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GT500優勝報告などが行われた日産ファン感謝イベント「NISMO FESTIVAL 2014」リポート

2015年に復帰するWEC&ル・マン参戦車両のお披露目は来年早々と予告

2014年11月30日開催

 日産自動車とNISMO(ニッサン・モータースポーツ・インターナショナル、以下ニスモ)は11月30日、富士スピードウェイ(静岡県駿東郡小山町)でファン感謝イベント「NISSAN RACING DNA NISMO FESTIVAL at FUJI SPEEDWAY 2014」を開催した。

 同イベントはシーズンオフの恒例イベント。今年はニスモ創立30周年に当たることに加え、SUPER GT GT500クラスで23号車MOTUL AUTECH GT-Rが見事チャンピオンを獲得するなど話題性も十分。快晴とまではいかないまでも、12月が目前とは思えない穏やかな気候のもと、約3万5000人のファンが富士スピードウェイを訪れた。

 開幕後、最初のイベントとなるオープニングセレモニーには、柿元邦彦総監督をはじめ日産系のドライバーやチーム監督が集合。まずマイクを握った松田次生選手は「SUPER GTのシリーズタイトルを獲得して皆さんの前でご挨拶できるのを本当に嬉しく思っています。今年1年本当に大変だったんですけれども、僕事なんですけどもなかなかSUPER GTのタイトルが取れなくて、やっと今年タイトルが取れて、日産に移籍してから本当に苦労があったんですけれど、恩師である星野監督に育てていただいて感謝しています。今日、大勢の方がいらっしゃいますけれど、なかなかレースの会場ではファンの方と交流が持てないので、今日は思う存分、皆さんと一緒にニスモフェスティバルを盛り上げていきましょう」と、今シーズンを振り返りつつ挨拶を行った。

 次いでマイクを握った柿本総監督は「多くのファンの方々に駆け付けていただきましてありがとうございます。今年はニスモ創立30周年、またSUPER GTでチャンピオン、そして実は昨年来ニスモバージョンのクルマを世界で販売しているのですが、それが2万台に達しました。これもひとえにファンの皆様方のご支援があったからでございます。GT-Rのチャンピオン、23号車は6年ぶりですが、この4年間を見ると、4年のうち3回GT-Rがチャンピオンを獲っています。ということは、技術力に優れているということ、ニスモの技術がすごくいいということになります。約1名H社の方もいらっしゃいますが(笑)、来年はまたチャンピオンを獲るのが言うまでもなく当たり前のことになります。ぜひ期待していただければと思います」と、駆けつけたファンにお礼をしつつ、来年に向けた意気込みを語った。

オープニングステージには監督&選手が集合
選手を代表してマイクを握った松田次生選手は「やっとタイトルが獲れました」と満面の笑みでスピーチ
柿本総監督はSUPER GTで4年中3回GT-Rがチャンピオンを獲得したことに触れ、ニスモの技術力の高さをアピール

RACING EVENT AREA

 レーシングイベントエリアと名付けられたコース上には、日産とニスモのレーシングカーが一堂に集結。NISMO 270R以降のモデル約100台のオーナーカーによる「NISMO CARS PARADE RUN & PARKING」を皮切りに、「NISMO 30th ヒストリックカーデモラン」、1960年代~1970年代のハコスカやサニーといったヒストリックカーによる「NISSAN ヒストリックカー エキシビジョンレース」、現役レーシングカーによる本気のバトル「NISMO GP 2014」など、多彩なプログラムで共演を果たした。

