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トヨタ、全車エコカー減税対象で購入コストも削減する新型「プロボックス」「サクシード」説明会
“クルマは動くオフィス”の発想で走行性能や使い勝手を徹底追究
(2014/8/7 00:00)
トヨタ自動車は8月6日、コマーシャルバンの新型「プロボックス」「サクシード」を9月1日に発売すると発表した。価格はプロボックスが131万7600円~179万8691円、サクシードが143万7382円~179万8691円。両車のグレード構成などについての詳細は関連記事(http://car.watch.impress.co.jp/docs/news/20140806_660656.html)を参照されたい。
この発表に合わせてトヨタ自動車 東京本社で行われた報道関係者向けの車両概要説明会では、新しい「プロボックス」「サクシード」の開発を担当したトヨタ自動車 製品企画本部 チーフエンジニアの金森善彦氏が登壇。12年ぶりに行われた2車種のマイナーチェンジについて解説した。
金森チーフエンジニアは冒頭で、トヨタが培ってきた約80年に渡る商用車開発の歴史について語り、「1960年代以降は国内販売の主役としての座を乗用車に譲ったものの、トヨタはいつの時代もお客さまの笑顔のために、商用車を大切に育んできました」とコメント。こうした流れのなかから、2002年7月に、企業から個人商店まで幅広く利用される小型コマーシャルバンの専用車として「プロボックス」「サクシード」が発売されることになったと紹介した。
また、「プロボックス」「サクシード」は広い荷室空間や経済性の高さといった“プロの道具としての資質”が評価され、これまで12年という長い期間で多くのユーザーに愛用されてきたが、取り巻く環境の変化やユーザーの使い方の変化に合わせるため、クルマの骨格とも言えるプラットフォーム、エンジン、トランスミッションを変更することを決断。「プロの道具としてのさらなる高みを目指した」と述べ、「大幅に変更できるこのチャンスに、プロボックスとサクシードをもっとよいクルマにして、働く人をもっと応援したいという思いで企画をスタートさせました」とマイナーチェンジにかけた意気込みを口にしている。
企画初期には実際にプロボックスとサクシードを使っているさまざまな人から意見を聞き、クルマの維持・管理を担当する経営者からは、「低燃費などによる経済性」「安全性の高さ」といった要望が出され、これに対応するため、エンジンでは2015年燃費規制に対応。改良した1.5リッターの1NZ-FE、新搭載となる1.3リッターの1NR-FEの2つのエンジンとSuper CVT-iを組み合わせ、クラストップの低燃費を達成。4WD車を含めて全車でエコカー減税の対象となっている。
実際に車両を使う現場のユーザーからは、「クルマのなかで過ごす時間が長く、仕事用だからこそ、運転が楽で疲れないクルマが欲しい」という希望が出ていた。この実現によって働く人を応援するためには、扱いやすくて乗り心地がよく、使い勝手の良好な運転席まわりが必要不可欠であると分析。新型では市街地からロングドライブまで乗り心地のよさが実感できる走行性能を目指し、プラットフォームのフロント部分とフロントサスペンションにヴィッツ系の設計思想を採用。コイルスプリングのバネ荷重を下げてショックアブソーバーの減衰力を調整、スタビライザーを大型化して乗り心地とハンドリング性能を両立。さらにキャスター角を増やして直進安定性を高めている。また、リヤサスペンションでもフロント側の変更に合わせてスタビライザーを大型化し、減衰力などの見直しを行っている。電動パワーステアリングには車速感応型を採用し、空車時から積載状態まで変わらない操縦安定性と乗り心地のよさを実現している。
また、営業職や配送担当などの人にとって“クルマは動くオフィスのようなもの”という発想から、運転席に座っている状態で必要なアイテムすべてに手が届くよう収納スペースをレイアウト。「働く人々にとって本当に使いやすいコクピットを目指した」としている。
このほかにデザイン面では、フロントマスクを飽きがこないタフな印象のデザインに変更。さらに市街地などで多くの姿を目にする人気モデルとなっている2台だけに、「街をクリーンで明るくしたい」「商用車のハードなイメージを一新したい」という願いから、ボディーカラーに「ライトグリーンメタリック」「ボルドーマイカメタリック」といった新色を追加している。
車両解説後の質疑応答では、ユーザーとのコミュニケーションで得た意見で意外だと感じた内容についての質問に対し、「ドアポケットは開け閉めの頻度が高く、雨に濡れてしまう可能性もあるためゴミ箱代わりぐらいにしか使われていない」「これまでのモデルに採用していたペン立てやカードホルダーは、使うためにペンを抜くと戻しにくく、車外から見える位置にカードなどを置けないので使われていない」とのことで、あまり使い方を限定すると使いにくくなってしまうことを今回の変更に反映させていると語られた。また、大がかりな変更にもかかわらず、マイナーチェンジと発表されていることについては、トヨタの社内規定で「アッパーボディーを全面的に変更する」という要素がフルモデルチェンジの定義に含まれており、今回は外観の大きな変更がフロント部分に止まっているためマイナーチェンジと表現されていると説明。ただし、金森チーフエンジニアはプラットフォームやパワートレーンも改良していることから「フルモデルチェンジに近い変更だと思っている」とコメントしている。