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【6 Hours of Fuji】FIA 世界耐久選手権 第6戦「富士6時間耐久レース」がスタート

12時20分現在、天候悪化による赤旗でレースは中断

あいにくの雨でセーフティカーの先導のままスタート
2013年10月20日決勝

 スポーツプロトタイプカーおよびル・マン規定のGTカー(LMGTE)による耐久レースとなるFIA世界耐久選手権の第6戦「富士6時間耐久レース」が、10月18日~20日の3日間に渡り、静岡県小山町にある富士スピードウェイで開催されている。本日はその決勝日を迎え、11時にスタートした。天候はあいにくの雨、セーフティカーの先導のままスタートが切られた。その後雨は強くなる一方で、スタートより23分後に赤旗でレースは一時中断。その後も天候が回復せず、現在(12時20分)も中断が続いている。

 ポールポジションからスタートしたのは、アウディR18 e-tron クワトロ(1号車)を操るアンドレ・ロッテラー/ブノワ・トレルイエ/マルセル・ファスラー組。次いで、昨年の富士6時間耐久レースの覇者トヨタTS030ハイブリッド(7号車)を操る中嶋一貴/アレックス・ブルツ/ニコラ・ラピエール組がフロントローからスタートしており、昨年同様にアウディとトヨタによるマッチレースになることが予想されている。

 また、今年はスクーデリア・フェラーリに所属しているF1ドライバー小林可夢偉選手も、フェラーリがサポートするAFコルセチームからLMGTE Proカテゴリーに参戦しており、詰めかけたファンから熱い声援を送られながら、昨年3位表彰台を獲得した鈴鹿での日本GP以来となる日本でのレースに挑むことになる。

ル・マン24時間を頂点とするWEC、トップカテゴリーはLMP1に

 FIA 世界耐久選手権(通称WEC:World Endurance Championshipの略称)は、F1、WTCC、WRCなどと並んでFIA(世界自動車連盟)の冠がかぶせられた、世界規模の4輪自動車レースで、スポーツプロトタイプカーおよびGTカーで争われる選手権となっている。スポーツプロトタイプカーとは、自動車メーカーなどがワンオフで作成する純レーシングカー。現在のスポーツプロトタイプカーは、LMP(ル・マンプロトタイプ)の名称でも知られており、基本的には6月にフランスで行われるル・マン24時間で戦うことをターゲットにしたレーシングカーとなっている。

 ル・マン24時間は、言うまでもなく世界3大レース(あと2つはF1モナコGPとインディ500)の1つで、1年に1度行われるル・マン24時間で優勝することは、自動車メーカーにとって非常に栄誉のあることだとされている。このため、車両規定などを決めているのは、実質的にはル・マン24時間レースを運営するACO(フランスのJAFのような組織)で、ル・マン24時間はWECの1レースではあるが、どちらかと言えばル・マン24時間があるので、WECが成り立っているというのが実態だ。その中でも、富士6時間耐久レースは、1980年代~1990年代の初頭に行われていたWEC(およびその後継となるWSPC)の毎年恒例のレースとして開催されていた歴史もあり、ル・マンに次ぐ格式を持っているレースだとされている伝統の1戦だ。

 現在のWECには4つのカテゴリーがあり、それぞれのカテゴリーの中でレースが戦われている。具体的には、LMP1、LMP2、LMGTE Pro、LMGTE Amの4つとなる。LMP1はトップカテゴリーで、アウディ、トヨタの2大ワークスチームが参戦している。総合優勝はこのLMP1の車両により争われる。

 LMP2はスポーツプロトタイプだが、プライベートチーム向けのカテゴリーとなる。このため、市販されているスポーツプロトタイプカーやエンジンなどを利用する必要があるが、コストの上限が定められており、いわゆるジェントルマンドライバーと言われる裕福なアマチュアドライバーが、プロのドライバーと組んで参戦することが可能になるような仕組みがとられている。

 LMGTEはル・マン24時間向けに規定されたGTカーで、耐久レース仕様のGTカーという扱いになっている。最近GTカーの主流になっているFIA-GT3規定とは異なるル・マン向けの独自仕様となっている。このLMGTEは、ProクラスとAmクラスの2つが用意されており、前者にはプロドライバーが、後者は1人はプロレーサーでもよいが残りはアマチュアドライバーである必要があるなど、こちらもジェントルマンドライバーが参戦しやすいように配慮されている。

