レビュー

【タイヤレビュー】開通直後の圏央道をトーヨータイヤ「トランパス mpZ」で走ってみた

6人乗車想定のミニバン「セレナ」でミニバン専用タイヤを試す

上質な乗り味を持つミニバン専用タイヤ「トランパス mpZ」

ミニバン専用タイヤ「トランパス mpZ」装着の「セレナ」で開通直後の圏央道延伸区間を走ってみた

 6月28日に開通した圏央道(首都圏中央連絡自動車道)の相模原愛川IC(インターチェンジ)~高尾山IC。これで東名高速道路、中央自動車道、関越自動車道が高速道路で結ばれたわけだが、圏央道がこんなにつながるなんて、まだだいぶ先の話だと思っていた。現在は世田谷在住で、実家が富山にある筆者にとっても、ほとんど高速道路のみを使って行き来できるようになったことになる。そんなに頻繁に使うことはないだろうが、つながったと思うだけで気分的にもうれしくなるものだ。

 そんな圏央道の新規開通区間を、これまた走行1000km未満の下ろしたての日産自動車「セレナ」の新車に、トーヨータイヤ(東洋ゴム工業)のミニバン専用タイヤ「トランパス mpZ」を装着して走る機会に恵まれた。

非対称パターンを持つトランパス mpZ。トーヨータイヤの最新ミニバン専用タイヤになる

 トランパス mpZは、タイヤ構造から見直して“しっかり感”を確保したトランパスシリーズ最新作であり、最新の低燃費タイヤ技術も注ぎ込まれている。とくにしっかり感については、スーパーハイターンアップ構造により横方向のたわみを先代モデルより5%低減しており、レーンチェンジ時のふらつきも抑制されているという。今回使ったセレナはハイウェイスターではなくスタンダードモデルで、リアがマルチリンクサスとなる4WD車。このセレナに筆者とカメラマンの2人、さらに体重60kg程度の人が4人加わった場合を想定して約20L(約20kg)の水入りタンクを12個(3個で約60kg、その4倍で約240kg)積むことで合計6人乗車を想定。トランパス mpZのしっかり感を圏央道と箱根を走って試そうという企画だ。

岡本幸一郎、6名乗車想定のセレナで圏央道・箱根とドライブしてきます
セレナの後席はこんな感じ。人が座った状態よりも若干低重心となる。撮影後、水タンクがずれないように詰め物などをしている

 トランパス mpZへのタイヤ交換は5月中旬にイエローハット新青梅田無店で実施。新青梅街道沿いにあり、田無スカイタワーの向かいでもあるため非常に目立つ店舗だ。平日は20時まで営業しているため、便利にタイヤ交換が行えた。作業もてきぱきとしたもので、非対称パターンを持つトランパス mpZのイン/アウトをすぐに判断。瞬時の判断で正しい向きにタイヤを取り付けていた。コツを聞くと、「国産タイヤの場合、タイヤに軽点のマークが打ってあるが、多くの場合アウト側に打ってある」とのこと。それだけで判断しているのではなく、経験によってタイヤの雰囲気でもイン/アウトの判断は可能とのことだった。

トランパス mpZのタイヤパターン。右がアウト側、左がイン側だ。アウト側のブロックは広めの面積を持っており、ミニバンの荷重をしっかり受け止め、コーナリングパワー増大に寄与している
イエローハット新青梅田無店。田無スカイタワーの向かいにあり、車検などにも対応する大規模店舗として知られている
装着したタイヤサイズは、195/65 R15 91H。転がり抵抗性能は「A」、ウェットグリップ性能は「b」のタイヤ。ちなみに標準装着のタイヤの速度記号は「S(180km/h)」なので、「H(210km/h)」となることでタイヤ構造のグレードアップも期待できる
新品状態のトランパス mpZ。タイヤパターン成形時に発生するヒゲもほとんどなく、高度な技術で作られているのが分かる。一手間かけて作られている
標準装着されていたタイヤを取り外し。てきぱきと作業は進む
セレナのフロントサスペンション部。ストラット式
こちらはリアサスペンション。2WDはトーションビームだが、4WDは写真のようにトレーリングアームを使ったマルチリンク。これにより高い接地性を確保している
イエローハット新青梅田無店のスタッフは、タイヤのイン/アウトを瞬時に見極め、タイヤをホイールに組み込んでいた
タイヤバランスを取り、最後は手締めで締め付けトルクを確認。タイヤ交換の所要時間は30分程度

