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ダッソー、企業向けイベント「3DEXPERIENCE Customer FORUM」を開催

3DEXPERIENCE Customer FORUM
2013年6月4日~5日開催

 ダッソー・システムズは、企業向けイベント「3DEXPERIENCE Customer FORUM」を6月4日~5日の2日間開催した。会場は東京 お台場のホテル日航東京。

 本イベントは、現在同社が自動車や航空機など12の業種に展開している「3Dエクスペリエンス・プラットフォーム」の採用企業などによる事業者向けフォーラム。「3Dエクスペリエンス・プラットフォーム」とは3Dモデリングや、コンテンツ/シミュレーション、ソーシャル、インフォメーション・インテリジェンスの機能を持つアプリケーション群により構成される製造業向けの開発プラットフォームのこと。

3Dエクスペリエンス・プラットフォーム
3Dエクスペリエンス・プラットフォームを構成するアプリケーションと同社がサポートしている12業種
3Dデータを使ってシミュレーションや情報共有などを行う
ダッソー・システムズ 代表取締役社長 鍜治屋清二氏

 これらは、3Dで視覚的に再現された製品情報をデザイナーや設計者、技術者だけでなくマーケティングマネージャーや消費者とも情報を共有可能にするもの。3Dモデルによる開発だけでなく、それを用いた物理的なシミュレート、たとえばブレーキを踏んだ場合の車両の挙動や、自動車に実際に人間が乗り込む際の人間の動き、車両組立時のパーツの組み込み方法などもすべて統合されたプラットフォーム上で再現でき、それらをすぐに情報共有が可能になるソーシャル機能を備えている。単に図面や仕様書を見るだけでなく、実際に3D映像で「経験」することで製品理解を深め、スムーズにプロジェクトを進めよう、というものだ。

 開催に先立った記者会見ではまず、ダッソー・システムズ 代表取締役社長 鍜治屋清二氏が挨拶した。鍜治屋氏は日本の価値創造力は依然として高いレベルにあると切り出し、使い手や最終消費者を意識した物作り志向は日本人特有の優れた資質であるとした。同社の提供する「3Dエクスペリエンス・プラットフォーム」はこうした、日本の物作りを支援するものでもあると説明した。

仏ダッソー・システムズ社長兼最高経営責任者 ベルナール・シャーレス氏

 続いて、このイベントのために来日した仏ダッソー・システムズ社長兼最高経営責任者である、ベルナール・シャーレス氏が同社の現況などについて解説した。

 ダッソー・システムズの3Dエクスペリエンス・プラットフォームは2012年度中に2万の新規顧客を獲得。ユーザーも1000万人に達し、これは製造業向けの高度なアプリケーションとしては重要な数字であると言う。収益も過去10年成長を続けており、競合他社と争う市場はダイナミックに変化していく中で、複合年間成長率は14%を維持し続けているとする。

 同社は、米国の経済誌「Forbs」が選んだ世界トップ100の企業に40位でランクイン。これはIT系企業ではGoogle、Appleに次ぐ3位。「我々のソリューションがいかに迅速に採用されてきたかを示す物」と語った。

 また、製造ソフトウェアプロバイダーの大手である「アプリソ」を買収することを6月4日付けで発表。買収金額は2億500万ドルで7月には買収が完了する見込み。これによりさらなる顧客拡大を目指すという。

仏ダッソー・システムズ エグゼクティブ・バイス・プレジデント モニカ・メンギニ氏

 引き続き、仏ダッソー・システムズ エグゼクティブ・バイス・プレジデントのモニカ・メンギニ氏が、「経験経済」の概念を交えながら3Dエクスペリエンス・プラットフォームの意義について説明した。

 経験経済とは、物を作りただ販売するのではなく、いかにユーザーが求める利便性を考え付加価値を追加して商品を差別化するか、という考え方で、すべての企業が抱える問題と言う。製品が競争に勝ち抜くには、他社とどう差を付けるかが重要な課題となる。すべての業界は経験経済に入っていると言う。

 たとえば自動車業界では、単にクルマを作るだけでは差別化は図れない。人を理解してそれをクルマ作りに活かすことが重要であるとする。一例としてフォードの「エスケープ」を挙げた。エスケープには、キーを所持している人間がリアハッチの下に足をかざすと、自動的にリアハッチが開く機能が搭載されている。これは荷物を両手で抱えていても、足は自由に動かせることから発想を得た機能で、これこそがユーザー視点に立った付加価値であり、経験経済の根幹をなす考え方だとした。

会場では2人乗りのEV(電気自動車)を3人乗りに変更する過程をデモした
同クラスの競合車両の情報と比較しているところ
3人乗りに変更するためシートを追加
実際に人が乗り込む様子もシミュレートできる
パーツごとにコスト管理をしているところ
実際に街中を走行するシミュレーションも可能

 メンギニ氏の説明を受けてシャーレス氏は、「これは車両機能ではなく車両エクスペリエンスである」と補足。3Dエクスペリエンス・プラットフォームはそうした開発を支援するものであると説明した。クルマの価格が高くなりすぎているのは、ソフトウェア、ハードウェア、メカニカルなど全ての専門領域を統合するのにあまりにもコストが掛かるからであり、3Dエクスペリエンス・プラットフォームは製品設計からシミュレーションまで全てを統合済みで、最適な方法でクルマを設計できるとした。

(清宮信志)