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独フォルクスワーゲン、ベルリンで開催した年次記者会見を東京でもライブ中継

2014年はグループ初となる1000万台超を納車。売上高は2020億ユーロ以上で営業利益は127億ユーロ

2015年3月12日(現地時間)開催

 独フォルクスワーゲンの年次記者会見がドイツのベルリンで行われ、日本国内に用意された会場でも会見の模様がライブ中継で配信された。

 ベルリンの現地時間で3月12日10時からスタートした年次記者会見は、まずフォルクスワーゲンAGのマルティン・ヴィンターコルンCEOのスピーチにより始まった。

日本の会場にはWebを経由してライブ中継が行われた
年次記者会見にはフォルクスワーゲンAGの取締役が出席
フォルクスワーゲンAGのマルティン・ヴィンターコルンCEO

 ヴィンターコルンCEOは「2014年を振り返ると、自動車業界にとっては試練の年となりました。ブラジルやロシアの市場は鈍化を示し、BRICsにおいては中国のみが元気でした。加えて為替変動が多くの企業に課題を突きつけることになりました。この困難な状況のなかでも、VWグループは2014年を成功の年とすることができました」と語り、困難な経済状況下でも2014年はVWグループにとってよい年だったという。

 その理由として、ヴィンターコルンCEOは4つのハイライトを挙げた。「まず第1に、幅広く魅力的な商品を市場に導入しました。なかでもパサートは欧州カーオブザイヤーを受賞し、すでに10万台を超える受注をヨーロッパで獲得しています。第2に、画期的なイノベーションを続けたことです。テクノロジーのリーダーとしてA3 e-tron、ゴルフ GTE、カイエン SEハイブリッドを含めて7車種のプラグインハイブリッド車をラインアップしています。第3は、ハイマージンのプレミアムセグメントでの躍進です。アウディはライバル2社よりも成長し、ポルシェはマカンを導入して記録的なセールスを生み出しました。そして第4は、中国市場でのリーダー的な立場です。FAWとは25年のパートナーシップを保っていて、さらに多くの施策を行います。特に強化するのは生産能力で、2019年までに500万台規模に増強する予定です」と2014年における成功のハイライトを紹介し、続けてVWグループの販売台数と売上高などを発表した。

「2014年の財務結果を見ても明らかですが、初めてグループ全体で1000万台を超える納車実績を残しました。この実績は、計画を何年も前倒しすることになっています。売上高は2020億ユーロを超え、営業利益は127億ユーロです。ROS(対資産利益率)は1%向上して7.3%になりました。2018年には8%にすることを目標としています。このように厳しい環境下でもVWグループは強力なポジションを得ることができ、全速力で競合他社を引き離しつつあります」(ヴィンターコルンCEO)というように、販売台数、収益率などすべての面で前年度を上まわる結果を残した。

新型パサートは欧州カーオブザイヤーを受賞し、すでに10万台以上のオーダーを獲得
アウディブランドはプレミアムセグメントでライバルを上まわる結果を得た
中国市場での確固たる地位を築いているフォルクスワーゲングループ。販売台数は370万台を数える

 VWグループは「ストラテジー2018」という戦略を2007年に発表していて、2018年までに世界ナンバーワンの自動車メーカーになることに加えて、高い収益性、顧客および従業員の満足度の向上などを目標として掲げている。計画していた販売台数を何年も前倒しして実現したのだが、改善する余地はまだあるという。

「すでに何を改善すればよいのか分かっていて着手しています。包括的な効率化プログラムをフォルクスワーゲンブランドで立ち上げていて、2017年までに50億ユーロの削減を行います。このプログラムの推進により、今年度中に10億ユーロ分の削減を実現します。具体的な内容ですが、世界的に設備稼働率を向上させることです。ティグアンをメキシコで生産することなどに見て取れます。ラインアップの見直しを行うことも必要です。コンパクトなクルマは売れなくなってきているとともに利益率がよくありません。なので、将来的にはポロが4ドアのみとなっていくでしょう」(ヴィンターコルンCEO)。

 また、「アメリカ市場の強化を行っていきます。多くのモデルをアップデートしていく予定で、第2四半期にはパサートをデビューさせます。そしてSUVモデルにも力を入れていくつもりで、2016年にはミッドサイズのSUVがテネシー州のチャタヌーガで、2017年にはティグアンがメキシコで生産され、多くのSUVがアメリカの道を走ることになるでしょう」とヴィンターコルンCEOは語り、VWブランドとして、生産効率の改善やモデルラインアップの刷新、アメリカ市場の強化を行うことで、グループ全体の売上高や利益率を引き上げていくようだ。

