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MathWorks、MATLABの最新版「Release 2014b」の概要を説明

R2014bはビッグデータ解析に対応し、自動車開発をより効率化

MathWorks インダストリーマーケティング部 ディレクター サミーヤ・プラブー氏
2014年10月29日開催

 ソフトウェアベンダのMathWorksは、東京都内のホテルでプライベートイベント「MATLAB EXPO 2014 Japan」を10月29日に開催した。このイベントに合わせて同日に報道関係者向けの記者説明会を開催し、同社が10月9日に発表した技術演算のための言語「MATLAB(マトラボ)」の最新版となる「Release 2014b(以下R2014b)」の概要説明を行った。

 MATLABはアルゴリズム開発、データ解析、数値計算のためのプログラミング環境を提供する言語で、「Simulink(シミュリンク)」というグラフィックスソフトウェアと組み合わせて、さまざまなCAE(Computer Aided Engineering、コンピュータを利用した設計、製造、開発のこと)用途に活用されている。日本にはさまざまな自動車メーカーが存在しており、そうした自動車メーカーではMATLABとSimulinkのようなソフトウェアを利用して製品の開発が行われている。

10月9日に発表された「MATLAB R2014b」の新機能を解説

 MathWorksは米国のソフトウェアベンダで、アルゴリズム開発、データ解析、数値計算のためのプログラミング環境を提供する言語のMATLAB、そしてそのMATLABと組み合わせてデータを視覚化するSimulinkを顧客に対して提供している。主に産業用途に利用されており、自動車メーカーや電機メーカーといった製造業の開発現場でMATLABなどの製品が利用され、設計、開発を行うCAEと呼ばれる用途に活用されている。MathWorksでは近年自動車向けのソリューションにも力を入れており、特に日本市場では自動車メーカー向けの売り込みに余念がない状況だ。

 そうしたMathWorksだが、10月9日に発表したMATLABの最新版となる「MATLAB R2014b」では、いくつかの新機能が追加されたことを明らかにしている。今回の記者会見は、その新製品発表後に日本で行われる初めての記者会見になったことから、主にそのR2014bが提供する新機能についての話題が中心の記者会見になった。

 MathWorks インダストリーマーケティング部 ディレクター サミーヤ・プラブー氏はこの会見で「弊社ではトレンドは追わず、研究開発といった分野にフォーカスを続けている。特に日本はGDPに占める研究開発への投資の割合が米国や欧州を上まわっており、それが長期的な目で見た成長のエンジンになっている」と述べ、MathWorksとしてはメーカーなどが研究開発を行うことを助けるためのソフトウェアを提供するのだという姿勢を明確にした。

いわゆる「バズワード」と呼ばれるような、現在のIT業界で話題とされている用語。IoT(Internet of Things)などがその典型例
5年前のバズワード見ると、今となっては振り返られないような用語も頻出
日本はGDPに占める研究開発の比率が欧米に比べて高いという特徴がある
長期的に見た場合、地道な研究開発が結局は成長のエンジンになる

新しいグラフィックスやビッグデータへの対応などは自動車開発でもメリット

 その上で、プラブー氏は2014年の最新版となるR2014bに関しての解説を行い、主に以下のような点で強化されていると説明した。

・新しいグラフィックスシステム
・ビッグデータの機能(Hadoopへの対応)
・Simulinkの機能強化

 R2014bのMATLABには、新しいグラフィックスシステムが導入され、標準のカラー、フォント、スタイルなどが新しくなっており、データの視認性が改善されて見やすくなっているという。プラブー氏は「エンジニアや科学者が、どこが重要なのかをすぐ見分けることができ、開発につなげることができる」と述べ、新しいグラフィックスシステムにより利便性が向上するとした。そのほかの新機能としては、回転可能なティックラベル、多言語テキストと記号のサポート、日時ティックラベルの自動更新などがあると解説された。

 ビッグデータへの対応もR2014bの大きなポイントになる。ビッグデータというのは、ネット接続機能があるデバイス(例えばスマートフォンなど)が生成する位置データなどを1つの大きなデータとして分析を加えることで、市場動向を分析したり、これまでは見えていなかった消費活動の傾向を分析するといったことが可能になる。自動車関連での活用では、自動車の走行データは1台1台で考えると、単にどこからどこまで何km/hで移動していたかという情報に過ぎないが、これをビッグデータとして集積して解析すると、渋滞情報として活用することもできる。このように、さまざまな活用方法が考えられるのがビッグデータなのだ。

 新しいR2014bでは、そうしたビッグデータの解析にも利用できる機能が用意されているという。主にメモリやデータアクセスの改善、さらにはプログラミングの構築、そしてローカルのPCだけでなくサーバーなどを利用してビッグデータを解析する手法などがサポートされる。特にビッグデータ関連で最近注目されているソフトウェアプラットフォーム「Hadoop(ハドゥープ)」を利用して演算することも可能になる。

 MATLABと連携して、大規模なシステムのモデリングなどに活用されているSimulinkに関してもいくつかの改良が加えられているという。例えば、新しくサポートされた高速再起動の機能を利用すると、パラメータを変更した後でシミュレーションをやり直す場合、2回目以降は高速で再起動できるようになるという。そのほかに、アニメーションやインターフェイスなどを見直すことで、これまでよりも速くモデリングできるようになる機能が追加されているとプラブー氏は説明した。

 なお、こうした新機能の自動車産業に対するメリットについてプラブー氏は「シミュレーションの機能が改善され、より高速に実行できるようになっているので、多くのシミュレーションを行う必要がある自動車メーカーにとって大きなメリットだ。また、自動車でもすでに多くのビッグデータが収集されており、それを効率よく解析して開発に生かすことが必要だが、新バージョンではそれも可能になっている。また、それはADASのような開発にも役立つと思う」と述べ、新しいMATLABとSimulinkが自動車メーカーにとっても魅力的な選択肢であるはずだとアピールした。

MATLAB R2014bでは新しいグラフィックスシステムを採用
回転可能なティックラベル、多言語テキストと記号のサポート、日時ティックラベルの自動更新に対応
ビッグデータへの対応がMATLAB R2014bの目玉機能の1つ。ビッグデータのプラットフォームであるHadoopに対応している
新しいSimulinkの画面
新しいSimulinkではFast Restart(高速再起動)機能がサポートされており、2回目以降の再起動時を高速化、ちょっとしたパラメータの変更程度であればすばやくシミュレーションをやり直せるようになった
新しいハードウェアのサポートも追加。今回のバージョンではAndroidなどのサポートが追加されている

(笠原一輝)