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ニュアンス コミュニケーションズ、「カーナビで音声認識を使うユーザー数は確実に増えている」と発表

同社調べによるカーナビ音声認識機能のユーザー調査を公表

ニュアンス・コミュニケーションズ・ジャパン オートモーティブ ビジネスユニット プリンシパル マーケティングマネージャ 村上久幸氏
2014年9月18日発表

 音声認識ソフトウェアを開発するソフトウェアベンダの米Nuance Communicationsの日本法人であるニュアンス・コミュニケーションズ・ジャパンは9月18日、同社が行ったカーナビの音声認識機能についてのユーザー調査結果を公表する記者説明会を開催した。

 ニュアンス・コミュニケーションズ・ジャパン オートモーティブ ビジネスユニット プリンシパル マーケティングマネージャの村上久幸氏は「2012年~2014年の2年間で、カーナビユーザの音声認識の活用は着実に進展している。また、カーナビがより最新型であったり、使い方の習得期間が短いほどユーザーの満足度が高いことも分かった」と述べ、ほかの地域と比べて音声認識の利用度や注目度が低いとされてきた日本市場でも、徐々にユーザーの音声認識への認識が変化していると指摘した。

日本の自動車産業に音声認識ソリューションを売り込むNuance

 Nuance Communications(ニュアンス・コミュニケーションズ、以下Nuance)は、米国・マサチューセツ州に本社を構えるソフトウェアベンダで、音声認識の技術で世界的に知られている。PC向けのソフトウェアとしては「ドラゴンスピーチ」というブランドで知られており、音声入力によるコマンドの実行や文章の作成などの機能をPCに追加することができる。また、近年ではスマートフォン、自動車向けのソリューションに力を入れており、有名なところではAppleのiOSデバイス(iPhoneやiPad、iPod Touchなど)に搭載されている音声認識機能「Siri(シリ)」が、同社からAppleに提供した技術に基づいていることなどで知られている。

 そうしたNuanceの日本支社となるニュアンス・コミュニケーションズ・ジャパンは、日本では主に自動車向けの音声認識ソリューションのビジネスを展開しており、日本の自動車メーカーに対して同社のソリューションを売り込んでいる。ニュアンス・コミュニケーションズ・ジャパン オートモーティブ ビジネスユニット プリンシパル マーケティングマネージャの村上久幸氏は「日本ではティア2として、ティア1のカーナビメーカーに対して音声認識のソリューションを提供するビジネスを展開している。これまでは、主に日本以外の地域向けの製品に対してソリューションを提供してきたが、昨年ぐらいからは日本向けの製品にも採用が進んでいる」と同社のビジネスについて説明する。

今回の調査を行った動機と背景。同様のテストは2009年、2012年にも行われている

 これは日本市場の特殊性も影響していると考えることができる。よく知られているとおり、日本のカーナビメーカーは世界の市場に比べても最先端の製品を投入してきたため、日本向けの製品に関しては自社で開発した音声認識の機能を持っており、それを自社製品に搭載してきた。このため、Nuanceでは日本メーカーが輸出用として開発する日本語以外の言語のカーナビに対して音声認識のソリューションを提供するビジネスが中心になってきたのだ。ただ、昨年ぐらいから徐々に日本向けの製品に関しても同社ソリューションの採用が始まっており、状況が変わってきているというのだ。

 そうしたなか、日本市場における音声認識に対する受け止めかたはあまりポジティブとは言えない面もあり、同社ではそうした状況がどのように変わっているのか知りたいと考え、今回のような調査を行ったと説明。これまでも、こうした調査は2009年、2012年に行ったそうだが、そのときは結果を公表せず、内部資料として使用。今回のように外部に対して公表したのは初めての試みだという。

音声認識を使うユーザーは2012年から増加。使ってもらう鍵は「短い習熟期間」

 今回、ニュアンス・コミュニケーションズ・ジャパンが行った調査では、民間の調査会社に依頼し、インターネットを利用して回答を得る形で調査を実施。2011年~2014年式のクルマにインダッシュ型のカーナビを装着し、かつ音声認識機能を持つカーナビを所有しているユーザーに限って行ったという。調査期間は2014年8月1日~5日で、有効回答数は1101名。結果はスライドを参照して頂きたいが、いくつかの点で注意点がある。まず、序盤のスライドで紹介されている「カーナビ音声認識機能利用度」「カーナビの種類別シェア」は、前出の条件ではなく、カーナビを所有しているユーザー全体となっており、有効回答数が6464名となっている調査であることだ。

 ニュアンス・コミュニケーションズ・ジャパンの村上氏は「音声認識を使っているユーザー数は2012年の40%から53%になり、確実に増えている。その最大の要因はメーカーが設定するメーカーオプション、ディーラーオプションのカーナビが増えていることだと考えている」と述べ、音声認識機能を搭載しているメーカーオプション、ディーラーオプションのカーナビが増加していることにより、日本でも利用しているユーザーが増えているのではないかという認識を明らかにした。また、満足度についても触れ、クルマの年式が新しくなればなるほど満足度が上がっていると指摘した。

