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JAL、2019年から導入予定の最新ジェット旅客機「エアバス A350 XWB」の説明会&内覧会

アジアツアー中の「A350-900型機(MSN005)」の客室&コクピットを公開

2014年11月20日開催

JALのメンテナンスセンターで公開されたエアバス A350-900型機(MSN005)

 JAL(日本航空)は11月20日、羽田空港敷地内にある同社メンテナンスセンターにおいて2019年から導入予定の「エアバス A350 XWB」の説明会および内覧会を開催した。エアバス A350 XWBについてはエアバス マーケティング・ディレクター マイク・バウザー氏がプレゼンテーションを行い、実機の客室およびコクピット公開が行われた。

プレゼンテーションを行ったエアバス マーケティング・ディレクター マイク・バウザー氏

 A350 XWBは、エアバスの最新中型長距離用航空機で競合機はボーイング 787と777になる。A350 XWBファミリーは、315席(2クラス)のA350-900型機と、369席(2クラス)からなり、JALは31機(内訳はA350-900が18機、A350-1000が13機)の導入を確定で、さらにオプションで25機の計56機をエアバスに発注し、2019年からの導入を予定している。

JAL仕様のエアバス A350模型などが展示されていた
 A350-900A350-1000
座席数(2クラス)315369
エンジンロールス・ロイス製トレント XWB-84トレント XWB-97
推力(lb×1000)84(374kN)97
最大離陸重量(t)268308
全長(m)66.8073.78
全幅(m)64.7564.75
胴体幅(m)5.965.96
高さ(m)17.0517.08
最大搭載燃料(L)138,000156,000

 今回、東京国際空港(羽田空港)において公開されたのは、飛行テストを行っているA350-900型機のMSN005番機で、韓国・金浦空港を経由して羽田に到着。日本で報道陣やカスタマーであるJALにお披露目した後、ハノイ、バンコク、クアラルンプールを経由して、本社のある仏トゥールーズに帰還するツアーを行っている。

 現在、エアバスはMSN005を含む5機のA350 XWBでテスト飛行を行っており、A350-900は9月30日に欧州航空安全庁より型式証明を取得、11月12日に米連邦航空局より型式証明を取得した。JALでは2019年の就航となるが、年内にはJALと同じワンワールドアライアンスに加盟するカタール航空がローンチカスタマーとして初号機の運用を開始する予定だ。

 エアバスのマイク・バウザー氏は、ICAO(International Civil Aviation Organization)の航空需要実績と、同社の需要予測からプレゼンテーションを開始。航空需要は15年おきに2倍になっており、今後は新興国で高い成長率を見込めるという。そのため、今後20年間で3万1358機の新造旅客機が必要となり、その市場規模は4.6兆ドルに達するという。そのような市場環境の中、双通路型(機内に2本通路がある)旅客機であるA350 XWBは39社から750機を受注。30%以上がアジア太平洋地域からのものになる。

航空需要の伸び
新興国での成長
必要になる旅客機
アジア地域が需要をけん引
双通路型の引き渡し
地域ごとの引き渡し
世界中での受注
アジア地域の受注
アシアナ航空
ベトナム航空
タイ国際航空
日本航空

 そのような受注を獲得できた理由として、バウザー氏はA350 XWBの快適で効率的な客席と25%低い運航コストがあるという。快適で効率的な客席については、221インチの室内幅におけるエコノミークラス 18インチシートの1列9席配置、第4世代のエンターテイメントシステム、すべての配線を床下配線としたフラットな床表面、すべてのクラスで乗客1人が1つ以上のキャスター付きスーツケースを収納可能な手荷物棚などを挙げる。

 25%低い運航コストについては、カーボンなど軽量素材を採用した機体、最新のエンジンや空力設計を挙げた。なお、この25%低いという数値の対象機は、A350-900がボーイング 777-200、A350-1000がボーイング 777-300になるという。

A350 XWBの特徴
快適性
フラットな床面
ビジネスクラス
エコノミークラス
LED照明
エンターテイメントシステム
手荷物棚
空調など
特徴のまとめ
25%運航コスト削減
ボーイング 777-300ERとの比較
CO2排出量について
年内に初号機引き渡し
実証飛行について
型式証明について
370分のETOPSを取得
ローンチカスタマーはカタール航空
まとめ
5機のテスト飛行

 また、外部騒音についてもICAOのチャプター4においても、当初想定の基準のマイナス14dBではなく、マイナス21dBになったとのことだ。

●Aircraft Noise(ICAO)
http://www.icao.int/environmental-protection/Pages/noise.aspx

