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「ヱヴァンゲリヲン新劇場版」とコラボした世界最大規模のAR「箱根補完計画 ARスタンプラリー」を体験してみた

12月1日~2015年3月31日開催。箱根の50個所にARキャラを配置

2014年11月26日開催

 箱根町観光協会は「ヱヴァンゲリヲン新劇場版」とコラボレーションした「箱根補完計画 ARスタンプラリー」を12月1日~2015年3月31日まで開催する。これに先立つ11月26日、関係者向けの説明会と箱根各地に設置されたARの体験会を実施した。本記事は、その模様をリポートする。

「箱根補完計画 ARスタンプラリー」は、ソフトバンクモバイルが提供するスマホ向けアプリ「ふらっと案内」(iOS5.1以上、iPhone4S以上、Android 2.3以上)を活用して行われる。箱根全山に散らばったチェックポイント約100個所とARポイント約50個所が用意されており、該当個所で「ふらっと案内」を起動すると、ヱヴァンゲリヲンのキャラクターとスマホのカメラ映像が合成された画面が表示され、まるで劇中の1シーンのような写真を撮ることができる。

「箱根補完計画 ARスタンプラリー」の起動画面
ラリーのトップのスタート画面。全11コースからラリーを選んで参加する
ARの例、箱根湯本駅付近でジャンプするエヴァ初号機が見られる

 ARポイントは「ふらっと案内」画面上のレーダーに表示され、地図とレーダーを頼りにARポイントを自分で探す。予め11のコースが用意されており、1コースあたり12個前後のポイントが用意されている。コースは箱根の見所をまわったり、ヱヴァンゲリヲンのキャラクターを探す、自家用車でまわるといったものが用意されており、コースに従ってまわると自然に箱根の名所が観光できる仕組みだ。1コースはおおよそ半日あれば全てのポイントを回れるように設定されている。

 コースを回ってARポイントでスタンプをゲットすると、得点が加算されるようになっており、ユーザー同士で得点を競うといった遊び方もできる。なお、今回登場するヱヴァンゲリヲンのキャラクターは、ヱヴァンゲリヲン新劇場版の「序」および「破」のみとなる。TV版や旧劇場版の設定ではキャラクターは登場しない。また新劇場版でも「Q」に関しても舞台設定が現状の箱根とは状況が離れているため登場しない。

ARのポイントは自分の位置を中心に白い点で表示される。ARが見られる範囲に入った場合には赤い点に切り替わる
チェックポイントとARポイントは地図上でも見ることができる。どう効率的に回るかはユーザーの腕の見せどころだ
スタンプをゲットすると加点される

箱根が地区ぐるみでヱヴァンゲリヲンとコラボ

 取材に先立ち、箱根町観光協会 専務理事 高橋始氏より、箱根町とヱヴァンゲリヲンとのコラボについての説明が行われた。高橋氏によると、ヱヴァンゲリヲン新劇場版とのコラボは2009年から始まり、最初のコラボとして作中のシーンを実物のマップ上で解説した「箱根補完マップ」を4000部作成、3日間前後ですべて配布終了となった。

 さらに2010年にはヱヴァンゲリヲン新劇場版の上映会を実施。こちらも2日間で1400人が参加するなど、ヱヴァンゲリヲン新劇場版とのコラボに手応えを感じ、それが今回の「箱根補完計画 ARスタンプラリー」の開催に繋がった。箱根地区には年間2000万人の観光客が訪れるが、客層は熟年層が中心で、若年層離れが深刻化している。このARスタンプラリーにより若者が訪れるようになってほしいとのこと。なお、集客目標などは設定していないものの、1月~3月は箱根地区の旅館はオフシーズンということもあり、今回のARラリーの開催で集客の底上げになることを期待しているという。「富士山を眺めながら温泉につかって、箱根を回遊してほしい」と高橋氏は語っていた。

 次に「ヱヴァンゲリヲン」のライセンスを管理するグラウンドワークスの代表取締役 神村靖宏氏より「ヱヴァンゲリヲン」の現状について語られた。2015年は最初の作品「新世紀エヴァンゲリオン」が放映されてから20周年を迎える。また、作中の舞台設定も2015年ということもあり、グラウンドワークスとしてもこの節目の年を盛り上げていくという。 ヱヴァンゲリヲン新劇場版のクライマックスとなる「シン・エヴァンゲリオン劇場版:||」がまだ公開されていないこともあり、ファンの「ヱヴァンゲリヲン」に対する興味はまだ冷めていない。若い世代のファンも育ってきており、アニメファンだけではなく一般層に対する普及力もある。ヱヴァンゲリヲン新劇場版はこれまで3作公開されてきたが、作を追うごとに動員数が増えているのもこの現れであるとのこと。箱根は「ヱヴァンゲリヲン」の聖地でもあり、アニメの舞台作りでも非常に面白い土地だと語っていた。