 音声認識をなぜユーザーが使うのか、使用頻度の変化についても触れ、「音声認識が使われるのは、主に“使い方が簡単になる”“運転に集中できる”“負担が少なくなる”という意見が多かった。また、使用頻度に関しては20代~30代など若いユーザーの方がより使う人が増えている」(村上氏)と述べ、若いユーザーほど使いこなしている傾向があることなどを指摘した。さらに、習熟期間がどの程度であれば継続して使っているかを調査したところ「1週間程度で使いこなせた人は概ね満足している」と述べ、ユーザーに使ってもらうには短い期間で使いこなせるようにすることが大事だと指摘した。

調査の基本データ。インターネットによる調査で、対象は2011年式~2014年式のインダッシュナビで音声機能を持つクルマを所有しているユーザー。対象は1101名
基本データからはちょっと枠を広げ、音声認識機能を利用しているかどうかの調査。6464名が対象で、2012年調査に比べて利用している人が13%ほど増えている
こちらも6464名が対象のカーナビの種類別シェア。メーカーオプション、ディーラーオプションの装着車が年々増えており、リテールのインダッシュナビやPNDが減っている様子がよく分かる
以下、基本データの1101名を対象にした結果。クルマの年式が新しくなるほど音声認識機能への満足度は上がっている
音声認識の使用理由は「簡単だから」「運転に集中できる」「負担が少ない」などが上位
使用頻度に関しては、若いユーザーほど上昇している
習熟期間と満足度の相関関係では、やはり短ければ短いほど満足度が高い
音声認識の使いづらい点では、やりとりの長さに不満を持つユーザーが多い、認識率の低さを指摘するユーザーは少しずつ減っているとのこと
カーナビでの楽曲選択方法は、従来型のアーティストやアルバムよりプレイリストが上位に来ている
若年層はプレイリスト、シニア層ほどアルバムなどによる選択という傾向があるという
運転中に利用したいスマホアプリは、概ね同じような傾向
若年層ほどSNSを使いたいというニーズが強くなるという分析
ハンズフリーの利用動向。意外にもまだ50%程度しか使っていないという、北米の80%、イギリスの85%と比較して低い数値
村上氏のまとめ。音声認識の活用は増え、カーナビの習得期間が短いほどユーザー満足度が高い

スマートTVはコマンドの実行、スマートフォンはネット検索が音声認識の主目的

ニュアンス・コミュニケーションズ・ジャパン 音声UIエキスパート 平沢純一氏

 このほかにニュアンス・コミュニケーションズ・ジャパンは、同時にスマートTV・スマートフォンの音声認識機能に関するユーザー調査も実施。ニュアンス・コミュニケーションズ・ジャパン 音声UIエキスパート 平沢純一氏は「これまでは音声認識機能には興味がないという人が多かったが、GoogleやAppleなどがスマートフォンに音声認識機能を搭載したことで徐々に変わりつつある」と述べ、スマートTVの音声認識の機能では、ボリュームの上げ下げや録画番組の再生などのコマンド操作に使いたいというユーザーが多く、スマートフォンではインターネット検索に使いたいというユーザーが多いというデータを紹介した。

パナソニックのスマートTV「ビエラ」シリーズのリモコンについているマイク。これを利用してスマートTVを音声で操作できる
音声認識でチャンネルを変えたり、ボリュームを上下させたり、さらには録画番組を検索して呼び出すこともできる
スマートTVのビエラでは、音声認識を利用してWeb検索も利用可能
調査の動機と背景
基本データ
テレビが使われている目的の基本データ。やはりテレビ放送を見ることが圧倒的
スマートフォン、専用リモコン、テレビ側のマイクのどれを利用して音声操作したいかについての質問では、どれも同じぐらいという三つ巴の結果
音声認識を何のために使いたいかという質問では、テレビの操作が圧倒的に多かった
スマートTVでの音声認識に関する調査のまとめ
他機器所有との使用動向
所有するスマートフォンの機種。iPhone系が40%、Android系が50%強となっており、2分化されている
使っている音声認識の機能はGoogleが一番多く、次いでSiri、しゃべってコンシェルという順番。しかし、最大多数は「使ったことがない」というユーザー
利用したことがあるユーザーに対する再質問では、よく使用するが6.6%、ときどき使用するを含めると30%ほどが使うようになっていると言える。多くなったと捉えるか、まだまだと捉えるか難しいところ
スマートフォンでの音声認識のニーズは圧倒的に検索関連が多い
スマートフォンを持っているユーザーがほかの機器を持っているか、そしてその音声認識を使っているかのデータ
スマートフォンだけのユーザーと、合わせてカーナビを持っているユーザーの利用用途の違い

(笠原一輝)