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氷結した女神湖で「2015iceGUARD 5&PROSPEC Winter Driving Park」に参加してみた

氷上だからこそ低速で安全にクルマの挙動を把握できる

2015年1月14日開催

 1月24日に長野県の女神湖にて「2015iceGUARD 5&PROSPEC Winter Driving Park」が開催された。

 冬季に湖面が凍結する女神湖を利用した氷上のドライビングレッスンで、アスファルトのウエット路よりも低い速度域でクルマの挙動が理解でき、ドライビングスキルの向上につながる。レッスンは、クルマを速く走らせることよりもドライビングが上手くなる手助けができればというコンセプトの元に開催されている。

 開催当日は、1週間ほど前からの悪天候により湖面の氷の状況がわるく、実施できるか微妙な状況だった。だが、一部の場所を除いては氷の厚さが50cm以上あり、開催することはできたが、湖の全体を使ったレッスンは叶わず、外周路が削られてコースが縮小されてしまったのが残念だった。

 湖面は、フルブレーキングでABSの体験とスラロームをするゾーン、パイロンコースを走行するジムカーナゾーン、定常円旋回と8の字旋回を行なうゾーンの3つに分けられた。

 参加者は約20名。3グループに分けてのレッスンで、走行時間やレクチャーを受ける時間は十分に取られていた。20名のみの参加者に対して7名のインストラクターがいるので、自分のクルマに同乗してもらったり、ドライビングを確認してもらい、いつでもアドバイスを受けることができる。

 このような手厚いサポートもあり、プロスペックのドライビングレッスンには毎回多数の応募が集まり、抽選で参加者を選定するほど好評なのだそうだ。

 ドライビングレッスンは、2014年10月にフルモデルチェンジを行ない6代目となったスバル「レガシィ B4」で参加した。カリキュラムは、午前中が50分×2本の走行枠と講義、昼食を挟み午後にも50分×2本の走行枠が用意されていた。

女神湖の湖上で行なわれたドライビングレッスン。当日は氷のコンディションがわるく、外周路が使えなかったのが残念だった
参加車両は、コンパクトカーからセダン、クーペと多彩。駆動方式もFF、FR、AWDと揃っていた
プロスペックWinter Drivingを主催するのは自動車ジャーナリストとしても活躍する日下部保雄氏。自らもインストラクターとして参加者にレクチャーを行なっていた
日下部保雄氏を合せてインストラクターは7名。さまざまカテゴリーでチャンピオンを獲得した往年のラリーストやジムカーナチャンピオンなど、蒼々たるメンバー

 走行枠では、3つのコースを自由に選択して走ることができるので、まず、ブレーキとパイロンスラロームのコースを数回走行してみた。午前中でまだ他車の走行が少なかったこともあり、氷上といいながらも路面は圧雪路のような状況。ブレーキングでもしっかりとグリップ感があり、多少ABSが介入することもあるが、想定どおりの場所で止まることができる。パイロンスラロームも40~50km/hほどならばクルマの挙動が乱れることがなく、ステアリングの操作通りにクルマが進行する。レガシィ B4に採用される路面の状況に応じて前後輪に最適なトルクを配分する「アクティブトルクスプリットAWD」の安定性を十分に確認できるシチュエーションとなった。

 インストラクターからは、パイロンスラロームでステアリング操作時にアクセル操作も行なっているので、車両を振り回すようなアクションをするならばステアリング操作を終えてからアクセルを踏むことを教わった。実際に、教わったとおりに操作してみると、少し曲がりづらいと感じていたところも自在にコントロールできるようになった。

 次に、定常円旋回や8の字旋回ではどのような挙動になるのか走行してみる。AWDでこのような走行はしたことがなかったが、アクセルとステアリングワークのコツを掴めばFRマシンのようにドリフト状態で旋回できる。しかも、かなり低速で走行しても旋回できるので、クルマの挙動が掴みやすい。ミスした個所も分かりやすいので次ぎにつながり、ウエット路での練習よりも上達しやすいはずだ。

 2本の走行枠を終えた後は、ヨコハマタイヤ(横浜ゴム)の技術者による座学となった。「なぜアイスバーンが滑りやすいのか」や、「スタッドレスタイヤの進化」、そして「スタッドレスタイヤはなぜグリップするのか」などの冬季の路面状態やタイヤに関する基礎的なレクチャーを受けた。

