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VICSセンター、新たに4つの機能を追加した「VICS WIDE」説明会

東京都内でプローブ情報を活用した渋滞・旅行時間情報の提供開始

2015年5月21日開催

VICSセンター内にある管制室。ここで全国に送るデータの管理を行っている
VICS WIDEのロゴ

 道路交通情報通信システムセンター(略称:VICSセンター)は5月21日、報道関係者向けにVICSの新サービスとなる「VICS WIDE(ビックス ワイド)」の説明会を実施した。VICS WIDEは従来のVICSの上位互換となるサービスで、FM多重放送を使った道路交通情報に新たに4つの機能を追加したもの。VICSサービスの提供が始まった1996年のその日にあわせ、4月23日から提供がスタートしている。

VICSのあゆみ
VICS車載器の出荷台数。昨年度には累計で4500万台を超え3000万台程度が実働していると想定されている。乗用車の保有台数が約6000万台なのでほぼ半数になる
VICSとは
地図データベースの構造。道路地図に付加されたユニークIDを元に交通情報を地図上に描いている
VICS情報。矢印やさまざまなアイコンで表示される
VICS情報の表示例
VICSには光および電波ビーコン、FM多重放送の3種類がある
VICSの仕組み
FM多重放送の仕組み
VICS WIDEとは
FM放送枠の拡大により実現
VICS WIDEのサービスコンテンツ

 VICS WIDEでは「一般道のリンク旅行時間の提供」「プローブ情報を活用した渋滞・旅行時間情報の提供」「緊急情報(特別警報)の提供」「気象・災害情報の提供」と、新たに4つの機能が追加されている。

一般道のリンク旅行時間の提供

一般道のリンク旅行時間の提供

 1つ目の「一般道のリンク旅行時間」は、従来ビーコンにより提供されていたもの。今回、FM多重放送で提供されることにより、ビーコンが設置されていない場所でも、いわゆるDRGS(Dynamic Route Guidance System)と呼ばれる動的経路案内を実現する。動的経路案内なんて漢字で書いてしまうと分かりづらいが、カンタンに言えば渋滞を回避するルートを自動的に探索する機能だ。VICSセンターからの情報は5分ごとに更新され、加えてビーコンのようにデータの受信場所が限られることもないため、かなり高い頻度で新ルートの案内が行われることが期待できる。

プローブ情報を活用した渋滞・旅行時間情報の提供

 2つ目の「プローブ情報を活用した渋滞・旅行時間情報」は、一部の市販ナビおよび純正ナビでお馴染みの機能だ。単純な通過時間だけでなく交差点での直進および右左折の方向別通過時間情報も提供されるため、より最適なルート案内が実現できる。通常、プローブデータを使うためにはデータをアップ&ダウンロードするため通信回線が必要になるが、VICS WIDEで利用するプローブデータは約1万台のタクシーからの情報をモトにしたもの。ダウンロードにはFM多重放送を用いるため、車載器側には特に追加装備を必要としないのが嬉しい。ただし、現状では東京都内のみでのサービスとなり、その後首都圏に拡大という流れを予定しているものの、具体的な展開時期については未定とのこと。

プローブ情報を活用した渋滞・旅行時間情報の提供
プローブデータを扱うための仕組み
プローブ情報は約1万台のタクシーからのデータを使用
従来方式との比較

緊急情報(特別警報)の提供

 3つ目は「緊急情報(特別警報)」の提供。従来は大津波の特別警報をポップアップで自動表示していたものの、その他の気象に関する特別警報を見るためにはユーザーによる操作が必要だった。VICS WIDEでは、これに火山噴火を加えたすべてをポップアップで表示するようになった。ポップアップ表示は15文字×2行で、操作により100文字程度の詳細情報を確認することが可能となっている。

従来VICSの気象情報。大津波警報のみポップアップ表示でその他はユーザーによる操作が必要だった
VICS WIDEでは気象、津波、火山噴火の各情報をポップアップ表示。ユーザーの操作によりさらに詳細な情報を確認することが可能

気象・災害情報の提供

 4つ目は「気象・災害情報」の提供。国土交通省からのデータを元に、50mm/h以上の大雨が発生しているエリアを地図上にオーバーレイ表示する。地図上では250m四方がメッシュ単位として扱われるため、雨が強い範囲を直感的に把握することが可能になる。

気象(雨量)情報を提供
雨量情報の表示。降雨レーダーの情報を元に50mm/h以上のエリアを地図上に表示する

VICS WIDEを受信するためには対応ナビが必要

 これらの機能を実現するためにFM多重放送の伝送容量を、現行の最大50KBから最大100KBへと約2倍に拡大するとともに、新たなサービス識別符号を追加している。サービス識別符号は、送られている情報がどの表示用データであるのかを識別するためのもので、従来のVICSで言えばレベル1と呼ばれる文字情報が「4」、レベル2の簡易図形表示が「5」、レベル3の地図表示が「6」となっている。そしてVICS WIDE用として「7」(文字表示用)、「8」(地図表示用)が追加となった。これによりVICS WIDE対応ナビではすべての情報を表示することができ、従来のナビでは7と8の符号を持つデータは無視されるため、今まで通りの情報を得ることができるワケだ。

VICS WIDE対応ナビの想定出荷台数
VICS WIDE対応ナビの想定市場割合。2026年にはほぼすべてが対応機器に置き換わると想定している
VICS WIDE対応ナビの普及により総旅行時間は1割あまり短縮されることが見込まれている
旅行時間の短縮による経済効果は2兆円規模を想定

 と、かなり期待できそうなVICS WIDEだが、今のところナビメーカーの対応はまちまち。というのも、VICS WIDEを受信するためにはナビ側に新符号を認識するためのチップが必要になるため。現在発売中のモデルにすでに新チップを搭載してバージョンアップで対応するメーカーもあれば、新機種から対応するメーカー、また独自にプローブ情報を展開しているメーカーは静観、といった状況になっている。夏のボーナスでカーナビを買いたい、なんて場合はちょっと注意が必要になりそうだ。

クラリオンのVICS WIDE対応ナビ

クラリオンは5月に発表した新機種から対応
DRGSにより案内ルートが変わったイメージ
左の赤い網掛けが大雨が発生しているエリア
火山噴火情報の詳細イメージ

ケンウッドのVICS WIDE対応ナビ

ケンウッドはすでに販売中の2015年モデル(一部を除く)をファームアップで対応
特別警報のポップアップ表示
「詳細」ボタンを押すことで内容をチェックできる
渋滞情報表示。実線がリアルタイム渋滞情報、濃い点線がスマートループ、薄い点線が統計情報による渋滞情報
噴火警報のポップアップ表示
詳細情報
黄色の網掛けが気象情報。「災害速報」アイコンは冠水注意
VICS WIDE対応の案内

パナソニックのVICS WIDE対応ナビ

パナソニックは「美優ナビ」CN-RX01系、CN-RS01系をバージョンアップで対応(7月~8月)
気象情報は5kmスケールまで表示可能
VICS WIDEの情報は中央が白い矢印(点線および実線)で表示
「ストラーダチューン」でDRGSの頻度を設定できる

(安田 剛)