 5月中旬に交換。それから100km程度慣らし走行を行って、圏央道の新開通区間と箱根走行に向かった。まずは都心にある編集部を出発。スタンドでガソリンを満タンにするのとともに空気圧をチェック。その後、首都高速 神田橋入口から都心環状線に入り、せっかくなのであえて外回りをぐるっと走ってみた。首都高の環状線は、曲がりくねっていたり、頻繁に路面の継ぎ目があったりと、なにかと条件は厳しい道なのだが、走ってみた第1印象は、上質な乗り味を実現していることだ。速度抑制のために路面が波状となっているあたりでも、従来モデルは、やや突っ張った印象で跳ね気味だったのに対し、トランパス mpZはその感覚が小さい。

まずはガソリンを満タンに。長距離を走るためでもあるが、なるべくクルマを重くしようとする意図もある
ガソリンスタンドに寄ったなら必ず空気圧はチェックしておこう。規定空気圧にセット

 三宅坂JCT(ジャンクション)で、中央道につながる4号新宿線へ。4号新宿線は、たびたび大きな事故が報じられるほどで、けっこう急なコーナーもあるし、途中にはワインディングのような個所もある。セレナのような背高ミニバンで走るのはやや緊張するところだが、タイヤの剛性が十分に確保されているせいか、ロールが抑えられたように感じられ、安心して走ることができる。縦揺れだけでなく横揺れも少なく、骨太ながらしなやかな感じがする。また、中立からのヨーの立ち上がり方が素直で、操舵に対して一体感があり、しっとりとした接地感もある。このフィーリングは高級乗用車用タイヤに近いものだ。

 メーター読みとなるが、八王子料金所では走行距離が59.2㎞、燃費は途中で12.0km/Lを超えたときもあったが、この時点では11.9km/Lとなった。

高速道路を走行中のセレナ。タイヤの剛性が十分に確保されており、6名乗車相当でも安心して走ることができる。しっとりとした接地感はGOOD!!

高速巡航も快適そのもの

 八王子料金所を越えると、いよいよ圏央道と接続する八王子JCT。この八王子JCTから圏央道に向かう。ところが、ここでちょっと気になったのが、中央道を分岐した後に現れる圏央道の分岐案内。行きたい方向と分岐する方向が逆で、右が高尾山と圏央道、左が青梅と関越道と表示されていることだ。一度でも通った人なら以降は大丈夫かもしれないが、初めて走ったり、たまにしか通らなかったりすると戸惑う人が続出しそうで心配だ。

 それはさておき、圏央道に入ると、やはり新しい道はキレイで走っていて気持ちがよい。相模原八王子トンネルは、これがトンネル?と思うくらい明るい。燃費は再び12.0km/L台に到達。ゆるい上り坂となっていたが、それでも燃費は徐々に伸びていった。

圏央道のトンネルを走行中。新しい道の新しいトンネルは走っていて気持ちよい

 それにしても、知らない間にこうしたプロジェクトが着々と進められていたと思うと感慨深い。また、矢継ぎ早に訪れるトンネルの一つひとつの雰囲気が結構違ったり、崩落を抑えるためののり面の作りも場所によって違ったりするのも興味深い。城山トンネルなんて、ひょっとしてデザイナーが考えたんじゃないかと思うほどオシャレだ。きっとそれぞれの個所で工事を請け負った業者が異なり、各社がそれぞれの持ち味を発揮すべく臨んだのだろう。

 その先の、相模原愛川IC近くの本線から見える建造物もなかなか圧巻だ。上依知第1トンネルを抜けると、のどかな田園風景が広がっていて、その奥には工業地帯が見える。

 そして内回りの厚木PA(パーキングエリア)へ。PAの建物自体もなかなかスタイリッシュだ。ここは既開通区間でもあるため反対車線の厚木PA(外回り)にもすでに行ったことがあるのだが、そちらはすべて和風がテーマなので、まったく違うコンセプトで作られているわけだ。