箱根町観光協会 専務理事 高橋始氏
グラウンドワークス 代表取締役 神村靖宏氏

 最後にソフトバンクモバイル システムサービス事業統括部 新規事業準備室 室長 永瀬淳氏とソフトバンクテレコム 観光クラウド推進室 観光立国・地域活性化推進 課長 串馬秀信氏より「箱根補完計画 ARスタンプラリー」の具体的な取り組みについて解説が行われた。

 ソフトバンクグループとしては、新しいおもてなしと観光スタイルの提供を目指していくとしており、その具体的な施策の1つが今回のARスタンプラリーだ。外国人にも人気の観光地箱根と日本を代表する世界的コンテンツ「ヱヴァンゲリヲン」を融合させることで、箱根のさらなる観光促進を目指すとのこと。ARを体験するアプリ「ふらっと案内」やシステム部分はソフトバンクが開発を担当しており、50ものARを同時に展開するのは前例がなく世界的にも最大規模のものになるという。また、50というARの数も開催期間中にユーザーの反応を見ながら改良や追加を行っていくとしており、最終的にはさらに多くのARが登場する可能性がある。

 ARとしての技術面でも新機軸が採用されている。従来のARでは現在位置情報や特定オブジェクトの画像認識のどちらか片方だけが使用されることが多かったが、今回のARは現在位置情報を使いつつ神社の門など特定のオブジェクトを画像認識することによって、ARの起動条件となるものもあり、さらにどの方向を向いているかという位置測位情報や時刻情報、気象情報(照度による判別)も取り入れられている。

 例えば現在位置によってARで見られるキャラの角度が変わったり、時刻によって現れる内容が変化、気象条件で得られる得点が変化するという。なお、スコアによって1級~9級までランクがつけられており、高得点を狙ったり、コースのコンプリート率を競うなどのゲーム性も取り入れる。さらにコースを全てクリアすると修了証ももらえる。フォトコンテストも実施され、Twitterでハッシュタグ「#hakone_eva」とつけて写真を投稿すると応募できる。優秀賞には箱根湯本にあるグッズショップ「えう゛ぁ屋」のオリジナルグッズが進呈される。なお、ARを体験するアプリとして「ふらっと案内」を活用した理由として、同アプリは1日あたり38万8000PVかつ3万人のユニークユーザーがあるため「ヱヴァンゲリヲン」ファン以外のユーザーや他の地域を旅行しているユーザーにこのイベントを知ってもらうための施策とのこと。

ソフトバンクモバイル システムサービス事業統括部 新規事業準備室 室長 永瀬淳氏
ソフトバンクテレコム 観光クラウド推進室 観光立国・地域活性化推進 課長 串馬秀信氏
「箱根補完計画 ARスタンプラリー」の取り組みについて
使用するARアルゴリズムの解説
ARアルゴリズムで可能になること
スタンプラリーのコース
ARについて
等身大エヴァ 3DAR
パノラマAR
360度AR
湖上の第6使徒
湖上の爆破シーン
キャラクター、使徒、エヴァなどのAR

物語に入り込んだような予想以上の面白さ

 実際に4個所のARを一足先に体験してみた。報道関係者が乗り込んだワゴン車を箱根町観光協会のネルフラッピングカーが先導。まるで、ネルフの広報車に第三新東京市を案内されているような気分だった。このネルフラッピングカーはARスタンプラリーでも業務に使われるため、運がよければ出会えるかも知れない。

報道関係者が乗り込んだワゴン車を先導する箱根町観光協会のネルフラッピングカー。葛城ミサトが所属するネルフの戦術作戦部作戦局第一課のクルマという設定のようだ

 まず最初に訪れたのは箱根湿生花園の駐車場。箱根湿生花園は、水湿地に生育している植物を中心に展示している植物園だ。ここの駐車場では実物大の零号機のARを見ることができる。非公式ながらエヴァシリーズの身長は80m前後とのことで、ARも普通にかざしたのでは足だけしか見えず、スマホを上に掲げてようやく零号機を見ることができる。エヴァシリーズの大きさを体感できる面白いポイントだ。もちろん、キャラは3Dなので移動すれば視点も変化する。関係者に聞いてみたところ、ARの出現条件は水平の地点位置なので、高さはいくらあっても大丈夫とのこと。理論上ではドローンやヘリなどを飛ばして上空から撮影すれば、この零号機の顔を間近で見たり、上から見られるかも知れない。なお、ARの有効範囲はポイントによって異なるとのこと。

