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NNG、カーナビ、スマホ、クラウドを円滑に繋げる「NavFusion Platform」発表

新しいユーザー・エクスペリエンスを追究して「将来的にはナイトライダーの世界を目指す」

2015年10月19日発表

最新プラットフォーム「NavFusion Platform」のデモ機
NNG 日本オフィス 代表取締役の池田平輔氏

 ハンガリーに拠点を置くナビゲーション・ソフトウェア・プロバイダーのNNGは10月19日、最新プラットフォームとなる「NavFusion Platform」を発表。都内で記者説明会を開催した。

 発表会ではハンガリーから来日したNNG 取締役会長のヤコブ・ハルペリン氏から同社の概要やこれまでの取り組み、世界と日本での近年の活動などについて解説されたあと、NNG 日本オフィスの代表取締役である池田平輔氏から新たに発表したプラットフォームなどについての紹介が行われた。

 池田氏はまず、2012年から2022年の10年における自動車とカーナビの販売台数の推移と将来予測を紹介。グローバル市場では成長が見込めるものの、成熟市場となっている日本においてはどちらも減少傾向に転じる予測となっていることを明かし、今後の日本におけるカーナビ市場では「コネクティビティ」がキーワードになっていくと解説。

 ここ数年で新車販売されるクルマにおいてインターネットなどとの接続を持つモデルが増えており、何年か先にはほとんどの新車がネットワークとの関係を持ち、池田氏はこれを「言い替えれば、クルマがIoT(Internet of Things:もののインターネット)の一部になる。インターネット空間に吸収されてしまうと言える」と表現。今後はスマートフォンやテザリングなどの技術から普及が進んでいき、その普及において現在のVICSやITSに代表されるような正確な交通情報、鮮度の高い地図情報などが市場から要求されるだろうとの市場予測を披露した。

2022年までの自動車とカーナビの販売台数は日本市場では減少に転じて行き、今後は「コネクティビティ」がキーワードになっていくと解説

 日本市場におけるNNGの戦略としては、各種メーカーとのパートナーシップを基軸に、欧州メーカーとして海外市場でニーズの高いシンプルな操作感を重視したNNGの製品のポリシーは維持しつつ、日本式の多機能なカーナビで実現している機能の取り込み、NNGの開発力を生かした自動車業界が抱えている問題点の解決、NNGが得意としているコンテンツ(地図データや周辺スポット情報など)の集約に加え、クラウドの活用といった新しいソリューションまで集約した提供などを新しいプロモーションの柱にしていきたいと池田氏は語る。

 この戦略を実現するため、自動車業界が持つ課題として「ユーザー・エクスペリエンスの強化」をキーワードとして紹介。近年ではスマートフォン市場で飛躍を続けているGoogleやアップルといった企業を引き合いに出し、スマートフォンを活用したナビゲーションアプリがユーザーの支持を集めていることを語りつつ、一方で画一的な表現に固定され、スマートフォンという出力機器を使うようになると、自動車メーカーごとのブランディングやユーザーごとのパーソナライゼーションが損なわれがちであると指摘。また、自動車メーカーにとってもビッグデータをGoogleやアップルに奪い取られていく一方になってメリットがないとしている。

 こうした課題の解決策として提案するのがこの日に発表したNavFusion Platformで、通信の中心にスマートフォンを使いつつ、メーカーごとにカスタマイズした独立するプラットフォームとして、独自の地図データをドライビングにフォーカスした形で組み合わせて製品を構築していく。具体的には車載器とスマートフォンで同じ地図データを使う「コンパニオンアプリ」を用意し、スマートフォンが自宅などのWi-Fi環境でデータ通信量を気にしなくて済むときに自動的に地図データの更新を実施。クルマに乗って車載器と接続された段階で車載器の地図更新を行ったり、イナゴの「netpeopleアシスタントプラットフォーム」と連携した対話形式でのカーナビ操作や音声入力、車載器に与えられているクルマのCAN-BUSデータをスマートフォンのアプリなどでも活用できるようにするAbaltaの「WEBLINK」連携などを備え、先進的なIT機器と車載器の連動によって新しいユーザー・エクスペリエンスを生み出していけるとしている。