 PAにはテラスがあり、そこからは相模川が見わたせる。この景色もなかなか素晴らしいので、足を運んだ際にはぜひ見てみるとよいだろう。ここまでの走行距離は91.1㎞、燃費は13.2km/Lまで伸びた。

リニューアルされた圏央道 外回りの厚木PA。外回りと内回りでコンセプトが異なっている
今回の走行で唯一の食事。厚木PAはB-1グランプリキッチンがあり、各地のメニューが用意されている。筆者は富山出身ということもあり、近県である福井県坂井市のメニュー「越前坂井辛み蕎麦」をセレクト。とても美味しかったです
厚木PAのテラス。相模川を見わたすことができる
一休みしたので箱根方面へ出発。八王子方面から気楽に箱根に行けるようになったのは圏央道のおかげだ

 PAを出るとすぐに圏央厚木ICがあり、さらに海老名ICをすぎて、その先の海老名JCTで東名高速に合流できるのだが、車線が減少するところで、早くも渋滞していた。のっけからこんな状態で、この先、大丈夫なのだろうか……?

 そして、東名高速で御殿場ICまで。高速走行での安定性は十分で、タイヤ自体の静粛性は高い。転がり方も転がり抵抗値が小さそうだ。

 大井松田のあたりは高速コーナーが続くのだが、重心の高いセレナにさらにウエイトを積んだ状態で首都高速よりもずっと高い速度で走っても上屋がぐらつく感じが小さく、快適に走れることを確認できた。

約240㎏のウエイトを降ろすとどうなる?

 御殿場ICで東名高速を下り、乙女峠を越え箱根に入る。高速道路、一般道、ワインディングと一通り仮想6名乗車を体験してみた。ここから小田原に向かうのだが、6名乗車時と2名乗車時を比較するため、それまで搭載していた約240㎏分のウエイトを降ろして走ってみた。当たり前だが、一気に身軽になった感じがする。約240㎏(4名相当)の違いは、それなりに大きい。

 箱根のワインディングで、「攻める」とまではいかなくても、少々ペースを上げて高いGのかかるような走り方をしても不安がない。旋回ブレーキを試しても、リアがとても安定していることを実感した。これはタイヤのよさはもちろん、車両自体の足まわりのよさもあってのことで、冬道でもセレナの4WDをドライブした際にリアグリップと操縦安定性の高さに驚いたことがあったが、ドライでの走りも優れていた。

曲がりくねった箱根の道では視界が悪化するときもあった。下り坂でもリアがとても安定しているので不安のない運転を楽しめる

 乗り心地に関しては、ウエイト積載時に比べると若干硬さを感じ、路面の凹凸を感じるようになるが、決して不快なものではない。これをなくそうとすると、好印象だった部分まで薄れてしまうだろうから、これでよいのだと思う。

 やはりミニバンをターゲットとするタイヤゆえ、もっと車両が重くなった状態、2名を超える乗車人員で最適となるようにマッチングを図ったものと思われる。逆にいうと、十分な快適性を確保しながらも、240㎏も重量が増しても、まったく問題なくしっかり走れていたことを評価したいと思う。

 背高ミニバンに家族や仲間を乗せてのロングドライブは楽しい半面、ドライバーにとっては苦になる面もあるのはやむなしと思っていたのだが、走りがこれだけよいと、それもなくなってしまうわけだ。ミニバン専用タイヤを早くから手がけてきたトーヨータイヤには一日の長があることを、あらためて実感した次第である。よいタイヤ選びは、ドライブをより楽しいものにしてくれることに違いない。

岡本幸一郎

1968年 富山県生まれ。学習院大学を卒業後、自動車情報ビデオマガジンの制作、自動車専門誌の記者を経てフリーランスのモータージャーナリストとして独立。国籍も大小もカテゴリーを問わず幅広く市販車の最新事情を網羅するとともに、これまでプライベートでもさまざまなタイプの25台の愛車を乗り継いできた。それらの経験とノウハウを活かし、またユーザー目線に立った視点を大切に、できるだけ読者の方々にとって参考になる有益な情報を提供することを身上としている。日本自動車ジャーナリスト協会会員。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。

Photo:安田 剛