アウディ、トヨタがハイブリッドカーを開発してLMP1に参戦

 トップカテゴリーとなるLMP1は、現在アウディ、トヨタという日独の自動車メーカーが参戦して激しくしのぎを削っている。なお、来年からはドイツのポルシェも参戦する意向を表明しており、来年以降は3社が激しく争うことでより注目度が上がることになりそうだ。

アウディR18 e-tron クワトロ1号車と2号車

 LMP1が特徴的なのは、世界規模のトップカテゴリーとしては、いち早く積極的にハイブリッドシステムの実装に取り組んできたことだ。LMP1では、モーターやフライホール式のハイブリッドパワーユニットの装着を認めており、アウディはウィリアムズF1チームが開発したフライホイール式のハイブリッドシステムを前輪の駆動に利用できるようになっており、その場合は4WDの車両として動くことになる。このため、アウディの車名はR18 e-tron クワトロと4輪駆動を意味するクアトロ(イタリア語で4のこと)がつけられている。これに対してトヨタは自社で開発している市販車用のハイブリッドシステムをレーシングカーに発展させたシステムを装着しており、レースをハイブリッドシステムの走る実験室として位置づけて参戦している。

 ユニークなのは、エネルギー回生(ブレーキの熱を電力に転換すること)はサーキットのすべてで行える訳ではなく、強力なGが発生するコーナーだけで回生できるようになっている。富士スピードウェイでは、1コーナー、アドバンコーナー、ダンロップコーナー、パナソニックコーナー(最終コーナー)でだけ回生することが可能になっており、TVなどで観戦する場合にも、アウディやトヨタがこれらのコーナーでどのような挙動を見せているのかは注目点の1つと言えるだろう。

 なお、タイヤは、LMP1、LMGTEに関してはミシュランのワンメイクになっているが、LMP2に関してはミシュランとダンロップの2メーカーが供給しており、その順位を争っている。タイヤに注目して見るのであれば、LMP2クラスが要注目だろう。

トヨタTS030ハイブリッド 7号車と8号車

久々の日本でのレースとなる小林可夢偉選手の活躍にも期待

 今回の富士6時間耐久レースのもう1つの見どころは、多数走る日本人のドライバーだろう。トップカテゴリーのLMP1には、トヨタのトヨタTS030ハイブリッド(7号車)を操る中嶋一貴選手だけとなるが、LMP2にはKCMGから2007/2008年のフォーミュラ・ニッポン王者松田次生選手が小泉洋史選手、リチャード・ブラッドレー選手とともにKCMGチームから(47号車)モーガン・ニッサンで参戦している。また、SUPER GTでメルセデス・ベンツSLSをGT300クラスで走らせるゲイナーチームがザイテック・ニッサン(27号車)を走らせ、ドライバーは平中克幸選手とビヨン・ビルドハイム選手のレギュラー2人と、植田正幸選手が務める。このほか、ル・マン24時間を走った中野信治選手、井原慶子選手もLMP2クラスで参戦しており、要注目だ。

 また、昨年の日本GPで久々の日本人表彰台を実現して盛り上げてくれた小林可夢偉選手が、フェラーリのワークスチームとなるAFコルセからフェラーリ458イタリア(71号車)でLMGTE Proに参戦している。同チームは前戦のアメリカ戦で、フェラーリ458イタリア(51号車)がクラス優勝を成し遂げており、この富士6時間でもよい結果が期待されている。なお、小林選手のフェラーリ458イタリア(71号車)は昨日の予選をマシントラブルで走れておらず、後方からの追い上げとなる。

 レースは6時間後の17時にゴールすることが予定されており、テレビではBSのスカパー!などで放送されているJ-SPORTS3で現在生中継されている。

平中克幸選手、ビヨン・ビルドハイム選手、植田正幸選手がドライバーを務めるザイテック・ニッサン(27号車)
中野信治選手、トー・グレイブス選手、ジェームス・ウォーカー選手がドライバーを務めるオレカ03・ニッサン(25号車)
前戦のアメリカ戦でクラス優勝を遂げたAFコルセのフェラーリ458イタリア(51号車)。同チームの小林可夢偉選手は71号車で参加する

(笠原一輝/Photo:奥川浩彦)