アメリカ市場には、より多くのSUVを導入していく予定
2015年も多くの新型モデルを導入する予定で、グループ全体で50車種がデビューする
2018年までには、MQB(モジュラー トランスバース マトリックス)プラットフォームを使用したモデルの年間生産が700万台となる
フォルクスワーゲンAGのハンスディーター・ペッチCFO

 ヴィンターコルンCEOのスピーチに続いて登場したのは、VWグループの財務を担当しているハンスディーター・ペッチCFOで、ブランドごとの収益状況について触れた。「VWグループのブランド別に紹介していきますが、まず、南米やロシアにおいて経済的、政治的な危機があったことと上半期に為替差損があった影響で、フォルクスワーゲンの商用車部門にマイナスの影響が出ました。営業利益は4億1700万ユーロ減の25億ユーロです。この数字には中国のジョイントベンチャーは入っていません。アウディは材料費や原価の削減効果が出て52億ユーロの営業利益を得ました。世界的な生産の拡張があり、170万台を販売しています。シュコダもよい結果で、2014年に大きく成功したブランドです。最大モデルの販売開始が影響し、初めて納車が100万台を超えました。営業利益は2億9500万ユーロ増の8億1700万ユーロでした。セアトブランドも欧州で好調でした。営業損失も削減でき、営業利益の結果は2500万ユーロ減の1億2700万ユーロでした」(ペッチCFO)。

「ベントレーもボリュームは増えているのですが、為替差損で相殺されてしまい、営業利益は200万ユーロ増の1億7000万ユーロでした。乗用車ブランドのなかで最も成功したポルシェは、マカンを含めて5台の新車種を導入しました。CO2削減を行うための技術開発や工場拡張などのコストも相殺することができ、営業利益は1億3900万ユーロ増の27億ユーロとなりました」(ペッチCFO)と、フォルクスワーゲンの乗用車部門を除く他ブランドが増収となり、とくにプレミアムセグメントのアウディとポルシェは大きく伸びたことが示された。

2014年のVWグループの財務結果

 ブランドごとの財務結果がペッチCFOから発表されたあとに再登場したヴィンターコルンCEOは、2015年以降の話をしましょうと語った。「今年もVWグループは忍耐力を持ってすべての側面において改善をしてきます。2015年ですが、販売台数と売上高は少々伸びるでしょう。いろいろな条件にもよりますが、4%ほどの成長を見込んでいます。いろいろな経済状況の影響は受けますが、我々はミニマムな成長で満足する会社ではありません。乗用車、商用車、パワーエンジニアリング、ファイナンスサービスのすべてを強化することが重要です。そのために必要な4万6000人のR&Dスタッフや、1万人以上のIT専門家がいます」。

技術革新もグループ全体の命題となっていて、多くのプラグインハイブリッドモデルを導入している

「そして、モデルレンジの刷新も行っていきます。まずシュコダですが、MQBを使用したスパーブを発表しました。セアトは、レオンに続くコアモデルとなるイビサの仕様変更を行いました。アウディはベストセラーであるA4の新型を発表します。ポルシェは911に改良を加えた新型が登場します。そしてフォルクスワーゲンは、トゥーランやMQBで生産されるティグアンなどを矢継ぎ早に導入します。これらのモデルを含めて、VWグループは2015年に50車種の新型を市場に導入する予定です」(ヴィンターコルンCEO)。

 さらにヴィンターコルンCEOは「これらの多くのクルマはMQBによって生まれていて、さらにMQBの戦略を強化します。現在、世界各国に18の工場がありますが、2016年までにその内の11工場でMQBプラットフォームを生産可能にし、2018年にはMQBが生み出す車両は年間700万台を超えることになります」とコメント。VWグループでは今年も多くのブランドから新型車が登場し、MQBプラットフォームを使用したモデルもさらに増えるようだ。

 2014年はグループ全体で初めて1000万台超となった販売台数が、今後とも成長の歩みを止めることなく邁進していく姿勢を強く感じさせる会見となった。

自動運転の技術開発も抜け目なく進めている
工場での生産効率アップも実施する
カーコネクティビティの開発にも注力
2015年のスタートも順調で、グローバルで見てプラス成長となっている

(真鍋裕行)