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トヨタ、世界の道を模したテストコースを備える「多治見サービスセンター」を竣工

車両修理技術の研究・開発や、サービススタッフの人材育成・技術力を強化

多治見サービスセンター
2013年7月22日開催

4階建ての研修棟

 トヨタ自動車は7月22日、「多治見サービスセンター」(岐阜県多治見市)の竣工式を実施した。

 多治見サービスセンターを作った理由は、購入後のユーザーをサポートするアフターサービスの充実がこれまで以上に必要なため。中でもユーザーと直接接するサービススタッフの対応力や技術力は、「ユーザーのトヨタに対する信頼や満足度に直結する重要な要素」であり、そのことからサービススタッフの人材育成と技術力向上に向けて積極的に取り組んでいると言う。

 多治見サービスセンターは、国内外の販売店サービススタッフの育成や、車両修理技術の研究・開発を目的に新設された施設で、愛知県日進市にある日進研修センターの拡充を目的に作られた。敷地面積は18.7万m2で、4階建ての研修棟、1.3kmの周回路に加えて国内外の路面を再現した特殊路面(ベルジアン路、波状路など)からなる「走行確認路」を備える。

 この走行確認路では、研修受講者が新技術や車両の特性をユーザーの使用環境を踏まえて実走行で体得するとともに、正常な車両と不具合のある車両の挙動の違いを体感することで、診断力・技術力の向上に活用する。また、販売店での診断や対応が難しい修理案件が発生した際にデータと実走行で再現し、修理方法を検討するといったサービス技術の研究・開発にも活かしていくと言う。

 今後は国内外から受け入れる受講者数も年間2600名から4800名に拡大し、将来的にサービス技術の研究・開発機能も移転することで、サービス技術に関するグローバルな競争力強化の基盤を作るとしている。

国内外の路面を再現した特殊路面からなる「走行確認路」

 以下、竣工式に出席した豊田章男社長のコメント。

 「多治見サービスセンター」は、岐阜県下では、トヨタとして初めての事業所となります。ここに至るまでには、地域の皆様に多くのサポートや後押しをいただいてまいりました。多大なご尽力に感謝申し上げます。

 さて、私どもには、メーカーはもとより、販売店の皆様をはじめオールトヨタで大切にしている想いがございます。お客様のお手元にクルマが届いたあとの「アフターサービス」の場面を取り上げた“創業時のひとつのエピソード”がそれを物語っています。

 1935年、私どもは、はじめて「G1型トラック」というクルマを市販化いたしました。しかしながら当時は故障の連続であり、路上で動かなくなるといったことも少なくありませんでした。創業者である豊田喜一郎は、その知らせを受けるたび、現場に駆けつけ、クルマの下にもぐって修理をし、お客様への謝罪を繰り返しました。そして、不良品を持ち帰り、徹底的に原因を調べ、改良を加えて、次のものづくりに生かしていきました。

 「お客様第一」「品質第一」そして「現地現物」。これらの思いは創業時から変わらぬ、そして、これからも大切に受け継ぐべき私どもの原点であると思っております。

 私が社長に就任し4 年が経ちますが、その中で、私どもは数多くの困難に直面してまいりました。そして、それらの経験を通じて、トヨタ自動車は、本当に多くのことを学ばせていただきました。中でもお客様に多大なご迷惑とご心配をおかけ致しました「一連の品質問題」では、私自身、そして、社員全員が「品質の大切さ」をあらためて痛感し、「トヨタという会社はお客様の安全と安心を一番に考える会社」でいなければならないと、強く心に刻みました。

 当時、アクセルペダルの問題に加えて、「プリウスのブレーキに不具合」とのご指摘をいただき、そうした報道もたくさん出ました。実際に調べてみますと、限られた条件のもとで、前のモデルに対してブレーキのタイミングが時間にして0.06秒、距離にして70cm遅れるというものでありました。

 私どものほうで「安全」と思ったものでも、違和感を感じるお客様がいらっしゃるのでは「安全・安心」とは言えない。お客様の期待値が一層高く、多様になってきているなか、実際にお客様がどのように感じられるか、「お客様目線」で、「現地現物」で確かめ、しっかりとコミュニケーションしていくことの大切さをあらためて学びました。

 また当時、しばらく経ってから報道関係の皆様に、「プリウス」にお乗りいただく機会を持たせていただき、現象をご理解いただくことができたのですが、大切にしてきた「現地現物」をなぜすぐに実行できなかったのか…大いに反省し、こうした現地現物のコミュニケーションの重要性を強く認識した次第であります。

 こうした、「創業時からの原点」、「品質問題からの学び」を生かす上で、ここ「多治見サービスセンター」の果たす役割は大変大きいと考えております。

 クルマはお客様のもとに届けられた後、あらゆる道を走ります。一台として同じ使われ方はなく、開発段階では想定されなかったことも、お客様の現場では起こってまいります。絶対に故障しないクルマをつくることは出来ません。

 お客様の現場で起こることに“より迅速に、より正確に”対応していく。そのために、クルマを長くお使いいただくためのメンテナンス技術や、クルマそのものを直す修理技術を高めていく。そしてお客様目線でアプローチし、しっかりとコミュニケーションにつなげていくこと。それが、お客様の安全と安心に向けた、私どもの「サービス」の使命です。

 「多治見サービスセンター」には、世界の特徴ある様々な路面を模した「道」があり、そこで「お客様の現場」を再現します。世界では、様々な環境で、様々なお客様にトヨタ車をお乗りいただいておりますが、それぞれの状況を、まさに「現地現物」で確認することに役立てるとともに、地域・地域に最もふさわしい形でサービススタッフを育成していくことにも取り組んでまいります。

 「お客様の現場に対応していくこと」。これは、メーカーだけでは実現できません。国内販売店をはじめ、世界の第一線で実際にお客様のクルマに接するサービススタッフの方々と我々が、お互い切磋琢磨しあいながら、心をひとつにしていくことで、「もっと安全で安心なモビリティ社会の実現」に近づけていくことができると思っております。

 このセンターにトヨタのサービス技術が集積し、それが、また次の「もっといいクルマづくり」「もっといいサービス」に生かされていく、そしてお客様の笑顔につながっていく。この岐阜の地でも、トヨタは頑張ってまいります。地元の方々をはじめ、関係の皆様方には、今後とも、引き続きのご支援、ご協力をお願い申し上げます。

(編集部:小林 隆)