すべて自社製作となったR91CP。1992年のデイトナ24時間レースでは長谷見/星野/鈴木利男組が、日本人、日本車初の総合優勝を果たした
R390 GT1は1998年のル・マン24時間レースにおいて、星野/鈴木亜久里/影山の日本人ドライバーが総合3位で表彰台を獲得
R391 LM-P仕様。1999年のル・マン24時間レースではリタイアとなったものの、同年富士で開催された1000㎞レースでは優勝を果たした
2014年のSUPER GT GT500クラスに参戦したMOTUL AUTECH GT-R。第3戦、最終戦で優勝、第5線、第6戦で2位を獲得しシリーズチャンピオンに輝いた
2014年のSUPER GT GT500クラスに参戦したカルソニックIMPUL GT-R
2台によるランデブー走行も見られた
2011年のFIA GT1世界選手権参戦車両。ミハエル・クルム、ルーカス・ルアー組がドライバーズタイトルを獲得
2014年のSUPER GT GT500クラスに参戦したS Road MOLA GT-R
KONDO RACINGと日産自動車大学校のコラボにより2014年スーパー耐久シリーズST-Xクラスに参戦したスリーボンド 日産自動車大学校GT-R
2014年スーパー耐久シリーズST-Xクラスに参戦、シリーズチャンピオンを獲得したGTNET ADVAN NISSAN GT-R
2014年のSUPER GT GT300クラスに参戦したIWASAKI apr GT-R
2015年仕様のカスタマー向けFIA GT3車両
1204年仕様のカスタマー向けFIA GT3車両。6速シーケンシャルミッション、セミオートマチックパドルシフト、ステアリングアジャスト機能を標準採用している
2011年にデビューしたEVレーシングカー、NISSAN LEAF NISMO RC
2003年のJGTCにニスモワークスとして参戦したMOTUL PITWORK GT-R
1999年のJGTCに参戦したペンズオイル・ニスモGT-R
2006年のSUPER GT GT500クラスに参戦したMOTUL AUTECH Z。9戦中4戦で表彰台を獲得
スーパー耐久シリーズに参戦中のZ33、Z34
1991年のスパ24時間レースに参戦したZEXEL SKYLINE GT-R
1990年に復活したR32 GT-Rは全日本選手権に参戦、1993年までの4シーズンの全29戦すべて優勝という快挙を達成。カルソニック スカイラインは1990年と1993年のチャンピオンカーだ
ホモロゲーション獲得のため800台限定で発売されたスカイラインGTS-Rをベースにしたリーボック スカイライン
2002年デビューの3代目マーチを使って行われたワンメイクレース、マーチカップレース用モデルも走行
市販車のニスモモデルを使ったサーキットタクシー
レーシングカーも同乗走行を実施。タクシーを抜いていく場面も
大型バスによるサーキットサファリ
KPGC10、B110サニー、510ブルーバードなどによるエキシビジョンレースも。往年の名車による争いは今見ても色あせないものだった
ノート&マーチNISMOなどを使ったチームオレンジによるシンクロパフォーマンスショー。見事に息の合った動きを見せ、会場からは大きな拍手が起こっていた

 また、2015年からル・マン24時間レースLMP1クラスに復帰することを見据えた「Road to Le Mans 2015」も実施。1992年のデイトナ24時間レースで優勝を果たしたR91CP、1998年のル・マン24時間レースに出場したR390、1999年のル・マン24時間レースに出場したR391の3台を、長谷見昌弘監督、星野一義監督、本山哲選手がドライブしたほか、スタンド前では近藤真彦監督、鈴木亜久里監督を加えてトークショーを実施。長谷見監督が当時を振り返り「バッテリーがすぐなくなっちゃった。隣のポルシェチームから4個ぐらい借りた」など、今だからこそ話せる(?)エピソードを披露した。

ピット前ではRoad to Le Mans 2015に向けマシンのメンテナンスが進む
R91CP。エンジンは3.5リッターのVRH35Z。最高出力は680PS以上
R390 GT1
エンジンは3.5リッターのVRH35L。最高出力は650PS以上
フロントブレーキ
R391。エンジンは5.0リッターのVRH50A
1986年に日産ワークスが初めてル・マン24時間レースに参戦した際に使用したR85V
R85Vと同時に参戦したR86V
1988年のル・マン24時間レースのために制作されたR88C
マーチ製シャシーからローラ製に変更、エンジン排気量もアップしたR89C
1990年のル・マン24時間レースに参戦したR90CK
1997年のル・マン24時間レースのためにTWR(トム・ウォーキンショー・レーシング)の協力により制作されたR390 GT1
R33GT-RをベースとしたNISMO GT-R LM。1995年のル・マン24時間レースに参戦
1996年もNISMO GT-R LMで参戦
R91CPは長谷見監督がドライブ
星野監督はR390 GT1
R391のステアリングは本山選手が握った
3台が隊列を組んでストレートを駆け抜ける
スタンド前ではトークショーが開かれた
長谷見監督のバッテリー話を受け「下の方についていて交換が大変だった」と話す柿本総監督
R91CPでル・マンを戦った際、バッテリーが消耗するトラブルがあり隣のポルシェチームから4個ぐらい借りたと長谷見監督
R390 GT1を駆った星野監督は「このまま戦えそうなぐらい調子がいい。僕もハンドル握った途端に血が騒いだので、来年できれば30億円ぐらいでル・マンの契約をしてもらおうかな」と会場を沸かせた
ル・マンはレース自体は厳しいものの、会場の雰囲気や街ぐるみの応援が感じられ素晴らしかったと近藤監督
本山哲選手は「ル・マンはストレートが長くて僕の時代で330km~340km。安定して走れるので乗ってても早くて面白い」と語った
コース上での最後のイベントとなるNISMO GP 2014を前にグリッドウォークが実施された。チャンピオンカー23号車の前には多くのファンが集まっていた
レース序盤は23号車が隊列を引っ張る
2015年仕様のGT3仕様車はGT300クラスの前に
スーパー耐久勢は団子状態が続く
開発車らしいマットブラックの外観が凄みを感じさせる
GT300クラスとスーパー耐久勢もいい勝負を繰り広げる
23号車はピットインで後退
うまくピットインをこなした12号車がトップに立ちそのままゴール
23号車MOTUL AUTECH GT-R
35号車をサイドアングルから
日が落ちたレース終盤は真っ赤に光るブレーキディスクがよく見えるようになった