 昼食を挟み午後も2本の走行枠が用意され、定常円旋回と8の字旋回のゾーンはそのままだが、ジムカーナとブレーキング、スラロームのゾーンを合体させ走行距離を伸ばしたコースが作られた。午前中から天候はよかったが、日差しもあり集中してドライビングをしていると汗ばんでくるほどだった。氷上は午前中に多くのクルマが走行したこともあり、氷の上にのっていた雪が掃除され、いわゆるミラーバーンの状態へと変化していった。FRの車両や純正のタイヤサイズが大きくウインタータイヤしか履けない車両は、グリップが少なく走行するのにかなり苦戦していた。

 2本の走行枠の後は、ドライビングレッスンの集大成として午後からコース変更を行なったジムカーナとスラロームコースを使ったタイムアタックと定常円を使ったカーチェイスが行なわれた。

 参加者は、午前中から教わった氷上での走行方法などを駆使してタイムアタックとカーチェイスを楽しんでいた。

 最初にカリキュラムを見たときは50分の走行枠が4本もあり、最後にはお腹一杯な状況になるだろうと思っていた。だが、レクチャーを受けるたびにコントロールできる幅が広がり、思いどおりにクルマが操れるようになり、まだまだ走りたりないと感じるほどだった。ただ走り続けるだけでなく、最後にタイムアタックやカーチェイスなどの真剣勝負を行なうことで、自分の上達具合も確認できた。早朝から丸一日、非日常といえる氷上で走れたことに非常に満足感を覚えた。

スラロームコースは、アクセルコントロールを学ぶことができる。コツが掴めれば車体を振り回すことも可能
定常円旋回は、低速で荷重コントロールを覚えられる
走行後には、1本ごとにインストラクターからアドバイスがもらえる
スタッドレスタイヤの性能や氷上ではなぜ滑るのかといった座学で解説を行なったのは、ヨコハマタイヤのスタッドレスタイヤ開発を25年間にわたり担当している橋本佳昌氏
参加者はFMラジオを付けることで指示を受ける。DJによるタイムアタックの解説も楽しむことができた
速く走らせるよりも上手な運転を覚えることがコンセプトということで日下部氏に氷上での運転方法を教わった

 このドライビングレッスンは、ヨコハマタイヤのサポートで開催されており、希望者には最新のスタッドレスタイヤの比較試乗が可能となっていた。用意されたのは、「iceGUARD 5 iG50」と「iceGUARD Evolution iG01」。前者のiG50は全国で販売されているモデルで、後者のiG01は氷上での性能を追求した北海道限定のスタッドレスタイヤになる。

 iG01は、アイスバーンで滑る原因となる表面の水を吸水するためにiG50に対して「新マイクロ吸水バルーン」を1.5倍、「吸水ホワイトゲル」の大きさを最大で30倍にした「エボ吸水ホワイトゲル」を採用。トレッドパターンは、路面との接地面積を拡大するためにストレートグルーブではなくジグザグ形状の「ジグザグメイングルーブ」を配置するなどし、氷上でのグリップ力を高めたスペシャルなスタッドレスタイヤになる。

 実際に異なるモデルを装着した2台のプリウスに比較試乗してみた。iG50でもスラロームやブレーキングで十分な性能を発揮しているがiG01はブレーキングでより氷を掴んでいる印象を受けた。制動距離も短くなり、ABSの介入も少ない。それだけグリップ力が高くなっているということだ。定常円旋回でも、アクセルをゆっくり開けていけば、しっかりとグリップする。路面は、多くの車両により氷が磨かれていて、注意深く歩いてもすぐに転んでしまう状態だった。そんな路面コンディションでも、しっかりとグリップするあたりは氷上性能を主眼に開発を行なったiG01ならではだろう。

左側が「iceGUARD 5 iG50」で右側が「iceGUARD Evolution iG01」。トレッドパターンが異なることが分かる
iceGUARD 5 iG50
iceGUARD Evolution iG01
ブレーキング時の制動距離は、明らかに違った。氷上でもしっかりとしたグリップ感が得られいるのが特徴になる
ヨコハマタイヤの開発陣もドライビングレッスンに帯同していて、気軽にタイヤの性能や選び方などを聞くことができる

(真鍋裕行/Photo:高橋 学)