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ダンロップの新世代SUV用スタッドレス「ウインター マックス SJ8」の技術を見る
ウインター マックステクノロジーをSUV用タイヤに展開
(2013/11/29 15:47)
ダンロップ(住友ゴム工業)が、2012-2013年シーズンに投入した乗用車用新スタッドレスタイヤ「WINTER MAXX (ウインター マックス)」。新材料開発技術「4D NANO DESIGN(フォーディー ナノ デザイン)」を活用し、ナノ領域での柔軟性とマクロ領域での剛性を両立した「ナノフィットゴム」を開発。非対称となった新パターンの採用などもあり、前世代の「DSX-2」と比べ、アイスブレーキ性能11%向上、ウェットブレーキ性能15%向上、耐摩耗性能48%向上と、進化したスタッドレスタイヤとして登場した。
一般的に「○○%向上」などは、2桁の性能差があると体感できると言われており、逆に考えると2桁の性能差を実現できるよう、日夜開発を行っているわけだ。このウインター マックスでとくに注目したいのは、耐摩耗性能48%向上という数値で、これはダンロップのスタッドレスタイヤが、次の世代に入ったことを示している。
それらウインター マックステクノロジーをSUV用スタッドレスタイヤに展開したのが「ウインター マックス SJ8(エスジェイエイト)」。すでにテストコースでの試乗レビュー(http://car.watch.impress.co.jp/docs/review/20130930_616973.html)はお届けしているので、今回はSJ8に採用された技術に関して紹介する。
アイスブレーキ性能で11%向上したSJ8
ウインター マックス SJ8は、高性能SUVをターゲットにしたスタッドレスタイヤで、「GRANDTREK SJ7」の後継商品にあたる。後継商品とはいえ、「MAXXシャープエッジ」「ナノフィットゴム」などウインター マックスのコアテクノロジを投入。SUV専用トレッドパターンを採用することで、ウインター マックスシリーズの一員として誕生した。
前世代との性能差は、アイスブレーキ性能で11%向上、耐摩耗性能で7%向上。ドライの操縦安定性で12%向上したほか、雪上性能も優れるという。
MAXXシャープエッジとは、タイヤに刻まれたジグザグのサイプの構造が、25%薄くシャープなミウラ折り形状になったことを示し、これによりサイプのエッジ成分が9%増加。より多くのエッジで氷を引っかくようになり、アイス性能が向上したほか、サイプの倒れ込みが抑制されたことで、耐摩耗性能の向上にもつながっている。ナノフィットゴムは、ゴム内にあるシリカ分子の結びつきを改善してマクロ領域の剛性を確保しつつ、シリカまわりの軟化剤によってナノ領域のアイス路面への接地性を改善。これらも、アイス性能と耐摩耗性能の改善につながっている。
さらに、トレッドパターンの変更により、ランド比をSJ7より5ポイント引き上げ、アイス路面との接地面積を増大。一般的にアイス性能は接地面積が広い方がよくなることから、この点もアイス性能向上の理由だ。
但し、ランド比が上がる=グルーブ(溝)比が下がり、排水性・排シャーベット性能の低下となるため、トレッドパターンを改善。回転方向指定の方向性パターンという要素は同じながら、中央部に配したダブルイナズマグルーブによって排水性を向上させ、横方向の溝(ラグ溝)に関してもより方向性を持つものへとしている。これらによって、排水性・排シャーベット性を改善し、結果として旧モデルよりも優れたウェット性能を獲得した。
雪上性能に関しては、いかに優れた雪柱剪断力を得るかがポイントとなり、雪面にしっかりパターンを刻む必要がある。これに関しては、セカンドブロックに入ったT字型の溝で、圧雪・新雪に対応。T字型の溝が雪をつかむことで、優れた雪柱を雪面に生成し、優れたグリップ力を得ている。
また、ランド比の向上は、パターン剛性の向上にも寄与。全体のパターン剛性を向上させたほか、ショルダー部の剛性をさらに引き上げることで、重心高が高くなりがちなSUV車のふらつきを抑制する効果を狙っている。
トレッドパターンの改善もあって、各分野の性能を引き上げたウインター マックス SJ8だが、この改善も4Dナノデザインなどによってベースとなる素材の性能がウインター マックスで引き上げられていたことが背景にある。4Dナノデザインは、ダンロップのタイヤラインアップの底上げを着実に行いつつあるようだ。