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トーヨータイヤ、ミニバン用低燃費タイヤ新「トランパス」シリーズ発表会

低燃費ゴムの技術革新で、しっかり感を高めることが可能に

新型ミニバン用タイヤ「トランパス」シリーズ3製品と、東洋ゴム工業 代表取締役社長 信木明氏
2013年12月18日開催

 トーヨータイヤ(東洋ゴム工業)は12月18日、ミニバン用低燃費タイヤ「TRANPATH(トランパス)」シリーズの最新作「トランパス mpZ」を発表。重くなる一方のミニバンに対応するため、最新の低燃費技術を注ぎ込むとともに、タイヤ構造から見直して「しっかり感」を確保した。同様のテクノロジーを用いてLクラスミニバン用の「トランパス Lu」を「トランパス LuII」にモデルチェンジし、軽自動車用の「トランパス LuK」も追加することで、3シリーズのラインアップへと拡充した。

●トランパス mpZ

トランパス mpZ

●トランパス LuII

トランパス LuII

●トランパス LuK

トランパス LuK

 発売日は、トランパス LuIIが2014年1月14日、トランパス mpZが2月14日、トランパス LuKが3月14日と、14(トーヨー)にこだわりつつ3カ月連続で製品投入。トランパスシリーズ全体で年間100万本の販売本数を見込んでいる。

インチアップに対応するタイヤサイズも用意することで、ミニバンユーザーのさまざまな趣向に応えていく

トランパスシリーズはドライバーの不満を解決するタイヤ

東洋ゴム工業 代表取締役社長 信木明氏

 発表当日、都内で行われた発表会に登壇した東洋ゴム工業 代表取締役社長 信木明氏は、トランパスシリーズの開発経緯について語り始めた。

 「当社がミニバンに着目し、開発を始めた当初は、(ミニバンの)車種も少なく、タイヤも一般の汎用タイヤしかありませんでした。常に進化するクルマの使われ方や特徴を見極め、汎用商品では解決できないドライバーの不満を解決する、こうした専用タイヤ発想がその当時当社の中に生まれました。1995年、業界でも初めての専用開発となったミニバン専用タイヤ『トランパス mp』を発売したのであります。以来、次々とラインアップを広げてきたトランパスは、来年20年目を迎えるロングヒット商品となりました」と、独自の着眼点がトランパスシリーズ誕生のきっかけになっていたという。

 「ブームを経て、ファミリーカーとしての市民権を得たミニバンも、昨今では高級化が進む大型ミニバン、ハイブリッドタイプが増加している3列ミニバン、普段使いの感覚で女性にも人気のプチバンなどバラエティが広がっています。一方、軽自動車が新車台数の4割を占めるまで大きな存在となってきました。この中で大きなマーケットを構成するようになったハイトワゴン系、また従来にない室内空間を実現し急拡大を始めたスーパーハイトワゴン系と呼ばれるジャンルでは車高の高さから起こりやすい課題も多々あり、専用タイヤ発想を活かせると考えております」と語り、そのような市場環境が、トランパスシリーズに6代目となるトランパス mpZ、Lクラスミニバン向けのトランパス LuII、軽自動車向けの「トランパス LuK」の3製品を登場させたと説明する。

新トランパスシリーズのキモとなる「スーパーハイターンアップ構造」

東洋ゴム工業 タイヤ技術第一部 商品開発グループ長 水谷保氏

 新トランパスシリーズに投入された技術については、東洋ゴム工業 タイヤ技術第一部 商品開発グループ長の水谷保氏が製品ごとに詳説。165/70 R14 81H~225/45 R18 95Wの全39サイズをラインアップするメイン商品のトランパス mpZは、「家族のための『しっかり』タイヤ」として開発し、「フラつき低減」「しっかり長持ち」「環境性能と安全性能の両立」を実現したという。

 そのために行ったのが、トレッドパターンとタイヤ構造の変更。タイヤパターンでは、前作「トランパス mpF」から、タイヤのトレッド幅をワイド化したほか、アウト側に高剛性のリブを配置。ウェットグリップの進化したコンパウンドを投入できたことから、溝容積を小さくすることでコーナーリングパワーが向上している。

 構造については、サイドウォール部のプライコードの巻き上げを高くして、タイヤの横剛性を向上。これにより、前作のトランパス mpFより、横方向のたわみ量を5%低減している。その結果、レーンチェンジの際のふらつきが減少、摩耗ライフを27%向上させることに成功した。

