大きく異なり、タイヤ幅を狭幅化、タイヤ外径を大径化するとともに、空気圧を高内圧化したことが大きな特徴となっており、クルマの燃費向上を目的に開発された。その完成度について「断トツの低燃費を実現する」としており、最終的には同社の低燃費タイヤ「ECOPIA」ブランドの新製品として、早期の実用化を目指している。ターゲット車種はエコカーとしている。
一般的に、燃費計測は日本ではJC08モードを、欧州ではEUDCモードが使われている。JC08モードでは街中の加減速を意識した設定となっていることから、燃費改善に寄与する割合は車両質量が54%、タイヤの転がり抵抗が23%、車両の空気抵抗が15%、その他が8%となっている。一方EUDCモードでは高速走行が増える(加減速が減る)ため、車両質量が33%、タイヤの転がり抵抗が35%、車両の空気抵抗が26%、その他が6%という割合になり、「従来のエコタイヤでは転がり抵抗の低減を主にした取り組みが行われてきたが、これに車両の空気抵抗低減を加え、合わせ技で断トツの低燃費を達成しようという取り組みになる」と、坂野氏はタイヤ幅を狭幅化した背景を語る。
そもそもタイヤの転がり抵抗は、タイヤが回転しながら地面に接地した部分のゴムが圧縮し、そこにひずみエネルギーが発生するために生まれる。そのひずみエネルギーがどこで生まれているのかを見たところ、約60%がトレッドとベルトで占めると言う。そのため、従来のエコタイヤ(エコピア)ではトレッドゴムの低ロス化と軽量化によって転がり抵抗の低減を図ってきたが、LNCタイヤではこれらに加えて狭幅・大径・高内圧の相乗効果によって変形を抑制させた。
このことについて、坂野氏は「タイヤの外径を大きくするとタイヤが描く弧が(従来の小径タイヤと比べ)直線に近くなり、接地した際のタイヤの変形が少なくなる。さらに空気圧を高くすることで変形そのものを少なくする。それがLNCタイヤのコンセプト」と語る。
また、175/65 R15サイズのエコタイヤと155/55 R19サイズのLNCタイヤを比べた場合、どちらもタイヤ空気圧を高めていくと転がり抵抗が落ちていくことが分かっているが、「同じように空気圧を高めていくと、LNCタイヤの方がより転がり抵抗がよくなるという傾向を発見した」(坂野氏)。例えば、どちらのタイヤも320kPaまで空気圧を高めた場合、175/65 R15サイズのエコタイヤでは約14%転がり抵抗が下がるところ、LNCタイヤでは24%下がった。さらに専用の構造やパターン、ゴムなどといった最適化技術によって30%まで低減させることが可能になったと言う。これらに加え、タイヤ幅を細くする(ここでの例は205から155)だけで、60km/h走行時でのタイヤ転がり抵抗は4.5%減に相当することが明らかになっており、「先ほどの30%と合わせて計35%の転がり抵抗減になる。これは国内のJC08モードに換算すると5%ほどの燃費改善にあたり、実際にお客様が体感できる効果に相当するのではないか」と坂野氏は自信を覗かせる。
ウェットグリップについては、専用パターンとトレッドゴムにより、従来のエコタイヤ(エコピア:175/65 R15)と比べてLNCタイヤ(155/55 R19)は旋回性能が5%、制動性能は8%向上したとしており、従来タイヤ以上のウェットグリップ性能を確保したと言う。
今後のLNCタイヤの展開についてだが、外径が大きくなることもあり、まずは新車装着から導入することが決まっている。「このタイヤを世に出すためには自動車メーカーの協力は不可欠。長年の開発(約5年)の中で複数の自動車メーカー(海外メーカー含む)に提案させていただいており、近々このタイヤを装着したクルマが登場する。それをきっかけに、私どもとしてはカーメーカーとの共同開発をさらに推進していき、適応製品を拡大させていきたい」と、坂野氏は今後の抱負を述べた。
なお、高い空気圧によって乗り心地やロードノイズといったデメリットがあるものの、これらは自動車メーカーとの共同開発によってクリアしているとのこと。また、LNCタイヤを装着するには専用ホイールが必要になる。