 騒音に関しては、報道陣からボーイング 787のようなシェブロン形状のカウル(エンジンカウル後端のギザギザ)を採用しなかった理由についての質問があったが、バウザー氏はエアバス社内のテストにおいて明確な効果がなかったからと答え、ボーイングの次世代機である777Xのイメージイラストについてもシェブロンカウルは採用されていないと指摘した。

 この説明会&内覧会前には一部報道陣向けに試乗会を実施。騒音や振動の小ささを評価する声もあったが、Car Watchはその試乗会には参加しておらず、実際のところは不明だ。

 そのほか、エアバス A350 XWBファミリーに納入している日本企業についての質問もあり、パナソニック、神戸製鋼、ブリヂストン、ジャムコ、ミネベアなどの名前を挙げ、使用しているカーボン繊維については帝人グループの東邦テナックスのものであると語った。

A350-900 MSN005は2クラス、265席仕様

JALスタッフとエアバススタッフによる記念写真

 航空機は航空会社の要望によってさまざまな仕様の客室で納入される。今回羽田で公開されたA350-900 MSN005はエアバスのテスト機のため、ビジネスクラス42座席、エコノミークラス223席の計265席仕様となっていた。エコノミークラスには2種類のシートが設置されており、1つは「Zodiac US Z300」108席でシートピッチは32~34インチ、もう1つは「Recaro CL3620」115席でシートピッチは33~34インチになる。

JAL メンテナンスセンター全景。右がエアバス A350-900、左がボーイング 737-800。広角レンズによる強調効果はあるものの、A350-900の大きさが分かる
扉を開けたり閉めたりなど
後部扉
胴体左側面と右側面では描かれているメッセージが異なる
客室内のレインボーカラーの照明が見える
主翼まわりなど
垂直尾翼まわりなど
APU(Auxiliary Power Unit)
ロールス・ロイス製トレント XWB-84エンジン
前輪。タイヤはミシュラン製
主輪
エコノミークラスの室内。写真で見て分かるように3-3-3の1列9席(9アブレスト)仕様。こちらのシートはZodiac US Z300
折りたたみ式テーブルの開き方など。テーブルに載せているのは13インチ MacBook Air。電源も3席に対し、2つ用意されている
こちらのシートはRecaro CL3620
第4世代のエンターテイメントシステム。MSN005に搭載されていたのはタレス製の「Thales AVANT」。A350 XWBではパナソニック製のものも選択可能という
第4世代の特徴としてシート下に制御ユニットを持たないこという。そのため、シート下はすっきりとしている
コントローラは液晶のタッチパネルを搭載。縦横を検知するセンサーも搭載していた
オーバーヘッドコンソール。シートベルトサインなども液晶表示
ヘッドレストは上下可能
窓の遮光はプラスチック製の遮光板を上下させるという従来タイプ。窓の大きさはボーイング 787ほどではないが、エアバス A380より大型化しているとのこと
A350 XWBのウリである手荷物収納棚(オーバーヘッドビン)。キャスター付きスーツケースを縦置きで5個収納できるものと、キャスター付きスーツケース3個と中型バック2個を収納可能なものが配置されている
ビジネスクラスは42席。横1列4席仕様で「Sogerma Solstys」。シートピッチは43~44インチとなる
LED式の照明で1670万色に可変しての照明が可能だという。つまり24bitカラーということだろうか
ビジネスクラスだけあり、余裕のテーブルサイズ
シートを倒せばフルフラットになる
JALのスタッフにモデルになっていただいた。身長は184cmとのこと
シート配置は、窓側1席、中央2席の1-2-1。
中央2席の間にはセパレーターも用意されている
エンターテイメントシステムとコントローラ
コントローラの下にはUSB電源コネクタなど
LED式の読書灯
足入れ部分
窓から見たロールス・ロイス製トレント XWB-84エンジン。エンジンカウルに取り付けられたボーテックスジェネレーション用のフィンが見える
ビジネスクラスとエコノミークラスを隔てるセパレータ
扉を内側から
非常口サイン
ラバトリー
ラバトリーの扉に取り付けられていた灰皿
ギャレー(厨房設備)。
テスト機のため、計測装置などが多数積まれていた
エアバス A350-900のコクピット
キーボードやサイドスティックなど

 本説明会&内覧会で印象的だったのは、JALの各スタッフもエアバス A350の各部をチェックしていたところ。たとえばシートの座り心地や、実業務を行っているCAさんによる荷物棚の使い勝手などなど。今回公開された仕様がそのままJAL機材とはならないだろうが、JAL初のエアバス中型機導入に向けての準備は1つずつ進んでいるようだった。

(編集部:谷川 潔/Photo:安田 剛)