2014年2月14日発売のトランパス mpZ
mpZは6代目のトランパス
家族のための「しっかり」タイヤとして開発
3つの特徴
スーパーハイターンアップ構造を採用
ふらつきを5%減少
レーンチェンジのシミュレーション
摩耗性能向上のアプローチ
摩耗性能評価
ナノバランステクノロジーが投入されている
振動数による領域の違いに適したゴムを使用
3種類のポリマーを使用している
ポリマーの状態解析結果。右のほうが分散性が高い
性能イメージ。操縦安定性などが向上している
サイズ一覧

 トレッドパターンの変更や、構造設計の変更を可能にしたのが、同社の低燃費タイヤ「ナノエナジー」シリーズで確立したナノバランステクノロジー。この配合技術により、ウェットグリップが高くエネルギーロスの小さいゴムを実現でき、向上した能力の貯金をほかの性能に振り向けることが可能となった。

 ラグジュアリー志向のLクラスミニバン向けのトランパス LuIIは、スーパーハイターンアップ構造などmpZと同様の技術を用い、より静粛性や快適性に配慮したモデル。トレッドパターンが要素となる振動モード解析を行うことで、低周波・高周波のロードノイズを低減するようなトレッドパターンを採用。上質な静粛性、マイルドな乗り心地を実現したという。

Lクラスミニバン向けのトランパス LuIIは、1月14日発売
9年振りにモデルチェンジ。低燃費タイヤとなった
ラグジュアリー志向のミニバンユーザーがターゲット
3つの開発テーマ
振動解析を重視して作られたタイヤ
スーパーハイターンアップ構造を採用
トレッドパターンの位相も数値解析
騒音の低減に成功している
性能イメージ
サイズ一覧

 軽自動車向けのトランパス LuKも、スーパーハイターンアップ構造を採用。Luというシリーズ名から分かるように、ラグジュアリー志向もあり、「ふらつき低減」「お財布に優しいロングライフ性能」「上質な快適性」を3つの特徴としている。とくにロングライフ性能にかかわる偏摩耗抑制では、前作のトランパス mpFと比べ、アウト側のリブを12%拡大することで高剛性化。スーパーハイターンアップ構造と相まって、狙った性能を実現している。

 Luシリーズの末っ子として生まれたタイヤであるため、トレッドパターンもmpZよりはLuIIに近いものがある。サイドウォールに刻まれたロゴも、mpZが凸ロゴに対して、LuIIとLuKが凹ロゴとシリーズとしての統一感を演出。中央付近のブロック列に関しても、アウト側はビベリング加工のように角が削られており、不要な振動の発生や騒音の発生を抑えていると思われる。

軽自動車向けのトランパスLuKは、3製品で最も遅い3月14日の発売日となる
コンセプトは、軽自動車のための「しっかり」タイヤ
3つの製品特徴
スーパーハイターンアップ構造採用
レーンチェンジのシミュレーション
偏摩耗性能を向上
性能イメージ
サイズ一覧

 3製品とも、重心が高めにあるミニバンやトールボーイタイプのクルマで「しっかり感」を得られるよう設計してあり、その上で転がり抵抗性能「A」を実現。エアボリュームが少なく、低燃費とウェットグリップを両立させる設計が難しいタイヤサイズ(mpZの10サイズ、LuKのすべて)はウェットグリップ性能「c」だが、それ以外はすべて「b」を達成した。

LuII、LuKに関してはコミュニティサイトを用意

トーヨータイヤジャパン 常務取締役 営業本部長 植松秀文

 トランパスシリーズの市場展開については、販売を担うトーヨータイヤジャパン 常務取締役 営業本部長 植松秀文が説明。植松氏は2014年1月1日付けでトーヨータイヤジャパンの社長になることがすでに発表されており、トランパスシリーズ販売の責任者となるわけだ。

 今回のトランパスシリーズの狙いが「しっかり感」であることから、タイヤのしっかり感を比較することができるようなツールを店頭に準備。mpFとmpZを推し比べてその違いを実際に体感してもらう。

 また、ラグジュアリー志向のユーザーに向けたLuIIとLuKでは、スペシャルWebサイト(http://toyotires.jp/sp/talu/)を構築。「Team Lu」(http://team-lu.toyotires.jp/)というコミュニティサイトでユーザーとの連携を図っていく。

トランパスmpZの店頭ツール。左に見える2本のタイヤを押し比べて、その剛性感の違いを体感する

 植松氏は、「20年間、『ミニバンには、トランパスがある』と伝え続けきた」と語り、「しっかり走ることは、しっかり愛することだ。」という新トランパスシリーズのキャッチコピーとともに、ミニバン専用タイヤの拡販を図っていく。

(編集部:谷川 潔)