 このほか、池田氏によるプレゼンテーション後に行われた質疑応答で、池田氏は新しいNavFusion Platformが車両側と合わせたカスタマイズが前提になっている製品で、現時点では具体的なプロジェクトは存在していないことを明かし、一方ですでにベースとなる部分の開発はすべて終わっており、カスタマイズに関してはプロジェクトを進めていく段階で、相手側との契約などにかかる時間より短く製品化までの時間に影響を与えないことと解説した。また、既存製品でも似たような取り組みが行われているなかで普及が進んでいかない現状への対策では、現実的な判断として昨今の技術ではユーザーに対して大きくアピールできるレベルに至っていないと明かし、イナゴの技術と連動する自然対話型の音声入力には自信を見せつつもなかなかユーザーに分かってもらえないと語る。

 さらに池田氏は「しかし、だから止めるのかと言えば、そうではないですよね。ここで続けていかなければ技術がよくなっていかないので。インターネットを見ると、正直に言って嫌な書き込みもありますが、“アーリーアダプター”と呼ばれる初期の段階で使い始めるお客さまの声をフィードバックしてよりよくしていくというのが、プロセスとして大事なのだと考えています」「昔、アメリカのTVドラマで『ナイトライダー』という作品がありましたが、たぶんゴールはあんなクルマなのだと思っています。あれぐらいのレベルにまでいかないと、爆発的に普及はしないと思います」とコメント。自分たちが目指している方向性が間違っていないと口にしている。

日本市場に向けた戦略。独自性をアピールしつつ、パートナーシップを大切にしているという
日本向けの機能としては、すでにメジャーな部分で40種類以上、総数では70種類以上の機能を製品に盛り込んでいるという
カーナビがクルマに搭載されている以上、大枠としての使い心地やデザインなどは自動車メーカーが把握すべき点であるとの考え
データを自動車メーカーが把握することで、車両のメンテナンス情報を活用するなどユーザー側にもメリットが生まれると指摘
NavFusion Platformでは、スマートフォンを中心に車両とクラウドを円滑に繋げて活用する
NavFusion Platformが生み出すメリット
NNG 取締役会長 ヤコブ・ハルペリン氏
NNGは「1つのコアエンジンで世界をカバーする」ということを基本理念としている
2014年に東京と名古屋にオフィスを開設して本格的な活動が進められている
日本メーカーの欧州向け製品などで2014-2015シーズンのアワードを獲得
NavFusion Platformの使用事例(1分29秒)
発表会場ではNNGが手がけるさまざまな製品を展示。池田氏によってそれぞれの製品解説も実施された
NavFusion Platformなどまだ製品化前の新技術について解説する池田氏
NavFusion Platformでは、例えばアメリカでは国全体の単位ではなく、州単位での地図データ配信なども計画。製品デモではスマートフォンでの通信で地図情報を更新し、ルート検索に新しい道路を使ったより最適なルートが表示されるシーンが披露された
海外市場で展開がスタートしている「iGO」は、価格を抑えられるディスプレイオーディオを基本にしつつ、スマートフォンとの連動に最適化した構成によってカーナビの普及をうながす製品
次世代型iGOなどの技術展示。開発用のサンプルでは、同じ地図データを使いつつ、設定上の解像度をスライダーで変更してシステムを再起動すると、設定した別の解像度に合わせて最適化された画面表示を自動的に生成。さらにUIなども設定変更して組み合わせ可能となっていることが紹介された
NavFusion Platformでも導入されるAbaltaのWEBLINK連携を紹介するデモも実施。画面内左の地図で左折が近づいてくると、カーナビのデータをCAN-BUS経由で車両側に提供。トランスミッションの変速制御などにも利用できるという
これまでNNGの製品では、水平展開を重視して組み合わせる機器側の能力を極力使わない方向でセッティングを行ってきたが、今後は機器側の能力も活用する方向にシフト。スマートフォンライクな操作性をスムーズに実現できるようにするという
すでに市場投入されている製品の紹介
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(編集部:佐久間 秀)