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STI、13年振りに出力向上したEJ20型エンジンを搭載した「S207」説明会

“究極のロードゴーイングSTI”、最高出力328PS/最大トルク44.0kgmを達成

「S207 NBR CHALLENGE PACKAGE YELLOWEDITION」と、開発を担当したSTI 商品開発部 担当部長 森宏志氏

 STI(スバルテクニカインターナショナル)が10月28日より発売する、スバル(富士重工業)「WRX STI」をベースとした400台限定の特別仕様車「S207」。このS207には、標準仕様の「S207」(599万4000円)、数々の装備を追加した「S207 NBR CHALLENGE PACKAGE」(631万8000円)、さらに特別色のサンライズイエローの「NBR CHALLENGE PACKAGE YELLOWEDITION」(637万2000円)が用意される。全体で400台の限定車となっているが、標準207が200台、NBR CHALLENGE PACKAGE系が200台の割り当てとなる。

 受注は10月28日より始まり、2016年3月6日まで受け付けるが、限定100台のNBR CHALLENGE PACKAGE YELLOWEDITIONは2015年11月30日で受注を締め切る。

特別色のサンライズイエローは、スポーツカーらしい色として設定した
NBR CHALLENGE PACKAGEは、ドライカーボン製大型リアスポイラーなどを装備

 このS207に関する説明会がSTI本社で開かれ、商品開発部 担当部長 森宏志氏より開発経緯などが説明された。現在STIに所属する森氏は、2003年に2代目インプレッサシリーズのPGM(プロジェクト・ゼネラルマネージャー)となり、2007年に3代目GRB型(5ドア)インプレッサのとりまとめを担当。GVB型(4ドア)を含めインプレッサ WRX STIシリーズのPGMを担当してきた。STIに移籍してからは数々のコンプリートカーを担当。現在のSTIの顔ともいえる人物だ。

 その森氏が、STI移籍前にスバルでコンセプトなどを手掛けていたのが、現在販売されているVAB/VAG型の「WRX」シリーズ。今回のコンプリートカーは、EJ20型水平対向4気筒 DOHC 2.0リッターエンジンを搭載するVAB型WRX STIをベースとしたもので、トランスミッションは6速MTとなる。

 森氏によると、STIコンプリートカー共通のコンセプトは“Sport Always!”~すべての時、すべての道、クルマとの対話はいつも“スポーツ”だ~。そのSTIの走りを特徴付けているのが、「強靭でしなやかな走り」と「CLASSY-格上の質感の実現」の2つのキーワードになるという。

 その上で、S207で目指したのは“究極のロードゴーイングSTI”。レースカー並みに引き上げた「ドライバーが意図したとおりに操れるハンドリングの愉しさ」と「上質な乗り心地」の両立を図っている。

ニュルブルクリンク クラス優勝車と並ぶ、S207 NBR CHALLENGE PACKAGE
レーシングマシンのイメージがそのまま投影されている
内装はシートに専用レカロバケットタイプフロントシートなど採用。特別な内装が奢られている
インテリア全景
専用本革巻ステアリングホイール
専用ルミネセントメーター
専用マルチファンクションディスプレイ
トランスミッションは6速MT。STI製本革巻シフトノブ
アルミプレートのペダル
STI製プッシュエンジンスイッチ
専用BBS製19インチホイールと、フロントにはSTI製ブレンボ モノブロック対向6ピストンブレーキキャリパー
タイヤは、ダンロップ製の専用開発255/35 R19タイヤ

 そのために手を入れたのは、2002年に発売した「S202」以来、13年振りにエンジンの出力を向上したこと。最高出力241kW(328PS)/7200rpm、最大トルク431Nm(44.0kgm)3200-4800rpmとすることで、基本的な運動性能を向上。11:1のクイックステアリングギアレシオや専用ビルシュタインサスペンション(フロント:ダンプマチックII、倒立式)、専用開発255/35 R19タイヤ(ダンロップ SPORT MAXX RT)、専用VDC、専用アクティブトルクベクタリングなどなど。

 上質な乗り心地の実現に寄与しているのは、専用ビルシュタインサスペンションと専用レカロバケットタイプフロントシート。ダンプマチックIIを採用するビルシュタインサスペンションの特性に合わせて作り込み、専用レカロバケットタイプフロントシートで体のホールド性を向上。快適性(疲労低減)とスポーツ性(車両コントロール性)が向上しているとする。

 とくに注目が集まるのが13年振りにエンジン出力が向上したEJ20型水平対向エンジンだろう。コンプリートカーのS202やB206から8PS向上した328PSは、主に高回転域をチューニングしたことで稼ぎ出されている。基本的な馬力向上策としては、クランクシャフトを削ってバランス取り、ピストンの組み合わせのバランスも図ることで、より高回転域までぶれなく回るようにしている。さらに低背圧スポーツマフラー(100Φデュアル×2)、専用エキゾーストパイプリアで排気の抜けを改善。通気抵抗を50%低減したとのことだ。もちろんそれに合わせて専用ECUで、適切な燃料を吹いているほか、高回転域まで使うことを考慮してオイルも5W-30から5W-40へと変更しているという。

最高出力241kW(328PS)/7200rpm、最大トルク431Nm(44.0kgm)3200-4800rpmのEJ20型水平対向4気筒 DOHC 2.0リッターエンジン

 今もスバルのレーシングシーンではメインエンジンで活躍するEJ20型水平対向エンジンだが、搭載車種の減少により年々生産台数が減っているのも事実。その中で、コストをかけて馬力を向上(馬力はトルク×回転数であるため、正確には高回転域のトルクの落ち込みを減少)させるという決断はなかなかできない。そのため、12年も馬力が向上しなかった。エンジンの開発スタッフにうかがったところ、今回思い切った決断ができたのは、2011年の「S206」以来の久々の「S」であること、最後のチャンスかもしれないことなどがあるという。スバルの主力エンジンがより燃費性能を向上したロングストロークのFB型に移行しつつある中、ストローク/ボア比(S/B比)0.82というショートストロークのEJ20型を思い切り味わえるクルマがS207になるだろう。

 限定400台(NBR CHALLENGE PACKAGE YELLOWEDITIONは限定100台、NBR CHALLENGE PACKAGEはNBR CHALLENGE PACKAGE YELLOWEDITIONを含んで限定200台)というS207。東京モータショーでの展示も行われるため、会場で各部を納得ゆくまでチェックしていただきたい。

(編集部:谷川 潔/Photo:堤晋一)