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キヤノン、より小さな部品を認識する3Dマシンビジョンシステム「RV500」「RV300」を追加
NVIDIAのCUDAを利用
(2015/7/16 15:25)
- 2015年7月16日発売
キヤノンおよびキヤノンマーケティングジャパン(以下:両社をまとめてキヤノン)は、キヤノンが2014年4月に販売を開始した3Dマシンビジョンシステム「RV1100」の新モデルとして、「RV500」および「RV300」という2製品を追加したことを明らかにした。
3Dマシンビジョンとは、簡単に言ってしまえば、産業用ロボットの"眼"に相当する製品で、カメラで撮影した映像から、コンピュータグラフィックスの演算性能を利用して物体を認識してデータ化して、それをロボットなどに渡すことで、製造現場でのラインの自動化を実現することが可能になる。
キヤノンのRV500、RV300は、従来のRV1100が計測範囲の縦×横が1160×1160mmだったのに対して、RV500では540×540mmに、RV300では340×340mmとなり、より小さな部品に対応できるようになっているのが大きな特徴。認識に利用しているソフトウェアの改良により、認識時間も従来製品より改善しており、自動車の組み立てラインや自動車パーツなどを製造する現場での利用を見込んでいる。
自動車メーカーの工場などでも採用されているRV1100、市場拡大により小型部品への対応が必要に
3Dマシンビジョンシステムとは、カメラユニットとそれを解析するコンピュータがセットになったシステムで、カメラから入力されたデータをコンピュータで解析して、物体の位置情報を産業用ロボットに渡す役目を果たしている。より分かりやすく言うのであれば、産業用ロボットの"眼"に相当するシステムとなる。現在、日本の製造の現場で使われている産業用ロボットには、こうした3Dマシンビジョンシステムが接続されて活用されている。
キヤノンマーケティングジャパン 産業機器販売事業部 生産革新機器営業部 部長 前田将一氏は「現在、日本の製造現場ではロボット化が急速に進んでおり、キヤノンが昨年の4月に販売したRV1100という製品も多くの自動車メーカーの製造現場などに採用された」と述べ、キヤノンが昨年発売したRV1100が成功を収めたことで、多くの顧客から問い合わせを受けている状態だと説明した。
前田氏によれば、RV1100の特徴は「画像データと3D CADデータのマッチングが容易など操作系が簡易であり、システムインテグレータの手を借りなくとも簡単に設置できること、海外での法令規制にマッチするように認証を取得していること、自動車向けのラインを意識してIP54相当の防塵防水性を実現していること」と3つがあるとし、その結果として、どことは具体的には明らかにできないが国内の自動車メーカーの工場にも採用が進んでいるとした。
そうしたRV1100を納入していく中で、「より小型の部品やパレットに対応して欲しいというご要望が多かった」(前田氏)と顧客から要望を受けたという。前田氏によれば、RV1100は国内で最もニーズが高いと判断した自動車工場向けを意識した設計になっていたため、まずはやや大きめの部品やパレット(部品を置いておく台のこと)を意識した設計になっていたそうだが、今後は例えばキヤノン自身のプリンター工場などのIT関連やデジタル家電関連の工場への普及を目指すためにより小さな部品やパレットに対応する必要があり、RV500、RV300というより小型の部品に対応した製品の開発を決定したのだという。
より小さな部品を認識できるようになったRV500とRV300
今回発表されたRV500、RV300の2製品は、外形、カメラの構成、IP54相当の防塵防水機能への対応といった基本的な部分はRV1100と同等だという。前田氏によれば違いは3点あり「小型部品への対応、認識時間の高速化、より高い測定精度」がRV1100との違いになるという。
最初の小型部品への対応という点では、計測範囲が小型部品に合せて最適化されているという。従来製品となるRV1100では1160×1160×600mm(縦×横×高さ、以下同)の計測範囲に合わせてシステムが最適化されているが、RV500では540×540×200mm、RV300では340×340×100mmという計測範囲を設定。
前田氏によれば「これにより、例えば六角ボルトといった非常に小型の部品にも対応が可能になる」とのことで、これにより自動車だけでなく、IT機器やデジタル家電といった生産ラインでの採用が進むのではないかと想定しているとのこと。なお、各製品が認識する最少部品サイズはRV1100が45×45mm、RV500が20×20mm、RV300が10×10mmとなっている。
2つ目の認識時間の改善では、RV1100では約2.5秒だった認識時間が約1.8秒に短縮されているという。前田氏によれば「アルゴリズムの改良と新しいGPUの採用により認識時間がさらに短縮されている」とのことで、他社製品が約3秒であるのに比べてさらに高速化されていると強調した。
なお、RV1100、RV500、RV300では、市販されているPCにキヤノンから提供されるソフトウェアをインストールして利用する仕組みになっているが、そのソフトウェアは「NVIDIA」の「CUDA」と呼ばれるGPUを利用して演算する仕組みが採用されている。従来製品であるRV1100では「GeForce GTX 760」が利用されていたが、今度のシステムでは「GeForce GTX 960」へと引き上げられており、それも認識時間が短縮されている理由だという。また、ソフトウェア自体の改良により、認識アルゴリズムも見直されており、パレットのうち変化が無い部分は演算から省いて演算することなどにより認識時間の短縮を実現しているという。
3つめの測定精度の改善では、繰り返し再現性と呼ばれる認識の誤差が小さくなっているという。前田氏が公開した資料によれば、同クラスの他社製品に比較してさらに高い精度が実現できているとした。
RV500/300の価格はRV1000と同クラス。構成にもよるが参考価格は400万円
前田氏はRV500を接続した実際のシステムを公開し、コンピュータから物体が認識できる様子をデモした。デモに利用されたのはマウスコンピュータ製のデスクトップPCに接続されたRV500で、パレットの上に重ねられた小さな部品を瞬時に認識する様子などが公開された。なお、キヤノンによればコンピュータはNVIDIAのGPUなど推奨の条件を満たしていればどのPCでもかまわないということで、基本的にはユーザーが用意したPCにキヤノンから提供されるソフトウェアをインストールして利用する仕組みだという。
ちなみに、マウスコンピューターは「ゲーミングPC」と呼ばれるGPUを多用するPCゲーム向けのデスクトップPCを多数ラインアップしているPCメーカーとして知られており、特別に産業用のPCを提供しているPCメーカーではない。そうしたことからも、RVシリーズが一般的に市販されているPCで利用できるということがうかがい知れるだろう。
前田氏によればRV500、RV300の価格はオープン価格で、構成により異なるが一般的な構成での参考価格が1台400万円とのこと。基本的にはRV1100とほぼ同じ価格帯だということだった。
今回のデモは記者説明会の場所の都合でロボットは設置されていなかったが、その動作の様子はYouTube(https://youtu.be/oDhStKaQp-o)などで公開されているため、興味がある読者はそちらを参照するとよいだろう