箱根湿生花園の駐車場では等身大のエヴァ零号機が見られる。普通に見ると足だけしか見えないが……
全高80mあるため、スマホを掲げて見上げると……
零号機を真下から見ることができる。

 次に訪れたのは箱根園水族館。ここはぜひ訪れてほしいポイントの1つだ。入り口では葛城ミサトのペット「ペンペン」が見られる。さらに、最大の見所は水族館内の360度ARだ。水族館のレリーフがARの起動キーになっており、作中で主人公たちが訪れる海洋資源保存研究施設のシーンを360度パノラマを見ることができる。実際の箱根園水族館も似たような光景だが、それと重ね合わせるようになっているのが面白い。スマホを持ちながら周囲を見回すことで、水槽を見るシンジとレイ、パイプに座るアスカといったキャラを見つけることができる。エヴァのファンならば思わず興奮すること間違いない。また、箱根園水族館は芦ノ湖に面しており、その上空には第6使徒が上空500m前後に回転しながら浮いている。このAR範囲は広く、箱根の町からも見えるという。

ARが近づくと、どうすればARが出現するかナビゲートしてくれる
箱根園水族館の入り口のペンギンの看板では葛城ミサトのペット「ペンペン」が出現する
右側にある水族館のロゴのレリーフが360度パノラマのARキーになっている
このパノラマARはスマホを横にしても楽しめる
シンジとレイを発見
さらにアスカも発見
実物の水槽も作中にそっくり
芦ノ湖の上空には……
第6使徒が上空500mの位置に浮いている。回転もしており芸が細かい

 さらに訪れた箱根神社の「平和の鳥居」からは、夕日を浴びながら箱根に向けて侵攻する第9の使徒が見える。また神社の門では浴衣姿のレイとアスカが見えるハズだったのだが、日没が早くARが起動しなかった。このARは門の映像をグレイスケールで形状認識して起動するため、照度が低いと上手く起動しない。このようにARポイントによっては、昼間でないと起動しないものもあるので注意が必要だ。

 とはいえ、最後に訪れた箱根湯本駅にあるグッズショップ「えう゛ぁ屋」では、店舗の看板がARの起動キーになっているものの、照明があったため上手く起動でき、浴衣姿のシンジを見ることができた。なお、写真のフレームに人が入れば、キャラクターとツーショット写真を撮ることもできる。ぜひ好みのキャラと一緒に写真を撮ってみてはどうだろうか?

箱根神社の「平和の鳥居」からは第9の使徒が見える
箱根神社の門では浴衣姿のレイとアスカが見られるハズだったが、すでに暗すぎてARが出現せず
本当はこんな画像が見られるハズだった
箱根湯本駅にあるグッズショップ「えう゛ぁ屋」。ここの壁にはここでしか見られない、新劇場版のスタッフが書き下ろした絵がある
「えう゛ぁ屋」の看板ではシンジのARが見られる

 今回は4個所だけだったが、それでも「ヱヴァンゲリヲン」の世界観を体験でき、まるで本当に作中に居るような気分を味わうことができた。ARポイントを探す楽しさや見つけたときの嬉しさ、360度パノラマARなどポイントごとに手の込んだ仕掛けを堪能できるなど、本格的にやってみるとかなりハマりそうだ。さらにロケーションを移動することで、身体を動かす運動にもなる。

 Googleのロケーションゲーム「イングレス」をプレイすることで体重が減ったという例も多数報告されており、「イングレス・ダイエット」という言葉までできているが、これだけ楽しいと「箱根補完計画 ARスタンプラリー・ダイエット」というのもできそうだ。実際に浴衣姿のレイとアスカが見える箱根神社の階段は駐車場から急な階段があり、筆者はよい運動になった。コースの中にはクルマで巡るものも設定されているため、休日のドライブにスマホを持って出かけてみてはどうだろうか?

箱根町観光協会のネルフラッピングカー

(c)カラー/ProjectEva.(c)カラー/EVA製作委員会(c)カラー

(シバタススム)