PADDOCK EVENT AREA&STAND EVENT AREA

 ピットのあるパドックエリアではR85V、R390、GT-R LMなど往年の名車を展示する「Le Mans History」コーナーが設けられたほか、グループA仕様のスカイラインGT-R、それにもちろん今年のチャンピオンカー、MOTUL AUTECH GT-RをはじめとするSUPER GT参戦車両など、多くのレーシングカーを展示。コースを走行した車両に関してはピット作業も間近で見ることができた。

 ピットビル3階ではタイヤ交換作業を体験できる「ピットワークシミュレーション」、SUPER GT参戦車両に乗り込んでエンジンスタート、レーサー気分を味わえる「ドライバー模擬体験」、コクピットに乗り込むことができる「コクピットライド」など、体験型のイベントを各種実施。また、歴代のエンジンやレーシングスーツ、トロフィーなどを展示する「NISMO 30th MUSEUM」、往年の名車展示など、ゆっくりと楽しめるコーナーとなっていた。

 一方、グランドスタンド前ではガレージセールやニスモグッズ、限定ミニカーなどの物販ブースが充実。特に実際に使われたレースカーの部品を展示即売するガレージセールは、例年イベント開始とともに列ができるほどの人気となっているが、今年もそれは変わらず。ボンネットやフェンダー、ホイールといった大物パーツがよく売れていたようだ。

パドック裏にも多くのブースが並んだ
こちらはメインスタンド側。リーフなどEVのバッテリーをリユースする「4R ENERGY」のブース。1台分の半分、12kWの容量を持ちコンパクトなのが特長。右が本来のカラーで左側は特別色
自転車を使って発電量を競うアトラクション。30秒間で男性なら1Whぐらいとのこと
エクストレイルを使って日産の先進技術を体験できる「ワクテク」コーナー
限定ミニカーも人気だった
ニスモグッズの即売コーナー。タンブラーなどが人気とのこと
レースで実際に使われたパーツが並ぶガレージセール。3枚しかなかったボンネットフードはすぐに売約済みとなってしまった
チャンピオンマシン23号車が履くミシュランタイヤは王座奪還をアピール
ブリヂストンブースでは2013年仕様のGT500車両を展示
市販スポーツタイヤが並ぶヨコハマタイヤブース
ダンロップは募金でガチャガチャができるアトラクションを用意
ピットビル3階ではレース車両の展示も。これは1991年のアクロポリスラリーに出場したWRカー仕様のパルサーGTI-R
2000年のラリーレイドモンゴルで優勝したR50型テラノ
全日本ラリー仕様のフェアレディZ 300ZX
4代目フェアレディZ(Z32型)をベースにした富士スピードウェイのマーシャルカー
ワンメイクレースのザウルスカップ用マシン。写真のモデルは2代目でセミモノコック構造を採用しSR18DEエンジンを搭載している
スーパーチャージャーとターボチャージャーのダブル過給が特長のマーチスーパーターボ。写真のモデルはワンメイクレース、マーチリトルダイナマイトカップ用車両
P11型プリメーラ・カミノをベースにした全日本ツーリングカー選手権(JGTC)車両
1996年のJGTCに参戦したザナヴィ・サニー(B14型)
1998年のJGTC GT300クラスに参戦したザナヴィ・シルビア(S14型)
ピットビル3階の一角に設けられたNISMO 30th MUSEUM
R85Vに搭載されたVG30
グループA仕様のR32GT-Rに搭載されていたRB26DETT
1000PS以上を発生するVRH35Z。R90CKなどに搭載
JTCCやBTCCマシンに搭載されていたSR20DE
RB26DETTをベースに排気量アップやドライサンプ化などを施したRB26L
R390などに搭載されたVRH35L
VRH35Lの翌年、レギュレーションに合わせて大排気量化したVRH50A
直6のRB26DETTの後を受け継ぎV6化と排気量アップでパフォーマンスアップと軽量化を果たしたVQ30DETT
2010年からSUPER GTに投入されたVRH34A
レースカーのコクピットに座ることができるコクピットライドは人気のイベント

華やかなフィナーレ

 イベントの最後は現役車両によるパレードランを実施。全車がメインスタンド前に整列した後、シリーズチャンピオンを獲得したドライバーを紹介。1組目はスーパー耐久ST-Xクラスに参戦したGTNET ADVAN NISSAN GT-Rのドライバー、星野一樹選手、尾本直史選手、青木孝行選手。2組目がスーパー耐久ST-3クラスに参戦、Z34に初の栄冠をもたらしたAsset ings Z34のドライバー、前嶋秀司選手、佐々木雅弘選手、廣川和希選手で、それぞれ花束が贈られた。そして最後にSUPER GT GT500クラスで見事チャンピオンを獲得した23号車MOTUL AUTECH GT-Rの松田次生選手、ロリー・クインタレッリ選手、鈴木豊監督が登場。

スーパー耐久ST-Xクラスチャンピオンとなった星野/尾本/青木組
スーパー耐久ST-3クラスチャンピオンとなった前嶋/佐々木/廣川組

 まず、松田選手がマイクを手にし「皆さん、初タイトル取れました。ありがとうございます。ニスモ30周年の節目の年にニスモに移籍して、初タイトルを取ることができまして、僕自身も本当に自信になりましたし、スタッフの皆さん、ミシュランタイヤの皆さん、みんなの力が1つになってチャンピオン獲れたと思います。来年は1号車をたぶん付けると思うんですけれど、1号車を付けたときにみんなの標的になるので、とにかく負けないように、連覇できるように頑張っていきたいと思いますので、皆さんの応援をよろしくお願いします」とスピーチ。

 次いでクインタレッリ選手が「この素晴らしい日産ファンの前で、チャンピオンを獲ってスピーチができて、本当に光栄です。今年のチャンピオンはニスモチームの皆さんや、最終戦までファンの皆さんの熱い愛があったからこそチャンピオンが取れました。来年は連覇ができるように、皆で力を合わせて頑張っていきたいと思います」と、ファンに感謝の意を表した。

 最後に登場した鈴木豊監督は「皆さんお待たせしました。毎年この日になると、また来年また来年といい続けて皆さんを裏切ってきたんですけれども、今日はやっとこの報告ができてうれしく思います。いろんな思いはあるんですが、今日は本当に皆さん、ここにいるスタッフ、いろんな方々に一言“ありがとうございました”と伝えます。また来年に向けて戦いが始まっていきますけれども、皆さんの応援をよろしくお願いします」と喜びを伝えた。

初タイトルに喜ぶ松田次生選手
連覇を目指して頑張るとロリー・クインタレッリ選手
「お待たせしました」と鈴木豊監督

 スピーチの後はチャンピオンカーの前に2人のドライバーが登場。「23」のゼッケンをはがすと「1」のゼッケンが現れるパフォーマンスで会場を沸かせた。

喜びの記念撮影
ドライバー2人がゼッケンに手をかける
端から剥がしていくと……
チャンピオンカーの証であるゼッケン1が登場
イベントの最後は代表取締役兼CEO 宮谷正一氏による挨拶

 最後に日産モータースポーツインターナショナル 代表取締役兼CEO 宮谷正一氏が登壇。「SUPER GT GT500では途中ハラハラドキドキ皆さんにさせまして、私もハラハラドキドキしたんですけれども、最後はきっちりと締めて、23号車らしいといいますか日産らしい優勝を飾ることができました」と、ファンに嬉しい報告。

 次いでスーパー耐久での優勝、ニスモがリリースするロードカーが日欧米の販売台数が2万台を超えたことに触れ、30周年に花を添えることができたと紹介。2015年に関しては「ル・マン、WEC LMP1に復帰するということを発表しています。今日は皆さんにそのクルマをお披露目することがちょっとできなかったんですけれども、もうちょっとだけ待っていただきまして、来年早々のお披露目をお待ちいただきたいなと思います」と言葉を濁した。そして「来年のモータースポーツについてはGT3のクルマの戦闘力強化をやっていますので、来年は日本ではGT500、GT300、スーパー耐久、全部制覇することを目指す」と力強く宣言。最後に「また来年の年末にこのニスモフェスティバルで盛大に祝うことができることを願って、それをまたできるように頑張っていきますので、来年も引き続き応援をぜひよろしくお願いします」と締めくくった。

GT500だけでなくGT300、スーパー耐久も制覇すると力強く宣言
ニスモ初代社長難波氏の遺影を掲げ歴代社長も列に並んだ
最後は恒例のプレゼントトス
ドライバーたちがスタンドに向かって今シーズンの応援に感謝をあらわす
松田選手が23号車にも花束をプレゼント
グランドスタンド前に勢ぞろいした現役レーシングカー

(安田 剛)